ヨークシャーテリアは可愛らしい外見と、活発で俊敏、好奇心旺盛といったテリア気質を併せ持った犬種です。
この記事では、ヨークシャーテリアの病気や平均寿命と長生きの秘訣を中心にまとめて解説しています。
この記事をまとめると
ヨークシャーテリアは活発で好奇心旺盛な性格を持ち、平均寿命は14歳前後と比較的長寿な犬種です。
主な病気やケガは以下の4つ。
- 膝蓋骨脱臼:小型犬に多く、手術が必要な場合がある。
- 気管虚脱:呼吸困難を引き起こし、治療が必要。
- 皮膚疾患:アレルギーや乾燥により皮膚トラブルが発生。
- 骨折:細い骨のため、高所からの飛び降りに注意が必要。
要約
ヨークシャーテリアは長寿ですが、病気やケガのリスクが高い犬種です。
小型犬であるため、関節や骨への負担が大きく、体重管理や適度な運動が重要です。
皮膚も敏感で、アレルギーや乾燥によるトラブルも起こりやすいため、日々のケアが欠かせません。
ペット保険に加入することで、手術や治療にかかる費用を軽減でき、万が一のときにも経済的な負担を減らしてくれます。
ヨークシャーテリアの平均寿命は14歳前後で、全犬種あわせた平均寿命よりも寿命が長い犬種です。
わたしの臨床経験上でも、「ヨークシャーテリアは元気で長生きする」という印象があります。
参考データ:
(一社)東京都獣医師会霊園協会 犬の寿命調査
https://petreien-a.tokyo/dog/
アニコム動物白書2023 犬と猫の寿命 犬種別の平均寿命
https://www.anicom-page.com/hakusho/book/pdf/book_202312_2_4.pdf
ヨークシャーテリアの基本情報
ヨークシャーテリアは、現在は愛玩犬として知られています。
しかし、もともとはイギリスのヨークシャー地方の工業地帯でネズミ捕りを目的として作出された犬種で、当初は今よりも大きく黒っぽい犬でしたが、アメリカに渡って品種改良されて現在の姿になりました。
愛らしく動き回る姿と絹糸の様な美しい被毛は「動く宝石」ともいわれ、日本でもジャパンケネルクラブの犬種別犬籍登録数で10年以上に渡り上位10犬種にランクインしている犬種です。
犬種としての特徴
ヨークシャーテリアは、体重が3.2kg前後、体高が22.5~23.5センチの小型犬ながら、性格はかなり活動的で、小動物の狩猟をするために作出されたテリア犬種の特徴である「活発で俊敏、自己主張が強く好奇心旺盛」という気質を持っています。
被毛は毛がどんどん伸びていくシングルコートで、皮膚は薄く暑さや寒さに比較的弱い犬種です。
家庭犬として飼育する場合は短めのペットカットにすることがほとんどですが、短くても長くても絹糸の様な細い毛は絡んで毛玉になりやすく毎日のブラッシングは欠かせません。
また、活発な犬種ではあるものの手足の骨が細く骨折しやすいので注意が必要です。
ヨークシャーテリアがかかりやすい病気
ヨークシャーテリアは他犬種と比較すると遺伝性疾患は比較的少ない犬種です。
しかし、消化器疾患、皮膚疾患になりやすく、膝蓋骨脱臼などの関節疾患や気管虚脱にも注意が必要です。
年代別の過ごし方の注意点
子犬期
ヨークシャーテリアは、前述のとおり活発な性格のため、しつけや社会化をしっかり行う必要があります。
特に無駄吠え(要求吠え)対策は重要で、ご自身でしつけに悩んだらかかりつけの動物病院や信頼できるドッグトレーナーさんに相談することをおすすめします。
成犬期
成犬期で最も注意する健康上の注意点は、太らせないことです。
特にヨークシャーテリアは、膝蓋骨脱臼などの関節疾患が多く、四肢も細いため過体重は非常に負担が大きくなります。
また、ヨークシャーテリアは犬の中でも「目で語る犬」といわれるくらい表情豊かな犬種です。
賢く物覚えもいいので、おやつを探す宝探しゲームなど一緒にアイコンタクトをしながら遊んであげると運動欲求も叶えられるうえ楽しく過ごせるのでおすすめです。
シニア期
