13周年

【獣医師監修】
猫のフケ原因と効果的な対策法を解説

日向でくつろぐ猫の写真

フケは皮膚表面の角質が古くなって剥がれ落ちたもので、愛猫のフケが極端に増えた場合は様々な原因による皮膚のトラブルが考えられます。

この記事では、猫のフケの原因とフケに効果的なケアを中心に解説します。

この記事をまとめると

フケ自体は病気ではないため、補償対象外となる場合が多い。
ただし、フケの原因が病気である場合は、補償対象となる場合もある。

補償対象となる場合は以下の2つ。

  • 皮膚炎などの病気が原因でフケが出ている場合
  • 寄生虫感染などの病気が原因でフケが出ている場合

補償対象外となる場合は以下の2つ。

  • フケの原因が病気ではない場合
  • フケの量が少なくて、通常のケアで対処できる場合

要約

猫のフケが目立つ場合は、病気の可能性もあるため、動物病院で診察を受けることをおすすめします。

病気が原因でフケが出ている場合は、ペット保険に加入していれば、治療費を補償してもらえる可能性があります。

    目次

  1. 猫のフケとは
  2. フケを減らすための日常生活での対策
  3. 猫のフケ対策に有効なケア商品
  4. 【獣医師のアドバイス】脱毛がみられたら早めに動物病院にいきましょう
  5. ペット保険の選び方

猫のフケとは

愛猫の身体に、フケが増えて気になった経験はありませんか。

フケは皮膚表面の角質が古くなり、新陳代謝によって剥がれ落ちたものです。

極端にフケが増えた時は動物病院を受診すると同時に、自宅でのお手入れ方法や飼育環境を見直す必要があるかも知れません。

猫のフケの原因

皮膚の新陳代謝によって発生するフケの量はあまり多くありません。
目を凝らして見ないとわからないくらいの少量のフケであれば、大きなトラブルの可能性は低いでしょう。

フケが増える原因には、大きく分けて以下の5つが考えられます。

<皮膚疾患>

ノミ・シラミ・ツメダニなどの外部寄生虫や、真菌などの感染が原因の皮膚疾患でフケが増えることがあります。
原因を調べるためには、フケをセロテープやクシで集めて顕微鏡で確認します。

さらに、外へ出るかどうか、同居動物の有無など生活環境、湿疹や痒み、脱毛など皮膚の状態から総合的に診断し、治療は駆虫薬の外用薬等で行います。

また、皮膚の状態によっては、薬用シャンプーで洗うシャンプー療法を行うケースもあります。

<腫瘍、代謝異常、加齢>

リンパ腫などの腫瘍、糖尿病、甲状腺機能亢進症、肝疾患、腸疾患などの代謝疾患など、免疫力が極端に落ちる疾患によって皮膚の状態が悪化し、フケが多くなることがあります。
東洋医学でも肝臓は皮膚と関連があるといわれ、肝臓の機能が低下すると皮膚に症状が現れるといわれています。

加齢や加齢による関節疾患で、猫が自分でグルーミングしなくなる場合もフケが多くなります。

<栄養不足>

皮膚や被毛の健康維持に必要なミネラルやビタミンの不足がフケを増やす原因になります。
脂質不足はフケが多くなる原因のひとつです。

<誤ったお手入れ方法>

ブラッシングを全く行わない、または過度にやりすぎる、シャンプーの洗い流しが足りずに残っている、シャンプー後の乾燥が不十分であるなど誤ったお手入れ方法を行うとフケが増えることがあります。

<乾燥やストレスなどの環境要因>

エアコンの使用により室内の空気が乾燥する夏と空気が乾燥している冬の時期は、皮膚のコンディションが悪化してフケが増えることがあります。
引っ越し、同居家族やペットが増えるなど環境の変化によるストレスもフケが増える原因のひとつです。

なお、上記の5つ以外では、遺伝性の皮膚疾患の原発性脂漏症でフケが出るケースもあります。
原発性脂漏症は、猫の皮膚疾患のなかではあまり多くありませんが、ペルシャとヒマラヤンに多いといわれています。

