【獣医師監修】ペット保険はすぐ使える?待機期間の有無と補償開始までの流れを解説

【獣医師監修】ペット保険はすぐ使える?待機期間の有無と補償開始までの流れを解説

この記事をまとめると

ペット保険の補償開始と待機期間の仕組みを解説。
ポイントは以下の4つ。

  • 多くの保険に病気30日、ケガ0日の待機期間がある
  • 待機期間なしでも補償開始までに1ヶ月程度かかるのが一般的である
  • 加入時の正確な告知が重要で不備は補償対象外になる
  • 即補償を望む場合は事前に開始日と条件の確認を推奨

要約

ペット保険は病気に待機期間があるのが一般的で、加入後すぐ使えるとは限らない。
待機期間がなくても補償開始まで一定の期間を要するのが一般的である。

ペット保険はすぐ使えるの?

多くの保険会社では、ペット保険の加入と同時に補償が開始するのではなく、「待機期間」または「免責期間」と呼ばれる猶予期間を設けています。

待機期間とは?ほとんどの保険にある仕組み

「待機期間(免責期間)」とは、保険契約開始日から一定の期間を定め、その間に発症した病気を補償の対象外とする期間です。
待機期間は保険会社によって異なりますが、ケガが0日間、病気が30日間という設定が一般的です。

ペット保険は1年ごとに更新の手続きが必要ですが、待機期間は更新の際には設定されておらず、基本的には初めての契約をする際に設定されています。

なぜ待機期間があるの?

ペット保険に限らず、保険制度は多くの人々が保険料を出し合ってお互いに助け合うという制度です。

待機期間は、保険制度が破綻することなく継続していくため、契約者間の公平性や保険料のバランスを保つことを目的として設定されています。
待機期間を設定することで、「すでに病気の兆候があるにも関わらず、ペット保険に加入してその直後に保険金を請求する」といった不正利用を防ぐことが可能です。

また、待機期間がないと誰もがすぐに補償を受けられるようになって保険金の支払いが増え、健康なペットの飼い主も含め契約者全体の保険料が高騰する可能性があります。
さらに、ペットは人間よりも病気の症状がわかりにくく、隠れた既往症の把握が難しいという理由もあり、多くのペット保険会社では待機期間を設定しています。

ただし、待機期間があるペット保険でもケガの場合は、契約成立後に待機期間なしで補償が受けられるというプランが一般的です。

待機期間がないペット保険もある

待機期間があるペット保険が多いものの、複数のペット保険会社で待機期間がないプランが提供されています。

後述しますが、子犬や子猫などをお迎えしてすぐは環境の変化により体調を崩しやすいため、待機期間がない保険が安心です。
また、ペットを初めて飼う方や保護して飼うなど病歴が不明なペットを飼う方には、待機期間がないペット保険は安心感を生んでくれる強い味方といえるでしょう。

ただし、「加入したらその場ですぐ使える」というわけではなく、契約手続きの審査や保険証券発行までの時間など、実際には補償開始まである程度の時間がかかるため注意が必要です。

補償が始まるまでの一般的な流れ

保険会社によって詳細は異なりますが、ペット保険の申し込みから、実際に補償が始まるまでの一般的な流れについて解説します。

申し込みから補償開始までの流れ

加入プランが決まったら、ペット保険会社のWebサイトや申込書を取り寄せるなどの方法で契約の申し込みをします。
申し込み時には、ペットの情報(種類・年齢・性別・名前など)と飼い主の情報(住所・氏名・連絡先など)、既往症の有無などが必要です。

特に、保険の対象となるペットの健康状態や過去の病歴を保険会社に伝える「告知」は保険加入の際には必ず必要なので、正確に記載するようにしましょう。

申し込み後は、保険会社による審査があります。
審査の結果、ペットの健康状態や既往症、年齢などの条件によっては加入できない場合があるため、申し込み前に加入条件を確認しておくとよいでしょう。

審査が問題なければ契約が成立となりますが、契約成立のタイミングは保険会社の承認完了時や1回目の保険料の決済が完了した日など保険会社によって対応が異なるため注意が必要です。