およそ7歳を過ぎたあたりから愛犬のちょっとした変化に気づくことが増えてきて、ちょうどその頃がいわゆるシニア期の始まりです。
少しずつ不調が現れる、病気がちになるなど様々な変化が起きやすい年齢でもありますが、極端なケアをするのではなく、「養生する(体調を整える)」ことを心がけましょう。
例えば、愛犬の様子をよく観察して極端に長いお散歩やハードな遊びは避ける、身体を冷やさないように注意する、水分を十分に摂れる食事を与えるなどちょっとした工夫が大切です。
ヨークシャーテリアの健康管理について、特に重要な以下のポイントを中心に解説します。
- ・食事管理
- ・運動の必要性
- ・定期的な健康チェック
適切な栄養と食事管理
犬は雑食動物とはいえ、肉食動物に近い消化器の特徴を持っています。
そのため、たんぱく質や脂肪の消化に適した身体の構造で繊維質や糖質の消化はあまり得意ではありません。
基本的には、総合栄養食と新鮮なお水が中心の食事がおすすめですが、手作り食中心の食事を与える場合はリンとカルシウムのバランスやミネラル・ビタミンの不足などが懸念されるので、動物栄養学を学んでから実践することをおすすめします。
日常の運動の重要性
犬は「動きたい」という衝動が強い動物で、小型犬のヨークシャーテリアであってもお散歩や運動は必要です。
年齢や体力に合わせた適度な運動や散歩は、愛犬の心身の健康を維持するのに役立ちます。
病気の予防と早期発見
食欲の有無、排便・排尿の様子、呼吸状態、姿勢など、普段から愛犬をよく観察し、愛犬の身体に触れることが病気の早期発見につながります。
さらに、おかしいと思ったら早めに動物病院を受診する習慣をつけましょう。
ワクチン接種のスケジュール
次に、健康管理の一環として行うワクチン接種について解説します。
狂犬病予防接種について
現在日本国内に狂犬病の発生はありませんが、海外では狂犬病が発生している国も多く、さらに狂犬病は人畜共通感染症で発症すると致死率100%です。
日本では狂犬病予防法という法律で、生後91日以上の犬は毎年1回の狂犬病予防接種を受けることが義務付けられています。
混合ワクチン接種について
子犬はおよそ生後2ヶ月を境に母犬からの移行抗体が減っていきます。
そのため、生後2ヶ月以上の子犬の時期に約1ヶ月間隔で2回ないし3回のワクチン接種が推奨されています。その後は、1年に1回のワクチン接種を行う場合が一般的です。
なお、WSAVA(世界小動物獣医師会;World Small Animal Veterinary
Association)のワクチネーションガイドラインでは、
成犬の時期にはコアワクチン(犬ジステンパーウイルス(CDV)、 犬アデノウイルス(CAV)および犬パルボウイル ス 2
型(CPV-2)のワクチン)は3年に1回、ノンコアワクチン(上記3つ以外犬レプトスピラ・犬パラインフルエンザなど)は地理的要因や環境、ライフスタイルによって、感染症のリスクが生じる動物にのみ必要
だという記載があります。
勤務先でも、成犬のワクチン接種の際は上記のガイドラインについて飼い主さまにお伝えし、ワクチンの抗体価が十分かどうかの検査を行うかどうかを確認する場合があります。
しかし、コアワクチンの十分な抗体価が無い場合には抗体価のチェック費用にプラスしてワクチン接種の費用がかかることや、コアワクチンの抗体価が十分でないケースも多く、各病院によって対応は分かれるというのが正直なところです。
参考:世界小動物獣医師会 犬と猫のワクチネーションガイドライン
https://wsava.org/wp-content/uploads/2020/01/WSAVA-vaccination-guidelines-2015-Japanese.pdf
定期的な健康診断の役割
健康的な生活を送るためには、定期的な健康チェックは必須です。
万が一病気になっても、早期発見と早期治療で病気と上手くつきあうことで回復できる場合や少しでも寿命を長くできる可能性があります。
最低でも年に1回は血液検査・尿検査などの健康診断を受けましょう。
