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【獣医師監修】犬の飼い方ガイド
「しつけ方法はどうするの?」

【獣医師監修】犬の飼い方ガイド「しつけ方法はどうするの?」」

犬のルーツはオオカミで、さらにオオカミが家畜化された動物だと言われています。
オオカミは群れを作って生活し、群れにはリーダーの存在と序列があります。

また、犬は体格や性格など得意なことに合わせて繁殖され、様々な犬種が作られました。

現在は、家畜の群れを誘導・保護する牧畜犬、番犬・警護が得意な使役犬、家庭犬や伴侶として過ごすための愛玩犬など10のグループに分類されています。

この「オオカミの子孫」「目的をもって繁殖された」という二つを踏まえ、犬のもともともっている性質や性格、身体の特徴を理解することがしつけの第一歩です。

なぜ犬にしつけは必要なの?

犬を初めて飼う方の中には「犬は犬らしく過ごすべきで、しつけの必要はないのでは…」と思う方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、人間と生活する犬には、最低限のしつけを行う必要があります。
目的は「飼い主と愛犬が安心して過ごすため」です。
最低限のしつけとは、
・無駄吠えをさせない
・トイレのしつけをする
・咬んでよいものといけないものを教える

の3つ、そしてクレートやハウスでおとなしく待つしつけも大切です。

しつけを全く行わなかった場合、家の中の好きな場所に排泄し、気になることがあると吠え続け、更に嫌なことがあると咬んだり暴れたり・・・、という愛犬に育ってしまう可能性があります。
さらに、しつけを行わないと飼い主による制御ができないため、愛犬の体調が悪くても動物病院に連れて行くことすらままならないという事態になり、これは命に関わる問題です。
また、昨今は水害や地震など自然災害が非常に多く発生しており、避難を余儀なくされる可能性があります。

愛犬がクレートやサークルに慣れていない場合、非常時には飼い主だけでなく愛犬のストレスも非常に大きなものになることが予想されます。
犬の祖先のオオカミの特徴を犬に例えると、
「群れで生活し、リーダーの存在と序列がある」
→「家庭=群れ」で、家族の中で自分より上の序列の者にしか従わない
ということになります。
飼い主がリーダシップをとって愛犬にしつけをすることは、お互いが安心して生活し、さらに愛犬の命を守るためにも非常に大切です。

【獣医師監修】犬の飼い方ガイド「しつけ方法はどうするの?」

前述のとおり、最低限必要なしつけは、「無駄吠えをさせない」「トイレのしつけをする」「咬んでよいものといけないものを教える」の3つですが、それにプラスしてサークルやクレートでおとなしく待つしつけと「お座り」や「待て」「伏せ」などのコマンドに従うしつけを行うことをお勧めします。

犬のしつけ方について

しつけの方法はいくつかありますが、基本的な方法をご紹介します。

無駄吠えをさせない

犬は吠える動物です。
警戒や何かを要求している、そして興奮しているなど犬が吠えるのは理由があります。
そのため、しつけをしても犬が吠えるのを完全にやめさせることは不可能です。
しかし、しつけをすることで、無駄吠えをある程度やめさせることはできます。

無駄吠えをやめさせる具体的な方法は、「犬が吠え始めたらおやつやおもちゃなどで注意を引き、犬を座らせるなどして落ち着かせ、吠えるのをやめたら褒める、またはご褒美を与えること」を繰り返すことです。

家族に呼び鈴を鳴らしてもらい、「吠えたら落ち着かせて、吠えるのをやめたら褒める」を練習するのもお勧めです。 来客と話していても相手の声が聞こえないほど鳴き続ける場合は、お客様に協力してもらい声をかけてやめたら褒めてもらうのも一つの方法です。

また、庭や道路に面している部分に愛犬のサークルやベッドなどを設置すると、警戒心から道を歩いている人や犬に吠え続けてしまう場合があります。愛犬のサークルやベッドの設置場所にも注意しましょう。

トイレのしつけをする

トイレのしつけは犬をお迎えした時から始めましょう。
まずは、サークル内で飼育することからスタートします。
サークル内にはトイレとベッドを設置し、可能であればクレートの入り口を開けてサークルの中に置くと、同時にクレートに慣れさせる練習もできます。

犬の排泄のタイミングは食後なので、食後にソワソワし始めたらトイレに連れて行き、排泄させます。これも、うまくできたら褒める、を繰り返します。

諸説ありますが、この際におやつなどのご褒美を与えるとご褒美欲しさに無理に排泄をしようとする場合もあるので、褒めるだけでうまくトイレができるようなら言葉だけでしつけをすることをお勧めします。

