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【獣医師監修】犬の飼い方のコツや注意点について
「飼う前の準備は?」

【獣医師監修】犬の飼い方のコツや注意点について「飼う前の準備は?」

犬との生活は、わたしたちにたくさんの癒しや喜びを与えてくれます。
しかし、犬を飼うためには日々のお世話に費やす時間と労力、お金が必要です。
さらに、病気になる可能性や介護が必要になる場合も考えられます。
「何があっても最後まで責任を持って愛犬のお世話をする」という気持ちが、犬を飼う前の最も大切な心構えです。

また、「犬」といっても犬種によって体格や性質、飼い方は異なります。
飼い始めてこんなはずではなかった、ということのないように飼い方をはじめ、その犬種特有の病気や性質を良く調べておきましょう。

この記事をまとめると

犬を飼う前に、以下の準備をしておくことが大切です。

  • 経済面:フード代や医療費などの費用を準備する。
  • 時間面:散歩や遊び、お世話の時間を確保する。
  • 飼育環境:犬が過ごしやすい環境を整える。
  • しつけ:しつけの基本を学んでおく。
  • 家族や周囲の理解:家族や周囲の理解を得る。

要約

フードや水入れ、トイレ、おもちゃ、リードなど、必要な飼育用品を用意する。
犬が過ごすスペースを確保する。狂犬病予防注射やワクチン接種などの健康管理を行う。
しつけの基本を学んで、早いうちからしつけを始める。

犬を飼うことは、大きな責任を伴います。十分な準備をして、幸せな犬との生活を送りましょう。

犬を飼う前の準備は何をすればいいの?

日本では、比較的飼いやすい小型犬の飼育頭数が非常に多いので、小型犬を室内で飼育することを想定して犬を飼う前の準備について解説します。

犬を飼う前に必要なもの

犬を飼う前に最低限用意するものは

  • ・サークルやケージ
  • ・クレート(キャリーバック)
  • ・食器
  • ・犬用トイレとペットシーツ
  • ・犬用フード

の5つです。
特に子犬の場合は、トイレのしつけや誤飲の防止、ソファーなど高いところからの飛び降りによる事故を防ぐために、サークルやケージは必須です。

サークルやケージの中にベッドまたはクレートを入れ、トイレを設置し愛犬専用スペースを作りましょう。
なお、サークルやケージの置き場所は、犬が落ち着いて過ごせる様な場所を選びましょう。

家の中の環境を安全に

キッチンや階段など入ってはいけない場所には柵を設置する、玄関やベランダには必要に応じて脱走防止柵の設置をするなど事故防止対策が大切です。
誤飲防止のために食品や薬、タバコなどは犬の手の届かない場所にしまい、ごみ箱は蓋つきのものを使いましょう。

犬と出会う方法は?

子犬をペットショップやブリーダーから購入する以外に、お住まいの地域の動物保護センターなどの公共の施設や新たな飼い主を探している動物愛護団体から子犬または成犬を譲り受ける方法もあります。
初めて犬を飼う場合は、しつけがしやすく飼いやすい子犬をお迎えすることをおすすめします。

犬をお迎えしてからはどうすればよい?

お迎えした当日は、環境に慣らすためにサークルやケージの中でゆっくり休ませましょう。
食事は、犬のライフステージにあったドッグフードを用意し、一日2回~3回に分けて与えます。
子犬の場合は、生後4か月~6か月くらいまでドライフードをふやかして与えることをおすすめします。
お迎えした翌日から、トイレのトレーニングや噛んでいいものと悪いものを教えるしつけを始めましょう。
犬用のおもちゃをいくつか用意すると、遊び以外でも楽しくしつけを行うことが出来ます。
また、お迎えしてからすぐに体調が悪くなるケースもあるので、通院しやすく信頼できる動物病院を探しておくと安心です。

犬のしつけのポイントや注意点

人間と生活する犬には、最低限のしつけを行う必要があります。
目的は「飼い主と愛犬が安心して一緒に生活するため」です。

しつけを全く行わなかった場合、「家の中の好きな場所に排泄し、気になることがあると吠え続け、更に嫌なことがあると暴れて手が付けられない」という愛犬に育ってしまう可能性があります。
さらに、しつけを行わないと飼い主による制御ができないため、愛犬の体調が悪くても動物病院に連れて行くことすらままならないという事態になりかねません。

最低限必要なしつけとは?