生きているものには寿命があり、人間と同じように犬も寿命はそれぞれ違うのは周知の事実ではありますが、それでも寿命を全うするまで健やかでいて欲しいというのはすべての飼い主の願いです。
ヨークシャーテリアに関わらずどんな犬種でも犬種に合った生活環境を整えることとストレスを上手に解消してあげることが長生きの秘訣です。
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家庭での安全な環境づくり
ヨークシャーテリアは四肢の骨が細いため骨折しやすく、前述のとおり膝蓋骨脱臼や前十靭帯断裂も多く見られます。
ソファーや椅子などの飛び降りやフローリングで滑って大ケガをしないように、フローリングには滑り止めのマットを敷くなど対策しましょう。
また、階段がある家の場合は、落下防止のため柵を設置するなどの工夫をしましょう。
関節疾患で手術をした場合は、術後の安静期間が必ず必要になります。
ただでさえ動くことが好きなヨークシャーテリアを、ケージやサークルに閉じ込めたままにすることは犬に非常に強いストレスを与えます。
ぜひ、ケガを防ぐための安全対策を心がけてください。
さらに、どの犬種にもいえることですが、食材やお菓子、おもちゃなど誤飲にも要注意です。
犬がいる部屋には、必ず棚の中に食材等をしまう習慣をつけて、ごみ箱は蓋つきのものを使いましょう。
ストレスを避けるための日々のケア
前述したとおり、ヨークシャーテリアは小型犬ながら勝ち気で活発な犬種で、その反面甘えん坊でやや興奮しやすい面もあります。
また、「ヨークシャーテリアは、お散歩は長い時間しなくても大丈夫です」と書いてある本をよく見かけますが、各個体によってお散歩を好む犬とそうでない犬もいるため、ご自身の愛犬がどれくらいお散歩の強度や時間が必要なのかは、お散歩後の愛犬の様子で判断することをおすすめします。
お散歩から帰ってきても、まだ落ち着かない様子でそわそわしていたり興奮していたりする場合は、もう少しお散歩の時間や強度が必要だというサインです。
また、ヨークシャーテリアは飼い主との触れ合いを好むため、おもちゃで遊ぶことやおやつを使って色々な指示を出すしつけなどもおすすめのストレス解消法です。
ヨークシャーテリアの長生きに関する実例とアドバイス
わたし自身の臨床経験で今まで出会ったヨークシャーテリアと飼い主さま、そして現在わたし自身もヨークシャーテリアを飼っているので、その実例を踏まえて解説します。
獣医師からの長生きアドバイス
犬種に関わらず、わたしがアドバイスする「健やかで長生きする秘訣」は、以下の2つです。
歯をきれいに保つ
歯周病は、単に口の中が汚い、口臭がするという口腔内の問題だけにとどまらず全身に影響を及ぼします。
3歳以上の小型犬の約8割が歯周病または歯周病予備軍というデータがある通り、デンタルケアを全く行わなければ若い犬でも歯周病になります。
さらに成犬になってケアしようとしても、嫌がって出来ないことが多いため子犬の頃から習慣として行う必要があります。
わたし自身、やんちゃな愛犬のデンタルケアは非常に苦戦しましたが、お好みの歯みがきジェルを使うことでどうにかやらせてくれるようになりました。
実際に病院で診察をしていても、年齢を重ねても元気で食欲がある犬の歯は比較的きれいだと感じます。
歳を重ねても美味しく食事ができるためにも、愛犬のデンタルケアを怠らないようにしましょう。
太らせない
犬でも肥満は短命だというはっきりしたデータがあります。
さらに、肥満でリスクが高まる病気は骨関節炎、糖尿病、腫瘍など愛犬の生活の質を極端に落とす可能性があるものばかりです。食事管理と体重コントロールを心がけて、愛犬を太らせないようにしましょう。
シニア期の快適な過ごし方
シニアになると、耳が遠くなる、視力が悪くなる、咬む力が弱くなる、筋力が低下するなど身体に変化が起こります。
しかし、長い距離が歩けなくても、カートや抱っこで外に行くだけでもシニア犬にとっては刺激になります。
