12周年

【獣医師監修】
猫の下痢はペット保険で補償対象?
原因や予防法、治療費について

猫の下痢はペット保険で補償対象?原因や予防法、治療費について

下痢や嘔吐などの消化器症状は、猫に非常に多い症状です。

わたし自身も日々の診察をする上で、特に生後3か月くらいの子猫の時期は便が緩くなることが多く、何度も病院に来院されるという印象があります。

下痢の原因は様々で、急性の下痢か慢性の下痢なのか、また比較的軽いものなのか全身症状を伴う重度な状況なのかによって治療は変わってきます。

また、ペットには人間の様に公的な健康保険制度がないため、動物病院での治療費はすべて自己負担です。

そのため、慢性の下痢や全身症状を伴う重度な状況の場合は、動物病院での検査や治療費は高額になることが予想されます。

病気に対する心配に経済的な負担が加わると、飼い主様にとっては非常に大きなストレスになりますが、こんな時に頼りになるのがペット保険です。

ペット保険は、保険会社に月々の保険料を支払うことで、動物病院での自己負担額を3割~7割ペット保険が負担してくれるというサービスです。

ただし、ペット保険会社が補償してくれる割合は、加入する保険会社やプランによって異なり、動物病院の窓口で清算できる場合とそうでない場合があります。

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この記事では、猫の下痢についての症状や原因についての情報と併せて、ペット保険についての情報をまとめました。

    目次

  1. 猫の下痢ってどんな病気?
  2. 猫の下痢の治療法・治療費
  3. 猫の下痢の予防法
  4. 猫の下痢はペット保険で補償されるか

猫の下痢ってどんな病気?

下痢とは「正常ではない排便」で、具体的には便の水分含有量が多くなることや排便回数が増えることを言います。

ただし、排便回数や便の性状には個体差があるため、普段の便の状態や排便のパターンを知っておくことが大切です。

また、床に落ちている吐しゃ物(吐いたもの)を下痢と勘違いする場合や、陰部や肛門からの分泌物を下痢と間違えることがあります。

正確な診断のためにも、動物病院での診察の際は便を持っていき検査してもらうことが大切です。

症状

よく見られる下痢の症状は

● 排便量や水分含有量が増す
● 少量の便が何度も排泄されてしぶりを伴う

の2つのパターンです。

また、便に血が混ざり、嘔吐や食欲不振などの消化器症状も併発することもあります。

頻回の下痢や嘔吐が続くと脱水症状が起こります。

特に子猫や高齢の猫では脱水症状は命に関わるので、「お腹を壊しただけ」と甘く見ないですぐに動物病院を受診しましょう。

原因

猫の下痢の原因は様々です。

食事を与えすぎて下痢をしてしまった、というわかりやすい原因もあれば、詳細な検査をしてもなかなか原因が特定できないこともあります。

猫の下痢の原因は大きく分けると、消化管内の寄生虫・原虫による下痢、細菌やウイルスなどの感染症による下痢、過食を含め食事が原因の下痢、炎症性腸疾患などの炎症による下痢、リンパ腫や腺癌などの腫瘍による下痢、ストレスなどの精神的なものによる下痢、その他の7つが挙げられます。

●消化管内の寄生虫・原虫

回虫などの消化管内寄生虫やジアルジア、コクシジウムなどの原虫の寄生が原因です。

検便で虫卵や虫体を発見できれば適切な治療ができますが、一回の検便では発見できないこともあるので、複数回の検便が必要です。

また、原虫は駆虫に時間がかかり、何度も再発することがあります。

●感染性

<ウイルス>

ウイルスの感染が原因の下痢です。

特にパルボウイルス感染症や猫伝染性腹膜炎は、下痢だけではなく全身状態が悪化し致命率が非常に高い感染症です。

<細菌>

サルモネラ属等の細菌の感染による下痢や、クロストリジウムなどの嫌気性菌が増え、腸内細菌叢のバランスが崩れて下痢になる場合があります。

●食事関連性

食事の内容の急な変更、食物アレルギーや食事不耐性(乳糖不耐性など)、過食など、食べたものが身体に合わなかったり多すぎたりすることが原因です。

誤飲や高脂肪食の摂取なども下痢をする場合があります。

●炎症性

炎症性腸疾患、大腸炎などの炎症性疾患が原因で下痢になります。

特に炎症性腸疾患は慢性の下痢が続き、長期に渡って治療が必要です。

●腫瘍

リンパ腫、腺癌など消化管内の腫瘍が原因です。

下痢だけではなく、食欲不振や体重減少、嘔吐などの症状があり、全身状態が悪化します。

状況によっては開腹手術を行う場合もあります。

●ストレス

新しい猫を飼い始める、人の出入りが増えるなどの環境の変化によるストレスで下痢になる場合があります。

●その他

甲状腺機能亢進症や糖尿病などの内分泌疾患が原因で二次的に過食になり下痢を起こすケースや膵炎で下痢になる場合もあります。

症状

下痢の症状としては、水分の多い下痢(水様便)、水分がそれほど多くない下痢(軟便)、血や粘液が混じった下痢(血便)などがあります。

下痢以外にも嘔吐などの症状も見られた場合は、感染性の腸疾患の疑いがあるため注意が必要です。

免疫力の低い子猫や高齢の猫は腸機能が低下しており、重篤化しない病気でも命を落としかねないので早急に診療を受けましょう。

また、猫の下痢が続いている場合便の状態や量、回数、匂いや色、下痢以外の症状があるかなどを把握しておきましょう。

カメラで下痢の状態を撮影しておくと医者の診断にも役立ちます。

原因

下痢の原因としては、感染性の腸疾患、炎症性の腸疾患、腫瘍、アレルギー、肝疾患、寄生虫など様々で完璧に対策することは難しいので、飼い主は日頃から猫の便の状態をこまめに観察するよう心がけましょう。

