「お留守番させると帰宅するまでずっと吠えている」「トイレのしつけは出来ているはずなのに、ひとりで家にいると常にあちこちに排尿や排便をしている」など、愛犬の気になる行動はありませんか?
今回、愛犬の分離不安症について160人にアンケート調査を実施しました。
その結果を踏まえ、犬の分離不安症について解説します。
「お留守番させると帰宅するまでずっと吠えている」「トイレのしつけは出来ているはずなのに、ひとりで家にいると常にあちこちに排尿や排便をしている」など、愛犬の気になる行動はありませんか?
今回、愛犬の分離不安症について160人にアンケート調査を実施しました。
その結果を踏まえ、犬の分離不安症について解説します。
分離不安症は、飼い主と離れることで犬が不安やストレスを感じる症状である。
アンケート結果による、多く見られる症状は以下の6つ
分離不安症とは、飼い主と離れることで犬が過度の不安やストレスを感じ、それが原因となって引き起こされる症状です。
原因は、社会化トレーニング不足や生活環境の変化、恐怖体験などが考えられます。
対策としては、行動療法や薬物療法が効果的であり、適切な環境づくりが重要となります。
分離不安症とは、飼い主と離れることで犬が過度の不安やストレスを感じ、それが原因となって引き起こされる症状です。
分離不安症による症状は、特に飼い主が留守の時にみられ、性別や犬種に関わらず、飼い主に強く依存しているような犬に発症しやすい傾向があります。
また、引っ越しや家族が増えるなどの生活環境の変化、高齢犬で視覚や聴覚の低下によって発症するケースもあります。
2024年9月に、飼い犬が分離不安症になったことがある飼い主さま160人を対象に以下の5つの質問に回答していただくアンケート調査を実施しました。
アンケートの結果を踏まえて分離不安症について解説致します。
分離不安症の症状が始めて現れた時期として最も多かったのは、0~1歳の子犬の時期で約23%、次に多かったのは4~5歳の比較的若い成犬期で約21%でした。
子犬の時期に分離不安症の症状が現れるのは、子犬がまだ新しい生活環境に慣れていない、ハウスやクレートで待つトレーニングが十分ではないことなどが考えられます。
しかし、1歳を過ぎた比較的若い成犬期に分離不安症の症状がでるのはなぜでしょうか。
この時期は、「子犬から成犬へと成長する過程で、人との生活で自分なりに学習したことを実践する」時期で、人にとっては問題だと思われる行動も犬にとっては何らかの理由があることが多いといわれています。
そのため、犬の行動の理由を理解して対策を考える必要があります。
アンケートの結果で最も多かった症状は、半数以上の飼い主さまが「過度な吠え」で、「家具や物を噛む」「トイレの失敗」「震えやパニック」「食欲不振」「手足を舐める、脱毛が起こる」などの回答がありました
これらの症状は分離不安症に多い症状ですが、精神的な問題だけではなく身体的に問題があって生じているケースもあるため、まずは身体的な問題がないかどうかをチェックすることが大切です。
約32%の飼い主さまが「子犬のときから1匹で過ごす経験が少なかった」、約28%の飼い主さまが「社会化トレーニングが不足していた」と回答しています。
この結果から、子犬の頃から愛犬がひとりで安心して過ごせる様なしつけや環境を整えることが分離不安症の予防につながるといえるでしょう。
対処方法として最も回答が多かったのは、「一緒にいる時間を増やす、安心できるスペースを増やすなど、自宅でできる対策を試みた」という飼い主さまで、46.25%、次いで獣医師に相談した方が約33%でした。
一方で、約3割の飼い主さまが、「特に対策は取らなかった」と回答しています。
後述しますが、わたしの愛犬も引っ越しが原因で一時的に分離不安症になったことがあり、「何とかしてあげたい」と思う飼い主さまの気持ちがよくわかります。
しかし、「飼い犬が分離不安症だと考えていたが、実際にカウンセリングや診察を行うと違うこともある」と、動物の行動療法を行っている獣医師による報告もあります。ご自身で対処してみてうまくいかない場合は、積極的に獣医師に相談しましょう。
分離不安症の改善に最も効果があった方法は「犬をひとりにさせる時間を少しずつ増やして慣れさせた」で、次に「おもちゃや食べ物を使ってひとりの時間を退屈させないトレーニングをした」でした。
これらの方法は、分離不安症の治療方法として行われている方法です。
しかし、15%の飼い主さまが「改善していない」と回答しており、分離不安症で悩んでいる飼い主さまが一定数いらっしゃることがわかりました。
分離不安症の主な症状は、家具などを噛んだり引っかいたりする破壊行動や、トイレ以外での不適切な排泄、過度の吠えなどで、これらの症状は特に飼い主が留守の時に起こります。