トイレを失敗しても犬を怒ってはいけません。怒ると、犬は「排泄することがいけないこと」だと理解する場合があるからです。
また、子犬を飼い始めたばかりの飼い主様から「サークル内ではうまくできるのに、サークル外の部屋の中では失敗してしまいます」というご相談を受けることがあります。
これは、サークルの中ではトイレの面積が大きいのに対して、サークル外ではトイレの面積が小さいため失敗する確率が高くなるからです。

トイレでうまく排泄できる確率をあげる方法は、そろそろトイレかな…という時間にサークル内のトイレで排泄を促すことや、サークル外にトイレを設置し、愛犬がすぐにトイレに行けるように工夫をすることです。

私はしつけの先生に「ペットシーツをたくさん敷き、ペットシーツにうまく排泄できる成功率をあげて成功体験を積ませつつ、徐々にペットシーツの数を少なくしていく」という方法を習いました。
トイレのしつけはすぐに覚える犬もいれば、失敗が多い犬もいます。焦らずに何度も繰り返して教えましょう。

咬んでよいものといけないものを教える

特に子犬の時期に多いのですが、甘噛みといって飼い主の手や足などに咬みつくことがあります。
これをそのまま咬ませていると、成長しても同じように咬みつく犬になってしまいます。
その様な事にならないためには、子犬の時期に咬んでよいものといけないものを教える必要があります。
咬んでよいものは愛犬専用のおもちゃだけです。それ以外のもの、例えば人間の手や足、日用品、家具などは咬んではいけないものです。

具体的なしつけの方法は、甘噛みをされたら、「痛い!」といって手を後ろにかくして咬むのをやめさせることから始めます。
興奮してさらに咬んでくるようなら、すぐにサークルやクレートに入れて落ち着かせます。
同様に、咬んではいけないものを咬もうとしたら、タイミングよく「ダメ!」と叱り、やめたら褒めることを繰り返します。

また、使わなくなったタオルやスリッパなどを、愛犬のおもちゃとして与えることはやめましょう。
愛犬は、使わなくなったものかそうでないかは区別することができません。
そもそも犬は咬む習性があるので、咬んでよいもの=愛犬専用のおもちゃで遊ばせることは、愛犬のストレスを溜めないためにも大切です。
誤飲しない大きさの愛犬専用のおもちゃを用意し、愛犬と遊んであげましょう。

その他

「お座り」「待て」「伏せ」などのコマンドはおやつやドッグフードなどの食べ物を使って教える方法が一般的です。
「お座り」は、犬の鼻先におやつを持っていき、ゆっくりと上にあげると自然に座る姿勢になるので、「お座り」と言いながらうまくできたらご褒美を与えることを繰り返します。
「待て」は、同じようにおやつを犬の目の前に置き、待たせます。最初は短い時間からスタートし、うまく待てたら「ヨシ」の言葉と共にご褒美と褒めることを繰り返します。
「伏せ」は「お座り」ができるようになったらさらに低い姿勢になるようにおやつでコントロールし、同様にできたら褒めてご褒美を与えます。

また、特に子犬の時期には、身体を触る、口を開けるなど人間に身体を触れられることに慣れさせることも大切なしつけです。
これは、動物病院やトリミングサロンなどで人に触られることに強い恐怖心やストレスをなるべく少なくするための第一歩となります。

さらに、可能であれば歯に触ることからスタートして歯のケアがお家でできるまで慣らしましょう。
日本では、3歳を過ぎた成犬の8割が歯周病または歯周病予備軍と言われています。
子犬の頃から歯のケアを始めないと、成犬になっていきなり始めようとしてもできないことがほとんどなので、ぜひチャレンジしてみてください。

犬のしつけのポイントや注意点

犬のしつけの方法で最も大切なのは、犬に体罰を与えるしつけの方法や無理やり押さえつける方法は絶対に行わないということです。
さらに、「●●!」と愛犬の名前で叱ることはやめましょう。
愛犬が「自分の名前を呼ばれるのは怒られるときだ」と認識してしまう可能性があるからです。
基本的にはうまくできたら褒める、そして何度も繰り返すことが大切です。
叱るのは、咬んだ時だけです。
「ダメ!」と短い言葉でしっかり叱って愛犬の注意を引き、やめさせましょう。