最低限必要なしつけとは、

  • ・無駄吠えをさせない
  • ・トイレのしつけをする
  • ・咬んでよいものといけないものを教える
  • ・クレートやハウスでおとなしく待つ

の4つです。

犬のしつけ方について

しつけの方法はいくつかありますが、基本的な方法をご紹介します。

無駄吠えをさせない

警戒や何かを要求している、そして興奮しているなど犬が吠えるのは理由があります。
そのため、しつけをしても犬が吠えるのを完全にやめさせることは不可能です。
しかし、しつけをすることで、無駄吠えをある程度やめさせることはできます。

無駄吠えをやめさせる具体的な方法は、「犬が吠え始めたらおやつやおもちゃなどで注意を引き、犬を座らせるなどして落ち着かせ、吠えるのをやめたら褒める、またはご褒美を与えること」を繰り返します。

トイレのしつけをする

犬の排泄のタイミングは食後なので、食後にソワソワし始めたらトイレに連れて行き、排泄させます。これも、うまくできたら褒める、を繰り返します。

トイレでうまく排泄できる確率をあげる方法は、そろそろトイレかな…という時間にサークル内のトイレで排泄を促すことや、サークル外にトイレを設置し、愛犬がすぐにトイレに行けるように工夫をすることです。
トイレのしつけはすぐに覚える犬もいれば、失敗が多い犬もいます。
失敗しても叱らずに、何度も繰り返して教えましょう。

咬んでよいものといけないものを教える

特に子犬の時期に多いのですが、甘噛みといって飼い主の手や足などに咬みつくことがあります。
これをそのまま咬ませていると、成長しても同じように咬みつく犬になってしまいます。
その様な事にならないためには、子犬の時期に咬んでよいものといけないものを教える必要があります。
咬んでよいものは愛犬専用のおもちゃだけです。
それ以外のもの、例えば人間の手や足、日用品、家具などは咬んではいけないものです。

具体的なしつけの方法は、甘噛みをされたら、「痛い!」といって手を後ろにかくして咬むのをやめさせることから始めます。
興奮してさらに咬んでくるようなら、すぐにサークルやクレートに入れて落ち着かせます。
同様に、咬んではいけないものを咬もうとしたら、タイミングよく「ダメ!」と叱り、やめたら褒めることを繰り返します。

これができるとさらに安心!しつけの応用編

  • ・「お座り」や「待て」「伏せ」などのコマンドに従わせる
  • ・身体を触っても嫌がらない様にする
  • ・歯みがきなど歯のケアができるようにする

「お座り」「待て」「伏せ」などのコマンドはおやつやドッグフードなどの食べ物を使って教える方法が一般的です。

「お座り」は、犬の鼻先におやつを持っていき、ゆっくりと上にあげると自然に座る姿勢になるので、「お座り」と言いながらうまくできたらご褒美を与えることを繰り返します。

「待て」は、同じようにおやつを犬の目の前に置き、待たせます。
すぐに飛びついてしまう場合は、ご褒美を手で持って反対側の手で隠して「待て」と言います。
最初は短い時間からスタートし、うまく待てたら「ヨシ」の言葉と共にご褒美と褒めることを繰り返します。

「伏せ」は「お座り」ができるようになったら、さらに低い姿勢になるようにおやつでコントロールし、同様にできたら褒めてご褒美を与えます。

子犬の時期には、身体を触る、口を開けるなど人間に身体を触れられることに慣れさせることも大切なしつけです。
これは、動物病院やトリミングサロンなどで人に触られることに強い恐怖心やストレスをなるべく少なくするための第一歩となります。

さらに、可能であれば歯に触ることからスタートして歯のケアがお家でできるまで慣らしましょう。
日本では、3歳を過ぎた成犬の8割が歯周病または歯周病予備軍と言われています。
子犬の頃から歯のケアを始めないと、成犬になっていきなり始めようとしてもできないことがほとんどなので、ぜひ習慣にしてみてください。

犬のしつけのポイントや注意点

犬のしつけの方法で最も大切なのは、犬に体罰を与えるしつけの方法や無理やり押さえつける方法は絶対に行わないということです。
さらに、「●●!」と愛犬の名前で叱ることはやめましょう。
愛犬が「自分の名前を呼ばれるのは怒られるときだ」と認識してしまう可能性があるからです。