フケを減らすための日常生活での対策

普段のケア方法

フケを減らすための対策で最も効果的な方法は、ブラッシングです。

猫の毛は、主毛(トップコート)と副毛(アンダーコート)があり、一定の長さまで伸びて、生え変わるというサイクルを繰り返しています。
副毛は季節の変わり目の換毛期に、一斉に毛が抜けて生え変わるという特徴があります。

ブラッシングは、抜けた無駄な毛を取り除くだけでなく、皮膚の血行を良くするうえにマッサージ効果もあります。
しかし、全ての猫がブラッシング好きとは限りません。

子猫の頃から少しずつ慣らすことが大切で、嫌がる場合は一度にではなく、顔、身体、足など場所を分けて少しずつ行いましょう。
基本的には一日1回、平たいラバーブラシや目の粗いクシなど猫の好みに合わせた道具を使って優しくブラッシングします。

特に、長毛の猫は耳の後ろやお腹周りなどに毛玉ができやすいため、まめにお手入れが必要です。
猫種別の注意事項としては、ペルシャとヒマラヤンは顔が平たくて舌が短く、自分でうまく身体をなめられないことがあります。被毛の様子をよく観察し、毛艶がよくなければ飼い主さまが猫の代わりにお手入れをしてあげましょう。

また、猫は押さえつけられたり、無理強いされたりするのは苦手な動物で、濡れるのを嫌うケースが多くご自宅でのシャンプーはかなり大変です。

基本的にはご自宅でのブラッシングをまめにやっていただくのが一番ですが、お家でのケアは洗い流す必要がないドライシャンプーの活用や固く絞った濡れタオルで身体を拭いてあげる程度でよいでしょう。

上手なケアのコツは、少しずつ慣らすことと無理強いしないことです。
自宅でブラッシングが難しい場合やシャンプーが必要な場合は、動物病院やトリミングサロン等で定期的にお手入れをお願いしましょう。

ストレスを減らす環境作り

前述のとおり、環境要因によるストレスはフケが増える原因のひとつです。
猫のストレスを少しでも少なくするためには、単独でハンティングして生活していた猫の習性や行動を考えた環境作りを心がける必要があります。

具体的には、キャットタワーを窓際に設置して外を見ながら高い位置でくつろげるようにする、多頭飼育の場合はトイレの数は猫の数より多く設置するなど、猫が自分のペースで行動できるように工夫しましょう。

食事内容

猫は肉食動物で、もともとは小動物を捕食していました。
しかし、飼われている猫は狩りで動く必要もなく、キャットフードやおやつをもらい肥満になりやすい環境にあります。

肥満は内分泌疾患のリスクを高め、フケが多くなる原因になります。
肥満には特に注意して、猫の身体に合った総合栄養食と新鮮なお水が中心の食事を与え、体重管理をこころがけましょう。

なお、100%手作り食を与える場合は、リンとカルシウムのバランスや必要なビタミンの不足、脂質不足が懸念されるため、動物栄養学を学んでから実践することをおすすめします。

定期的な健康チェック

健康的な生活を送るためには、定期的な健康チェックは必須です。
特に7歳を過ぎたあたりから病気にかかりやすくなります。

最低でも年に1回は血液検査・尿検査などの健康診断を受けましょう。

猫のフケ対策に有効なケア商品

長毛か短毛かによってお手入れの違いはありますが、参考までにわたしの勤務先で実際に使用しているケア商品と猫の一般的なシャンプー方法をお伝えします。

猫のシャンプー方法

シャンプー前には念入りにブラッシングを行います。
毛玉を濡らすとさらに大きな毛玉の固い塊になってしまうため、シャンプー前のブラッシングは非常に大切です。

ブラッシング後は、シャワーの水流を弱めて後ろからそっと身体に当てて身体を濡らします。
顔を濡らすと嫌がる猫が多いので、お家でのシャンプーは無理に頭部や顔を洗う必要はありません。ただし、顎の下は汚れやすい上に猫の舌が届かない場所なので、可能であれば洗いましょう。

