【獣医師監修】犬の認知症をどれくらい知っている?介護の負担・費用・仕事への影響を130人に調査
【獣医師監修】犬の認知症をどれくらい知っている?介護の負担・費用・仕事への影響を130人に調査
更新日:2026年9月1日

この記事をまとめると
犬の認知症に関する飼い主の実態を解説。
ポイントは以下の4つ。
- 約6割が犬の認知症について詳しい症状まで知らない
- 約5割が犬の介護による精神的・身体的負担を考慮している
- 通院や介護用品などで新たな費用がかかる
- 仕事との両立や早期の情報収集が重要である
要約
現在犬を飼っている人130人への調査から、犬の認知症に関する知識不足が介護時の負担を大きくしている実態が分かった。
負担を軽減するには、早期の症状理解、介護費用の把握、仕事との両立方法について事前に備えておくことが重要である。
犬の平均寿命が延びている昨今、愛犬が年齢を重ねるにつれて、これまでとは違う行動の変化が気になる飼い主さまもいらっしゃるでしょう。
認知機能の低下は人間だけに起こるものではなく、犬にもみられます。
ただし、高齢犬にみられる行動の変化は認知症以外の病気が原因となっていることもあります。
「高齢だから仕方がない」「認知症だろう」と決めつけず、愛犬の変化に気づくことが大切です。
犬の認知症とは?高齢になるほど注意したい認知機能の変化
年齢を重ねたからといって、すべての犬が認知症になるわけではありません。
犬にも一般に「認知症」と呼ばれる状態があり、獣医学的には「犬認知機能不全症候群」と呼ばれています。
「犬認知機能不全症候群」は、加齢に関連して脳の機能に変化が生じ、認知機能が徐々に低下していく神経変性疾患です。
初期には行動の変化がわずかで、飼い主さまが「年齢のせいかな」と見過ごしてしまうこともあります。
そのため、普段から愛犬の行動や生活リズムをよく観察し、小さな変化に気づくことが大切です。
夜鳴き・徘徊・昼夜逆転など、犬の認知症でみられる変化
犬の認知症では、昼間に眠って夜に活動する昼夜逆転や夜鳴き、目的もなく歩き回る徘徊、狭い場所に入り込んで出られなくなる、排泄を失敗するなど、さまざまな行動の変化がみられます
なかでも夜鳴きや夜間の徘徊が続くと、愛犬だけでなく、見守る飼い主さまの睡眠不足や疲労につながることもあります。
こうした変化を単なる「老化」と考えず、早めに気づいて適切なケアにつなげることが、愛犬と飼い主さま双方の生活の質を保つための重要なポイントです。
犬の認知症は「犬だけの問題」ではない
夜鳴きや夜間の徘徊など、認知症による愛犬の行動変化に影響を受けるのは、犬だけではありません。
見守りや介助が必要になれば、飼い主さまやご家族の睡眠不足や疲労、精神的な負担につながることもあります。
さらに、夜間の鳴き声が続けば、近隣から苦情を受けるなど、ご近所とのトラブルにつながる可能性もあります。
実際に動物病院でも、愛犬の夜鳴きに悩み、近隣への影響を心配して相談にいらっしゃる飼い主さまがおられます。
なかには、近隣とのトラブルから引っ越しを検討せざるを得なくなるケースもありました。
犬の認知症は愛犬だけの問題ではなく、飼い主さまやご家族、周囲の人々の生活にも関わる問題といえるでしょう。
今回は、現在犬を飼っている人130人を対象に、犬の認知症や介護に関する以下の5つの内容についてアンケートを実施しました。
Q1 犬も人間と同様に「認知症」を発症することや、その初期症状(夜鳴き・徘徊・狭い場所に入り込む等)についてご存知でしたか?

「症状やリスクまで詳しく知っていた」と回答した方は36.9%、「名前程度は知っていた」が40.8%、「犬も認知症になることを全く知らなかった」が22.3%でした。
犬にも認知症があることを知っていた方が多い一方で、「名前程度は知っていた」と「全く知らなかった」を合わせると63.1%となり、具体的な症状やリスクまでは十分に知らない方が6割以上を占める結果となりました。
Q2 愛犬の介護や認知症のケアを行う中で、「最も負担(不安や悩み)」と感じる(または感じそうだと予測する)ものは何ですか?(最大2つまで)

最も多かった回答は「精神的ストレス・メンタルの悪化(目が離せない、鳴き声による近隣への気遣いなど)」で57.7%、次いで「睡眠不足・体力面の疲弊(夜鳴き、夜間の徘徊、世話など)」が48.5%でした。
いずれも半数前後を占めており、愛犬の介護について、精神面だけでなく体力面への負担を不安に感じている方が多いことがわかりました。
Q3 愛犬の認知症対策・介護のために、「月額いくらまで」なら費用(サプリ・介護用品・医療費など)を負担できますか?