保険契約が開始したら、待機期間ありのプランは待機期間を過ぎてから、待機期間がない場合は契約の受付事務等の終了後、補償が始まります。
保険証券は、紙または電子で送付され、保険会社によっては健康保険証を発行するプランもあります。

前述したとおり、病気ではなくケガの場合は待機期間終了前でも補償の対象になる場合があるので契約内容を確認しておきましょう。

申込み方法や契約日により補償開始の日が変わることも

書類とインターネットでの申し込みでは手続きの完了日が異なる、申し込みの際の書類に不備があるなどが原因で審査が遅くなった、各保険会社の申し込み契約の締め日によって保険開始日が異なるなど様々な理由で、実際に補償開始の日が変わることがあるため注意が必要です。

また、特殊な例ですがペットショップやブリーダーなどの動物販売業者から購入する際に付帯しているペット保険の中には、お迎え当日から即日使用できるというペット保険もあります。

待機期間なしでも注意したいポイント

即日補償ではない理由

保険制度は契約者同士が費用を分担し助け合う仕組みで、契約者の公平性を保ちつつも継続していく必要があります。

ペットの健康状態の確認や既往症の有無などの審査にある程度時間をかけて、保険会社にとっての予測不可能な損失のリスクを避けるということも、即日補償ではない理由のひとつです。
そのため、待機期間がなくても補償開始までは最低でも1ヶ月程度は時間がかかると考えておくとよいでしょう。

病気とケガで補償開始のタイミングが異なることも

待機期間の設定の有無にかかわらず、多くのペット保険ではケガの場合は契約完了後すぐに補償対象になるケースが一般的です。
ただし、契約開始前に被ったケガの場合は、実際の診察日が保険契約の開始日の後でも補償の対象外になるため注意しましょう。

【獣医師のアドバイス】急なトラブル時に慌てないために

ペット保険は、原則として「ケガや病気に備える」という目的のため、保険加入前に発症している病気やケガについては補償の対象外となります。
そのため、加入前に病気の兆候が判明しているのにも関わらず、意図的に隠して保険に加入してその事実が発覚した場合、「告知義務違反」となり契約が解除されたり、保険金の支払いがされなかったりする可能性があります。

このような将来的なトラブルを避けるためにも、ペット保険に加入する際には、正確にペットの健康状態を伝えることが大切です。

補償前に病気が見つかったときの対応

先天性疾患など、補償前に病歴がある場合にはそれらを補償の対象外とするという条件付きでペット保険に加入できるケースもあります。
これらは、「特定疾病不担保」「特定傷病除外特約」などと呼ばれています。

こうした条件付きで入れるペット保険は、加入前に発症していた病気については補償が受けられないものの、条件がついても保険料は変わらないというのが一般的です。
ただし、加入できない疾患もあるので、内容をよく確認する必要があります。

症状が出た際の対応方法は?

ペット保険の加入有無にかかわらず、ペットの健康状態がいつもと違うと思ったらなるべく早く動物病院を受診しましょう。
万が一病気になっても、早期発見と早期治療で病気と上手くつきあって生活の質を高め、回復できる場合や少しでも寿命を長くできる可能性があります。

ペットの体調の変化に気づくことができるのは飼い主さまだけです。
普段から食欲や元気の有無、排便排尿の回数、飲水量などをよく観察する習慣をつけましょう。

保険証・診療履歴・支払い手段は事前に確認・準備を

ペット保険を上手に活用して動物病院を受診するためには事前の確認と準備が必要です。
ここでは、ペット保険を請求する際に必要な保険証、診察履歴、支払い手段について解説します。

ペット保険証(どうぶつ健康保険証など)

ペット保険の中には、人間の保険証と同様に動物病院で保険証を提示するだけで、自己負担分の支払いができる「窓口精算」が可能な保険があります。
ただし、窓口精算に対応していない動物病院もあるため、かかりつけの動物病院が窓口精算可能かどうかの確認は欠かせません。

また対応していても保険証の提示がないといったん全額自費で支払い後、ご自身で後日保険会社に請求となる場合もあるため、受診の際は忘れないようにしましょう。

診察履歴について

診察履歴とは、動物病院での通院・入院など治療内容の履歴のことです。
飼い主さまご自身で診療費の保険金を請求する際には、ほとんどのペット保険会社で診察履歴が必要です。