お湯の温度は37℃くらいの少し低めの温度に設定しましょう。

洗う際の注意点は、

の2点です。

特に長毛種は、人間の頭を洗う様に上下左右にゴシゴシ洗うとそれだけで毛が絡まって仕上がりが非常に悪くなるので要注意です。

シャンプーした後は、最初に身体を濡らした際の要領でシャンプー剤を洗い流してリンスをします。
トリートメントインシャンプーを使うとこの過程が省略できますが、リンスを使う場合はシャンプーと同じように原液を洗面器に入れたお湯で薄めてから身体に少しずつかけて最後にシャワー洗い流します。

その後は、タオルで身体を拭きドライヤーで十分乾かします。
上手に乾かすコツは、クシやブラシを使って風を当てながら根元から少しずつ乾かすことです。
乾かし方が足りないと、蒸れて皮膚のコンディションがかえって悪化するので要注意です。

なお、動物病院併設のトリミングでは、毛玉がひどい状態の長毛猫の毛刈りやシャンプーのご依頼が多く、シャンプーに慣れている猫を除いて鎮静して処置するケースがほとんどです。

おすすめのケア用品

<シャンプー>

犬や猫の皮膚は人間に比べて非常にデリケートで弱く、人間用のシャンプーは刺激が強すぎてしまいます。必ず犬や猫専用のシャンプーを使用しましょう。

以下のシャンプーは両方ともトリートメントインシャンプーなのでリンスの過程が省略できるというメリットがあるのでおすすめです。

ゾイック公式オンラインショップ / ネコ用シャンプー (zoic.jp)

自然流(犬猫用シャンプー) – RED HEART|レッドハート株式会社

<ブラッシングツール>

ご自宅でのケアは猫が嫌がらないものを選ぶことが一番です。

ブラッシングの道具は、スリッカータイプやピンブラシ、平たいコームタイプなどがあり、シリコン製の材質のものや平たいコームタイプのものが皮膚を傷めにくいと思います。

ブラシを嫌がる猫はブラッシンググローブを試してみてもよいでしょう。

<サプリメント>

皮膚の健康に配慮したサプリメントでおすすめなのは、「アンチノールプラス」です。

猫のサプリメント【アンチノール プラス】– ベッツペッツ公式サイト (vetzpetz.jp)

大学病院で行った228頭の猫のレントゲン検査で、12歳以上の猫の70%以上の猫が関節症や変形性脊椎症がみられたという報告があり、特にシニア期の猫では皮膚以外にも総合的なケアが期待できるサプリメントです。
(注)関節症は骨と骨の間にある軟骨がすり減って関節が変形して痛みを感じる病気、変形性脊椎症は背骨が変形して背中に痛みが現れる病気です。

ストレス軽減アイテム

<ドライヤーハウス>

シャンプー後に犬や猫をハウスの中に入れて乾かすドライヤーハウスが販売されています。
わたしも愛用していますが、風量が一定で熱くなりすぎず思った以上に早く乾くので、とても便利です。

ただし、普段からドライヤーハウスに慣らす必要があることと、最終的にはハンドドライヤーを使用して仕上げをする必要があるので猫によっては向き不向きがあると思います。

<フェリウェイ>

【公式】フェリウェイ (feliway.com)

猫のフェイシャルホルモン(口の周りからでるフェロモン)製剤で、猫のストレスを緩和し安心感を与える効果が期待できる製品です。
スプレータイプとアロマの様にコンセントにつないで焚くタイプの2種があります。

ロングセラー商品ですが、「効果的があった」という意見と「全く効かない」という意見があり効果には個体差があります。

<ジルケーン>

そんなときジルケーン|ジルケーン (zylkene.jp)