基本的にはうまくできたら褒める、そして何度も繰り返すことが大切です。
叱るのは、咬んだ時だけです。
「ダメ!」と短い言葉でしっかり叱って愛犬の注意を引き、やめさせましょう。
ご自身でしつけを行ってもうまくいかない場合は、かかりつけの動物病院に相談する、信頼できるトレーナーさんに指導してもらうという選択肢もあります。
ただし、その場合はトレーナーさんに愛犬を預けるのではなく、飼い主様ご自身が愛犬のしつけに参加して教えてもらう方法がおすすめです。

注意点として最後にお伝えしたいのは、柴犬などのプリミティブドッグを除き「犬は体格や性格など得意なことに合わせて目的をもって繁殖された」という点です。
狩猟をするのが得意な犬種なのに散歩の時間が短く極端に運動量が少ない、愛玩犬なのにひとりで留守番ばかりで退屈させているなど、その犬本来の持つ性質とかけ離れた生活が続くと、問題行動を起こす原因になるので注意しましょう。

ペット保険とは

ペットには人間の様な公的な保険制度はありません。
そのため、動物病院での治療費は全て自己負担です。
犬(特に子犬の時期)は何でも口にすることが多く、おもちゃを飲み込んで内視鏡検査や開腹手術が必要になる場合も少なくありません。
この様な場合には動物病院に支払う治療費は高額になる可能性があります。

誤飲以外にも病気やケガなど、愛犬にいつ何が起こるかは全く予想ができません。
このような突然の出費に備える選択肢のひとつとして、ペット保険があります。

ペット保険とは、保険料をペット保険会社に支払うことで、飼い主が動物病院に支払う医療費の一部をペット保険会社が補償してくれるサービスです。
現在、ペット保険を扱う保険会社は10社以上あります。
ご自身と愛犬に合ったプランを選ぶためには、ペット保険会社のプランについての情報を集めて比較検討する必要があります。

ペット保険の選び方

現在国内でペット保険を扱う会社は、大きく分けて損害保険会社と少額短期保険会社の2つがあります。
損害保険会社は、大手で加入者数も多くて窓口清算できる動物病院も多く使いやすい印象があり、少額短期保険は大手損害保険会社にはないユニークなプランが充実しています。
どんな補償内容が必要かは人によって異なりますが、ここではペット保険の選び方のポイントについてお伝えします。

ペット保険選びのポイント

ペット保険を選ぶポイントは以下の3つです。
●保険料
●補償内容の違い
●加入時の年齢

<保険料>

一般的に、補償内容が多ければ多いほど、さらにペットの年齢に比例して保険料は高くなります。実際に支払う保険料は、月額500円~1万円くらいまでとかなり差があります。
どの補償内容が必要なのか検討し、保険料とのバランスを考えて決めましょう。

<補償内容>

補償内容は、手術のみ補償するプラン、通院も含め手術や入院も補償するプランなどいろいろなプランがあり、補償割合も30%~90%などがあります。
保険料とのバランスもありますが、「万が一の事態に備え高額になりがちなペットの治療費の負担を軽くし、さらに通院のハードルが下がる」という意味では通院と手術・入院を補償するプランがおすすめです。

<加入時の年齢>

ペット保険は、ペットの年齢が高ければ高いほど保険料が高くなるのが一般的です。
また、ある程度の年齢になると加入できないプランもあります。

反対に、シニア専用の保険やシニアになっても継続できるペット保険もあります。
犬の平均寿命は約15歳なので、シニアになっても使い続けられるペット保険をおすすめします。
また、保険会社によっては動物病院での支払い時に補償額を差し引いて窓口精算できる(対応可能動物病院のみ)ペット保険や、医療やしつけについて獣医師に24時間無料電話相談ができるサービスが付帯しているペット保険もあります。

初めて犬を飼う方には、この様な相談ができる付帯サービスがあるペット保険がおすすめです。
また、ペット保険は病気やケガのために備える目的のものなので、ワクチンや不妊・去勢手術、フィラリやノミ・マダニなどの予防に関するものや保険加入前に発症している病気や先天性疾患に関しては補償の対象外なので注意しましょう。
また、ペット保険の補償には限度額や限度日数・回数など制限があるので、保険料や補償内容・年齢などの加入条件と併せて確認しておくと安心です。

この記事の監修者

大熊真穂

大熊真穂

現在複数の動物病院で臨床獣医師として勤務しながら専門知識や経験を活かして各種メディアや個人サイトでライターとして情報を発信している。
▼ドリトルけいのいぬねこ健康相談室
https://www.dolittlekei.com/
ライフワークは「ペットと飼い主様がより元気で幸せに過ごすお手伝いをする」こと。

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