犬が不安や恐怖を感じる時に起こす症状は、以下のとおりです。
飼い主さまが外出しようとしたり、犬を留守番させようとしたりした際に、上記の様な行動がみられる場合、家にいる時にも常に飼い主のそばにくっついて離れようとしない場合は分離不安症の初期サインかもしれません。
また、動物病院などで一瞬でも飼い主と離れると、泣き叫ぶように吠え続ける愛犬も要注意です。
分離不安症の原因は主に以下の要因が考えられます。
社会化トレーニングとは、人間と生活するにあたり犬の周りに起こり得る色々な物事に慣れさせることです。
特に子犬の時期の社会化トレーニングは非常に重要で、社会化トレーニングが不十分なまま成長すると、犬は様々な刺激に対して過剰に不安や恐怖を感じるようになります。
引っ越し、今まで誰かが必ず家にいたのに結婚や就職などによりひとりで留守番することが多くなったなど、生活環境の変化が原因で分離不安症になるケースはわたしの経験上非常に多いと感じます。
ひとりで留守番をしている際に大きな雷や地震を体験することが引き金となって、分離不安症を発症するケースがあります。
また、以前捨てられたことがあるなどの辛い経験により、新しい生活環境になって飼い主に過度に依存することで分離不安症の症状がみられる場合もあります。
痛みを感じている、思うように動けない、視覚や聴覚が弱って犬が不安や恐怖を感じることが、特に高齢犬の分離不安症の原因となります。
犬と飼い主が常にべったりで犬がかまって欲しい時はいつでも相手をする、という環境や、外出の際に「ごめんね」と謝りながら出かけていくなど、分離不安を増長させるコミュニケーションの取り方は、留守番が苦手な愛犬をつくってしまいます。
分離不安症は、有効な治療方法が確立されています。
具体的な治療方法は、ご自宅で行う「行動療法」と行動療法と併用して行う「薬物療法」の2つです。
行動療法とは、飼い主さまと愛犬のコミュニケーション方法・生活環境などを見直して、愛犬の過度な依存心を軽減させるために行うものです。
基本的には犬がひとりでいることに少しずつ慣れさせていく方法で、他にも
などの対策も有効です。
また、天気やその日の愛犬の状態など、留守番に関する記録をつけると行動療法を行う際に非常に役に立ちます。
薬物療法は分離不安治療補助剤を使用して、行動療法の効果を高めるために行います。
分離不安症の犬では、脳内の神経伝達物質のひとつであるセロトニンが減少し、その働きが弱くなっているために症状が現れていると考えられています。
分離不安症の治療に使用するお薬は、セロトニンを増加させる作用があります。
お薬以外では、心を落ち着かせる成分が入っているサプリメントやドッグフードも販売されています。
分離不安症を完全に予防することは不可能ですが、最も有効な予防方法は普段から愛犬に過干渉になりすぎないことです。
お互いが快適に過ごすためには、犬と人の関係にも適度な距離感が必要です。
クレートやサークルの中でひとりでも大人しく過ごせるようにしつけを行い、愛犬が落ち着いて過ごせるような環境づくりをこころがけましょう。
分離不安症を含め犬の精神的な問題は、非常にデリケートな問題です。
その理由は犬だけが原因ではなく、飼い主さまや生活環境が原因になっていることもあるからです。
そのため、犬の行動だけを修正しようとしてもなかなかうまくいかず、対策も千差万別で正解はありません。
愛犬が分離不安症かもしれない、と思ったらなるべく早くかかりつけの動物病院の獣医師に相談し対策を考える必要があります。
ただし、全ての獣医師が犬の行動学について専門知識があるとは限りません。
どうしても解決しない場合は、信頼できるドッグトレーナーさんを紹介してもらうか、動物行動学専門の獣医師の診察を受けるという方法をおすすめします。
参考:日本獣医動物行動研究会HP行動診療を行う施設(地域別一覧)
http://vbm.jp/region/
ここでは、わたしの体験を含めた実際にあった事例をご紹介します。分離不安症で困っている方のヒントになれば幸いです。
わたしの愛犬は、子犬の頃からひとりでお留守番の際や寝る時はサークルの中、というしつけをして育ちました。
愛犬が5歳の時に、わたしが今まで勤めていた動物病院を退職して引っ越しと共に新しい勤務先に勤務するという大きな環境の変化がやってきました。
引っ越しの準備で慌ただしい中、出勤の際に愛犬をサークルに入れようとしたところ、いつもは淡々とハウスする愛犬が急にガタガタと震えだしてわたしに飛びついてきて離れなくなってしまったのです。