また、生活環境の変化や長時間の移動によるストレスが原因の場合もあります。

猫の性格によってストレスの感じ方は様々なので出来るだけストレスを取り除いてあげるようにしましょう。

猫の下痢の治療法・治療費

上記の様に猫の下痢の原因は様々です。

そして、比較的軽い症状なのか、緊急性を要するものなのかによって治療法と治療費は大きく異なります。

そして、動物病院での治療費は「一律いくらと価格設定ができない」という法律に基づき、同じ治療や同じお薬を使用しても病院によって費用は違います。

下痢の治療は検便(糞便検査)を行うことが基本ですが、検便だけで原因がわからない場合も多くあります。

比較的症状が軽ければ下痢止めや整腸剤などの投薬で対症療法を行いますが、何度も再発する下痢や、全身症状が悪化する場合はウイルス検査も含めて血液検査や腹部の超音波検査、レントゲン、必要に応じて全身麻酔下で内視鏡検査と腸の病理組織検査を行う必要があります。

以下の表は、下痢の治療内容と治療費の一例をまとめたものです。

治療内容 治療費の一例
診察料 500円~2,500円
糞便検査 1,000円~2,000円
ウイルス検査 3,000円~8,000円
血液検査 10,000円前後
腹部超音波検査 6,000円前後
点滴(皮下・静脈) 1,500円~5,000円
下痢止めや抗生剤などの投薬 一日あたり100円~500円
駆虫薬 2,000円~3,000円
内視鏡検査 30,000円~50,000円
病理検査 10,000円~20,000円

急性の下痢で、対症療法ですぐに治ればまだよいのですが、慢性の下痢の場合は一回の治療費は少なくても長期間に渡って治療が必要なため、治療費の負担も大きくなります。

上記以外でも、腫瘍が原因の場合は開腹手術や抗がん剤治療が必要になることがあり、手術の費用や抗がん剤の投与など、更にプラスして数万円~20万円前後の治療費がかかります。

このような場合にも、ペット保険に加入していれば安心して治療を受けることができる上に必要な治療の選択肢も広がります。

ただし、どの保険会社にも保険加入者に対して支払われる補償金額や日数(または回数)には上限があるので注意が必要です。

いざというときに困らないように、補償内容やプランをしっかり確認しましょう。

猫の下痢の予防法

猫の下痢を完全に予防することはほとんど不可能です。

しかし、食事についてお家で気をつけることで下痢を防げる可能性はあります。

具体的には、愛猫の便の状態や嗜好性をみながら、同じタンパク源(鶏肉なら鶏肉、魚なら魚など)や同じキャットフードを2~3種類決めてローテーションで与える、人間の食べ物を与えない、 食事やおやつを与えすぎないように量をきちんと量る、の3つです。

また、市販のキャットフードを与えるといつも便が軟らかい、などの場合は下痢の猫用に作られた療法食もあります。

腸内細菌のバランスを整える作用があるものなど、療法食に変えて下痢が改善する場合も多々あるので、かかりつけの動物病院で相談してみましょう。

猫の下痢は
ペット保険で補償されるか

保険会社や加入プランによって異なりますが、猫の下痢はペット保険の補償対象になる場合があります。

ただし、補償対象外のケースもあるので、ペット保険に加入する前にどのような病気が保険の補償対象になるのかを調べておく必要があります。

また、ペット保険は保険加入後に発生した病気や怪我について補償するのが基本で、ワクチン接種や予防に関わることは補償対象外です。

例えば、慢性の下痢が続いているから治療費の負担を軽くするという目的でペット保険に加入しても、加入以前からずっと続いている下痢に対しては補償対象外となる可能性が高いと考えられます。

この様にペット保険は、病気になってからではなく「何かあった時のために備える」という考え方で加入することをお勧め致します。

もちろん、ペット保険に加入しないという選択肢もあると思います。

しかし、わたしが日々の診察の中で飼い主さまの正直な感想を聞いて感じるのは、ペット保険の加入は飼い主様の安心につながっているということです。

また、病気以外でも「紐を飲み込んで開腹手術が必要になってしまった」「ちょっとした不注意が原因で骨折してしまった」など、ある日突然びっくりするようなトラブルが起こる、ということはペットを飼ったことがある方なら一度や二度は体験されているのではないでしょうか。

最近はペット保険を扱っている会社が増えて、治療費の自己負担を軽くするという保険としての機能だけでなく、加入者に対してきめ細かいサービスを提供する会社も多くなっています。

ただし、補償内容が多くなればなるほど、そしてペットの年齢が高くなればなるほど月々の保険料は高くなるのが一般的です。

月々の保険料を含め、ご自身とペットにとってどの様な補償内容が必要で、どの様なサービスがあるのか等、情報を集めてご自身の安心につながる保険会社とプランを選択することをお勧め致します。

この記事の監修者

大熊真穂

大熊真穂

現在複数の動物病院で臨床獣医師として勤務しながら専門知識や経験を活かして各種メディアや個人サイトでライターとして情報を発信している。
▼ドリトルけいのいぬねこ健康相談室
https://www.dolittlekei.com/
ライフワークは「ペットと飼い主様がより元気で幸せに過ごすお手伝いをする」こと。

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