ミルクに含まれるタンパク質のカゼインをトリプシン加水分解したα-カソゼピンが有効成分で、犬や猫の不安を和らげる効果が期待できるサプリメントです。

サプリメントなので、効果には個体差がありますが、わたしの勤務先で猫に使用した以下のケースでは非常に効果がありました。

ケース1

仲が良かった兄弟猫が、大きな理由もなく突然部屋を分けなければいけないくらい不仲になってしまった

ケース2

長毛種の多頭飼育で、そのうちの1頭を鎮静下で毛を刈ったところ、帰宅後に他の猫が寄せ付けなくなってしまった

口コミをみるとストレス性の膀胱炎にも効果があったという意見もあるので、シャンプーや通院などの前に飲ませるなど試してみる価値はあるかもしれません。

【獣医師のアドバイス】脱毛がみられたら早めに動物病院にいきましょう

猫は、積極的に被毛をグルーミングする習慣があります。
さらに痒みや痛み、その他のストレスをグルーミングで表現します。

例えば、不妊手術等でお腹の毛を刈ると、傷が治ってもずっと舐め続けて何年もお腹の毛が生えてこないこともあるくらいです。

その他に

など、脱毛の原因が病的な要因なのかストレスなのかよくわからないこともあります。

フケが極端に増えた場合にプラスして脱毛がみられた場合は、早めに病院で診察を受けることをおすすめします。

ペット保険の選び方

ペットには、人間の様な公的な健康保険制度はありません。
そのため、動物病院での治療費の負担は全額自己負担です。

状況によっては手術や長期間の通院、治療が必要になる場合や、それに伴いペットの医療費も高額になる可能性があります。

何かあった時のための備えとしてペットのためにご自身で備えるという方法もありますが、突然のケガや病気など予想もしなかった事態に備えておくための選択肢の一つとして、ペット保険があります。

ペット保険とは、保険料をペット保険会社に支払うことで、飼い主が動物病院に支払う医療費の一部をペット保険会社が補償してくれるサービスです。

現在、多くのペット保険会社がありますが、保険会社や契約プランにより、保険料や補償の内容等は異なります。
自分とペットにあった保険を選ぶには、情報を集めて比較検討をすることが大切です。

どんな補償内容が必要かは人によって異なりますが、ここではペット保険の選び方のポイントについてお伝えします。

ペット保険選びのポイント

ペット保険を選ぶポイントは以下の3つです。

<保険料>

一般的に、補償内容が多ければ多いほど、さらにペットの年齢に比例して保険料は高くなります。

実際に支払う保険料は、月額500円~1万円くらいまでとかなり差があります。
どの補償内容が必要なのか検討し、保険料とのバランスを考えて決めましょう。

<補償内容>

補償内容は、手術のみ補償するプラン、通院も含め手術や入院も補償するプランなどいろいろなプランがあり、補償割合も30%~90%などがあります。

保険料とのバランスもありますが、「万が一の事態に備え高額になりがちなペットの治療費の負担を軽くし、さらに通院のハードルが下がる」という意味では通院と手術・入院を補償するプランがおすすめです。

<加入時の年齢>

ペット保険は、ペットの年齢が高ければ高いほど保険料が高くなるのが一般的で、ある程度の年齢になると加入できないプランもあります。
反対に、シニア専用の保険やシニアになっても継続できるペット保険もあります。

現在、猫の平均寿命は約15歳で、年々伸びていく傾向があります。
歳を重ねると病気になりやすくなるため、シニアになっても使い続けられるペット保険をおすすめします。

保険会社によっては動物病院での支払い時に補償額を差し引いて窓口精算できる(対応可能動物病院のみ)ペット保険や、医療やしつけについて獣医師に24時間無料電話相談ができるサービスが付帯しているペット保険もあります。
初めて猫を飼う方には、この様な相談ができる付帯サービスがあるペット保険がおすすめです。

なお、ペット保険は病気やケガのために備える目的のものなので、ワクチンや不妊・去勢手術、ノミ・マダニなどの予防に関するものや保険加入前に発症している病気や先天性疾患に関しては補償の対象外なので注意しましょう。

この記事の監修者

大熊真穂

大熊真穂

現在複数の動物病院で臨床獣医師として勤務しながら専門知識や経験を活かして各種メディアや個人サイトでライターとして情報を発信している。
▼ドリトルけいのいぬねこ健康相談室
https://www.dolittlekei.com/
ライフワークは「ペットと飼い主様がより元気で幸せに過ごすお手伝いをする」こと。