今考えると、家の中は引っ越しの準備でぐちゃぐちゃ、わたしは引っ越しの忙しさと転職への不安から落ち着かない状況で、愛犬も不安だったのだろうと思います。
その際にわたしが取った行動は、
の2つでした。
ペットカウンセラーの方がわたしの話を聞いて下さったことで、わたしの不安や焦りが落ち着き、愛犬と一緒にいることで自分自身が安心できたせいか、引っ越しが終わって新しい環境になってすぐに愛犬はいつもの落ち着きを取り戻してくれました。
シニア期に差し掛かったマルチーズの飼い主さまの例です。
それまで常に一緒に過ごしていた飼い主さまが、ご家庭の事情で毎日仕事に行くことが決まりました。
試しに短時間・隔日で仕事をはじめたところ、不在の間ずっと吠えている様子で近所迷惑になるのではないかとご相談に来られました。
「毎日仕事をする」ということは既に決定しているため環境は変えられず、分離不安の治療の一環で使用するサプリメント等の投薬では全く状況は変わりませんでした。
飼い主さまには、罪悪感を持たずに愛犬をお留守番させてもらうようにしていただき併せて東洋医学的な治療を行いました。
さらに、留守中に安心できる環境作りを心がけていただいたところ、少しずつですが過度な吠えが落ち着いてきました。
上記2例の状況をみても、分離不安症は年齢に関わらず発症する可能性があります。
また、5~21%の犬が分離不安で苦しんでいるという報告もあり、飼い主さまご自身も引っ越しや子供が生まれて家族が増えるなどの生活環境が変わることは避けられません。
困ったらなるべく早く専門家の力を借りて、愛犬とご自身が安心できる方法を探しましょう。
ペットには、人間の様な公的な健康保険制度はありません。
そのため、動物病院での治療費の負担は全額自己負担です。
状況によっては手術や長期間の通院、治療が必要になる場合や、それに伴いペットの医療費も高額になる可能性があります。
何かあった時のための備えとしてペットのためにご自身で備えるという方法もありますが、突然のケガや病気など予想もしなかった事態に備えておくための選択肢の一つとして、ペット保険があります。
ペット保険とは、保険料をペット保険会社に支払うことで、飼い主が動物病院に支払う医療費の一部をペット保険会社が補償してくれるサービスです。
現在、多くのペット保険会社がありますが、保険会社や契約プランにより、保険料や補償の内容等は異なります。
自分とペットにあった保険を選ぶには、情報を集めて比較検討をすることが大切です。
どんな補償内容が必要かは人によって異なりますが、ここではペット保険の選び方のポイントについてお伝えします。
ペット保険を選ぶポイントは以下の3つです
一般的に、補償内容が多ければ多いほど、さらにペットの年齢に比例して保険料は高くなります。
実際に支払う保険料は、月額500円~1万円くらいまでとかなり差があります。
どの補償内容が必要なのか検討し、保険料とのバランスを考えて決めましょう。
補償内容は、手術のみ補償するプラン、通院も含め手術や入院も補償するプランなどいろいろなプランがあり、補償割合も30%~90%などがあります。
保険料とのバランスもありますが、「万が一の事態に備え高額になりがちなペットの治療費の負担を軽くし、さらに通院のハードルが下がる」という意味では通院と手術・入院を補償するプランがおすすめです。
ペット保険は、ペットの年齢が高ければ高いほど保険料が高くなるのが一般的で、ある程度の年齢になると加入できないプランもあります。
反対に、シニア専用の保険やシニアになっても継続できるペット保険もあります。
現在、犬の平均寿命は約15歳で、年々伸びていく傾向があります。
歳を重ねると病気になりやすくなるため、シニアになっても使い続けられるペット保険をおすすめします。
保険会社によっては動物病院での支払い時に補償額を差し引いて窓口精算できる(対応可能動物病院のみ)ペット保険や、愛犬の病気や気になる症状、しつけ相談などを獣医師に24時間無料電話相談ができるサービスが付帯しているペット保険もあります。
初めて犬を飼う方には、この様な相談ができる付帯サービスがあるペット保険がおすすめです。
なお、ペット保険は病気やケガのために備える目的のものなので、ワクチンや不妊・去勢手術、フィラリア・ノミ・ダニ対策などの予防に関するものや保険加入前に発症している病気や先天性疾患に関しては補償の対象外なので注意しましょう。
この記事の監修者
現在複数の動物病院で臨床獣医師として勤務しながら専門知識や経験を活かして各種メディアや個人サイトでライターとして情報を発信している。
▼ドリトルけいのいぬねこ健康相談室
https://www.dolittlekei.com/
ライフワークは「ペットと飼い主様がより元気で幸せに過ごすお手伝いをする」こと。