ご自身でしつけを行ってもどうしてもうまくいかない場合は、かかりつけの動物病院に相談することも大切です。
信頼できるトレーナーさんに指導してもらうのも良い方法です。
ただし、その場合はトレーナーさんに愛犬を預けるのではなく、飼い主様ご自身が愛犬のしつけに参加して教えてもらう方法をお勧めします。
注意点として最後にお伝えしたいのは「犬は体格や性格など得意なことに合わせて目的をもって繁殖された」という点です。
本来狩猟をするのが得意な犬種なのに散歩の時間が短く極端に運動量が少ない、愛玩犬なのにひとりで留守番ばかりで退屈させているなど、その犬本来の持つ性質とかけ離れた生活が続くと、問題行動を起こす原因になるので注意しましょう。

急な出費に備えるためのペット保険

ペットには人間の様な公的な健康保険制度がありません。
そのため、動物病院での治療費は全て自己負担です。
犬(特に子犬の時期)は何でも口にすることが多く、おもちゃを飲み込んで内視鏡検査や開腹手術が必要になる場合も少なくありません。
この様な場合、動物病院に支払う治療費は高額になる可能性があります。
誤飲以外にも、病気やケガなど愛犬にいつ何が起こるかは全く予想ができません。

このような突然の出費に備える選択肢のひとつとして、ペット保険があります。
ペット保険とは、保険会社に保険料を支払う代わりに、高額になりがちな動物病院での治療費の一部を保険会社が補償するというサービスです。
ペット保険を扱う会社は10社以上あります。
補償内容や補償額は保険会社や加入プランによって異なるため、ペット保険に加入の際には情報を集めて比較検討し、ご自身と愛犬にあった保険を選ぶことが大切です。

ペット保険の選び方

現在国内にペット保険を扱う会社は、大きく分けて損害保険会社と少額短期保険会社の2つがあります。
損害保険会社は、大手で加入者数も多くて窓口清算できる動物病院も多く使いやすい印象があり、少額短期保険は大手損害保険会社にはないユニークなプランが充実しています。
どんな補償内容が必要かは人によって異なりますが、ここではペット保険の選び方のポイントについてお伝えします。

ペット保険選びのポイント

ペット保険を選ぶポイントは以下の3つです。
●保険料
●補償内容の違い
●加入時の年齢

<保険料>

一般的に、補償内容が多ければ多いほど、さらにペットの年齢に比例して保険料は高くなります。
実際に支払う保険料は、月額500円~1万円くらいまでとかなり差があります。
どの補償内容が必要なのか検討し、保険料とのバランスを考えて決めましょう。

<補償内容>

補償内容は、手術のみ補償するプラン、通院も含め手術や入院も補償するプランなどいろいろなプランがあり、補償割合も30%~90%などがあります。
保険料とのバランスもありますが、「万が一の事態に備え高額になりがちなペットの治療費の負担を軽くし、さらに通院のハードルが下がる」という意味では通院と手術・入院を補償するプランがお勧めです。

<加入時の年齢>

ペット保険は、ペットの年齢が高ければ高いほど保険料が高くなるのが一般的です。
また、ある程度の年齢になると加入できないプランもあります。
反対に、シニア専用の保険やシニアになっても継続できるペット保険もあります。
犬の平均寿命は約15歳なので、シニアになっても使い続けられるペット保険をお勧めします。

また、保険会社によっては動物病院での支払い時に補償額を差し引いて窓口精算できる(対応可能動物病院のみ)ペット保険や、医療やしつけについて獣医師に24時間無料電話相談ができるサービスが付帯しているペット保険もあります。
初めて犬を飼う方には、この様な相談ができる付帯サービスがあるペット保険がお勧めです。
特に初めて猫を飼う方には、このような治療費の補償以外の付帯サービスがあるとより安心です。

また、ペット保険は病気やケガのために備える目的のものなので、ワクチンや不妊・去勢手術、フィラリやノミ・マダニなどの予防に関するものや保険加入前に発症している病気や先天性疾患に関しては補償の対象外です。

さらに、ペット保険の補償には限度額や限度日数・回数など制限があるので、保険料や補償内容・年齢などの加入条件と併せて確認し、ご自身に合ったプランを選びましょう。

この記事の監修者

大熊真穂

大熊真穂

現在複数の動物病院で臨床獣医師として勤務しながら専門知識や経験を活かして各種メディアや個人サイトでライターとして情報を発信している。
▼ドリトルけいのいぬねこ健康相談室
https://www.dolittlekei.com/
ライフワークは「ペットと飼い主様がより元気で幸せに過ごすお手伝いをする」こと。

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