「5,000円未満」と回答した方は26.9%、「5,000円〜1万円未満」は30.0%で、合わせると56.9%と半数以上を占めました。
一方、「1万円〜2万円未満」は15.4%、「2万円以上」と回答した方は15.4%でした。
また、「費用はかけられない・わからない」という回答も12.3%みられました。
今回のアンケートでは、愛犬の認知症対策や介護にかけられる費用として、月額1万円未満を想定している方が多いことがわかりました。
Q4 愛犬の介護・世話が必要になった場合、あなたの「働き方や仕事」にどのような影響がありましたか?(またはあると思いますか?)

「特に仕事への影響はない(業務に支障を出さずに対応できている)」という回答が最も多く、30.0%でした。
一方で、「有給休暇の取得や残業を減らした(またはその予定)」が20.0%、「在宅勤務や時短勤務に切り替えた(または検討中)」が15.4%、「休職・離職・転職を検討した(または実際に実行した)」という回答も9.2%みられました。
愛犬の介護が必要になった場合、仕事を続けながら介護できると考える方がいる一方で、働き方そのものを見直す可能性がある方もいることがわかりました。
Q5 万が一のペットの認知症や高齢化に備えて、「事前に行っておけばよかった(または行っていて良かった)」と感じる備えは何ですか?(最大3つまで)