診察履歴は、一般的には診療明細書や領収書、または診断書などの形で提出します。

保険会社によって必要な書類や内容が異なり、さらに診察明細書の形式は各動物病院で異なるため、事前に確認しておくと保険金の請求の際にスムーズです。

支払い手段について

ペットには、人間の健康保険の様な公的な保証制度はありません。そのため、動物病院を受診した際に支払うペットの医療費は、すべて飼い主の自己負担です。
状況によっては手術や長期間の通院、治療が必要になることも考えられ、それに伴い治療費が数万円〜数十万円かかる場合もあります。

しかし、クレジットカードが使用できない動物病院や、使用できても10000円以上からなどの制限があるケースもあります。
保険とは直接関係しないように思えますが、治療費の支払いの際にどのような支払い手段が可能かどうか事前に確認しておくとより安心です。

実際に「すぐ使える保険」に救われた例

参考までに、わたしの勤務先で実際にあった例をお伝えします。

愛猫を亡くした飼い主さまが「先代の猫ではペット保険に入っていなくて大変だったから、次の子の時には最初から入っておこう」という理由で、新たに子猫をお迎えすると同時にすぐに使えるペット保険に加入されました。

お迎えしてすぐは元気いっぱいだった子猫は、数日後にはくしゃみや鼻水がではじめ、あっという間に食欲がなくなってしまいました。
この子猫は、特にこの時期に非常に多いウイルスによる感染症で、幸い通院治療と投薬でかなり改善しましたが、結膜炎などの症状が長引いて治療を継続するケースもあります。

飼い主さまが、自己負担が少なくて助かったことや安心して治療が続けられるとホッとされていたのを覚えています。

すぐに利用したい方向けのペット保険の選び方

すぐに使えるペット保険を利用したい飼い主さまは、加入前に以下のポイントを確認しておくとよいでしょう。

  • ・ペット保険の補償開始日と待機期間を事前に確認する
  • ・早く補償される保険会社を比較検討する

補償開始日と待機期間を事前に確認する

補償開始日とは、実際に病気やケガなどの診療費に対して保険金の支払いが始まる日のことです。

待機期間の有無やケガや病気の際の待機期間の違いについても確認しておきましょう。
補償開始日は保険会社や契約プランによって異なりますが、保険契約成立後、待機期間がある場合はその期間が終了してからというのが一般的です。

早く補償される保険会社を比較する

ペット保険は加入後の契約手続きの審査等である程度の時間が必要で、さらに多くのペット保険は待機期間を設けていますが、待機期間がなく、申込書の到着後に最短で約3週間から1ヶ月で補償開始日が始まるペット保険も存在します。

なお、早く補償が始まるというのは安心感につながりますが、更新の際の条件や保険料の見直しのタイミング、保険を使用したら保険料があがるかどうか、何歳まで継続できるのかなどの条件についても確認しておくとより安心です。

情報を集めて比較検討し、ご自身とペットにあった保険を選びましょう。

まとめ|すぐ使えるペット保険を選ぶ前に確認すること

すぐ使えるペット保険は複数存在しますが、待機期間がないというプランでも補償開始まで1ヶ月前後時間がかかります。

「申し込み=即補償」ではない点に注意

申し込み後には審査が必要で、その結果加入できないケースもあるため加入条件等をよく確認しましょう。

加入前に補償条件と期間をしっかり確認しよう

ペット保険会社やプランによって待機期間の有無、補償開始日等の対応が異なります。
「せっかくペット保険に入ったのに必要な時に使えなかった」ということがないように、ペット保険に加入する前に補償条件や期間をしっかり確認しておきましょう。

この記事の監修者

大熊真穂

大熊真穂

現在複数の動物病院で臨床獣医師として勤務しながら専門知識や経験を活かして各種メディアや個人サイトでライターとして情報を発信している。
▼ドリトルけいのいぬねこ健康相談室
https://www.dolittlekei.com/
ライフワークは「ペットと飼い主様がより元気で幸せに過ごすお手伝いをする」こと。

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ご契約の際は引受保険会社のパンフレット、webサイト等で商品資料をご確認の上、お申込みください。
また、重要事項等の説明もあわせてご確認くださるようお願い申し上げます。
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