食事はふやかして与える、ササミや白身の魚をゆでてトッピングするなど食事内容も食べやすいようにすると同時に、食器を台の上に乗せて首が下がらない姿勢を保って楽に食事ができるような工夫をしましょう。
また、軽いマッサージも愛犬が安心すると同時に、血行を良くする効果があるのでおすすめです。
健康管理は継続することが大切です。
健康管理を習慣化するためのおすすめの方法は、お散歩の後や夕食の後など愛犬がリラックスしている時間に身体を触ることです。
身体を触ってしこりや腫れがないか、呼吸が荒くないか、極端に痩せたり太ったりしていないかなど、触ることで得られる情報はたくさんあります。愛犬とコミュニュケーションの時間にもなるので楽しく、続けやすいと思います。
ペットには人間の様な公的な保険制度はありません。
そのため、病気やケガの治療に支払う医療費は、すべて飼い主の自己負担です。
治療内容によっては高額になるケースも多く、経済的な負担が大きいことが予想されます。
普段からペットのためにご自身で備える方法の他に、予想もしていなかった突然の出費に備えておくための選択肢の一つとして、ペット保険があります。
ペット保険とは、保険料をペット保険会社に支払うことで、飼い主が動物病院に支払う医療費の一部をペット保険会社が補償してくれるサービスです。
現在ペット保険を扱う会社は10社以上あり、保険会社や契約プランにより保険料や補償の内容等は異なります。
一般的には補償内容が多ければ多いほど保険料は高くなるため、ご自身と愛犬に最適なペット保険を選ぶためには情報を集めて比較検討をする必要があります。
ペット保険選びのポイントは?
保険料はなるべく抑えたい」「なるべく多くの補償や付帯サービスを受けられる保険が安心」などペット保険に求める内容は人それぞれ違いますが、ペット保険を選ぶにあたって優先順位が高いのは、
・保険会社に支払う保険料
・補償内容
の2点だと思います。
保険会社に支払う保険料について
保険料は最も安いものでは月に500円~、金額が多いプランでは1万円前後です。
補償内容が多ければそれに伴って保険料も高くなるので、補償内容とのバランスを考えて検討しましょう。
また、保険料は加入してから終身までずっと同じではありません。
若い時は安い保険料でも更新の度に保険料が上昇するプランや、ある程度の年齢になったら保険料が一定になるプランなど保険料の見直しが行われます。
一般的には年齢が上がるにつれて保険料が高くなり、加入条件が厳しくなる傾向があります。
補償内容について
補償内容は保険会社やプランによって様々で、
- ・病気やケガによる通院や入院を含め手術もすべて補償する
- ・手術に関する治療費のみ補償する
- ・保険会社が補償する割合は30%、50%、70%が多い(90%や100%もある)
- ・1回の手術につき50万円を補償するなど手術に特化している
などがあります。
補償内容を選ぶ際には、手術や入院治療と通院治療の両方をしっかり補償してくれるプランを選ぶことをお勧めします。
ペット保険を選ぶ際の確認事項
ペット保険には加入条件や補償対象にならない場合があります。
●ペット保険は「病気やケガに備える」のが目的
不妊去勢手術、ワクチン接種やフィラリア予防など予防に関するものや、保険加入以前にかかっていた病気やケガについては補償対象外です。
●補償は無制限ではなく上限(支払限度額または支払限度日数・回数)がある
●加入や更新の際に年齢の制限などの条件がある
ある程度の年齢になったら加入できない、もしくは加入していた保険を更新できなくなる場合がありますが、シニア専用のペット保険や終身に渡って補償を継続できる保険もあります。
ペット保険に加入する際には、保険料と補償内容のバランスの他、補償内容や条件をしっかり確認し、ご自身と愛犬にとって必要なプランを選びましょう。
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