最も多かった回答は「ペット保険への加入(高齢になる前の事前加入)」で46.2%、次いで「かかりつけ医・動物病院との関係構築」が36.2%、「介護費用の貯蓄」が26.2%という結果でした。
ペットの高齢化に備えて、医療費や介護費などの経済的な準備に加え、日頃から相談できる動物病院を見つけておくことも大切だと考えている方が多いことがわかりました。
今回のアンケート結果と、動物病院に来院される介護が必要なシニア犬の飼い主さまを通して強く感じるのは、介護による精神的な負担の大きさです。
特に、ご家族など周囲の協力が得られず、一人で介護を担う場合には、精神面だけでなく身体的な負担も大きくなることがあります。
「愛犬はとても大切な存在なのに、介護が大変で気持ちが追いつかない」という相談を受けることも少なくありません。
愛犬を大切に思う気持ちとは別に、介護に疲れやつらさを感じることはあります。
飼い主さまだけで抱え込まず、家族や動物病院など周囲の力を借りることも大切です。
夜鳴きや昼夜逆転による睡眠不足
犬の認知症では、夜鳴きや昼夜逆転による夜間の徘徊などがみられることがあります。
こうした行動が続くと、愛犬を見守る飼い主さまも十分な睡眠をとれなくなり、心身ともに疲弊してしまうことがあります。
私の亡き愛犬も17歳頃から、夜中に突然ウロウロと歩き回ることがありました。
声をかけたり、少量のご飯を与えたりして落ち着かせようとするものの、普段とは違う愛犬の様子を見て、とても複雑な気持ちになったことを覚えています。
実際に動物病院でも、愛犬の夜鳴きによる睡眠不足や、変わっていく愛犬への複雑な思いから気持ちに余裕がなくなり、相談中に涙を流される飼い主さまもいらっしゃいます。
特に夜間の介護が長期化すると、飼い主さまにとって大きな負担になることがあります。
徘徊や排泄などによる見守り・介助の増加
犬の認知症では、目的もなく歩き回る徘徊や、これまでできていた場所で排泄できなくなるなどの変化がみられることがあります。
また、狭い場所に入り込んで自力で出られなくなるなど、飼い主さまが目を離せない時間が増える場合もあります。
排泄の失敗が増えれば、そのたびに愛犬の体を清潔にしたり、室内を掃除したりする必要もあります。
こうした見守りや介助が日常的に続くことで、飼い主さまの時間的・身体的な負担が大きくなる可能性があります。
通院・治療・介護用品などによる経済的負担
シニア期には、認知症だけでなく、心疾患や内分泌疾患、腫瘍など、さまざまな病気にも注意が必要です。
そのため、定期的な通院や検査、治療にかかる費用が増えることも想定されます。
さらに、認知症によって介護が必要になれば、介護用ベッドやオムツ、滑りにくいマットなど、愛犬が安全で快適に暮らすための環境を整える費用も必要になるでしょう。
こうした医療費や介護用品の購入が継続することで、飼い主さまにとって経済的な負担が増える可能性があります。
仕事・外出・旅行など飼い主の生活への影響
認知症の犬は、症状によっては長時間目を離すことが難しく、こまめな見守りやケアが必要です。
そのため、仕事だけでなく、外出や旅行など飼い主さまの日常生活にも影響を及ぼす可能性があります。
実際に、私の勤務先の動物病院でも、愛犬の介護のために休職したスタッフがいました。
今回のアンケートでも、有給休暇の取得や残業を減らす、在宅勤務や時短勤務への変更を検討するなど、愛犬の介護によって働き方に影響が出る可能性があることがわかります。
介護が長期化することも考え、必要に応じて動物病院やペットシッターなど、周囲のサポートを利用できる環境を整えておくことも大切です。
名前を呼んでも反応が鈍くなった、寝ている時間が増えたなど、犬も年齢を重ねるにつれて以前とは違う変化が徐々に現れてきます。
「トイレを失敗するのも歳をとったから仕方がない」と、さまざまな変化を年齢のせいだと思っている方もいらっしゃるでしょう。
犬の認知症は、初期には行動の変化がわずかで、飼い主さまが気づきにくいことがあります。
そのため、普段から愛犬の行動や生活リズムを記録しておくと、小さな変化にも気づきやすくなります。
具体的には、排泄の失敗や排泄場所の変化、夜鳴きや徘徊の有無、睡眠時間や生活リズムなど、普段と違う様子があればその内容を記録しておくとよいでしょう。
また、こうした行動の変化は認知症以外の病気でもみられることがあります。
気になる変化があれば「年齢のせい」と決めつけず、早めに動物病院へ相談しましょう。
加齢に伴う変化があっても愛犬の生活の質を保つために、元気なうちから「健康」「環境」「お金」の3つの備えを考えておきましょう。
健康面の備え
シニア期に入ったら定期的に健康診断を受け、体の変化を早めに見つけることが大切です。
また、気になることがあったときに安心して相談できる、かかりつけの動物病院を見つけておきましょう。
環境面の備え
愛犬に介護が必要になったときに誰が世話をするのか、留守中はどうするのか、どのようなサービスを利用できるのかなどを、元気なうちに家族で話し合っておきましょう。
お金の備え
高齢になると、通院や検査、治療に加えて、介護用品などの費用が必要になる可能性があります。
いざというときに慌てないためにも、医療費や介護費を想定した貯蓄やペット保険などについて考えておくとよいでしょう。
愛犬が元気なうちは、介護が必要になったときの生活を具体的に想像するのは難しいかもしれません。
しかし、元気な今だからこそできる備えもあります。できることから少しずつ始めておきましょう。
今回のアンケート結果からもわかるように、愛犬の介護による精神的・身体的な負担をはじめ、経済的な負担や仕事への影響、近隣への気遣いなど、犬の認知症は愛犬だけの問題ではありません。
犬を迎えるということは、元気なときだけでなく、年齢を重ね、介護が必要になる時期まで一緒に暮らすということです。
動物愛護週間をきっかけに、愛犬のシニア期についても考えてみてはいかがでしょうか。
愛犬と飼い主さま双方の生活の質をよりよく保ち、最期まで後悔なく一緒に過ごすためにも、元気なうちからできる準備を始めておきましょう。
シニア期になると、心疾患や内分泌疾患、関節疾患など、加齢に伴ってリスクが高まる病気が増えていきます。
将来の医療費に備えて日頃から貯蓄しておくほか、ペット保険を活用するのもひとつの方法です。
ペット保険は、動物病院で診療を受けた際にかかった費用について、契約内容に応じた補償を受けられる保険です。
ただし、加入できる年齢や補償対象、補償割合などは、保険会社や加入プランによって異なります。
また、加入前から発症している病気などは補償の対象外となる場合があります。
ペット保険によっては新規加入できる年齢に上限が設けられているため、加入条件についても確認しておきましょう。
いざというときの選択肢を広げるためにも、愛犬が元気なうちから、加入できる年齢や補償内容、保険料などを比較し、それぞれに合った備えを検討しておくとよいでしょう。
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また、重要事項等の説明もあわせてご確認くださるようお願い申し上げます。
