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【獣医師監修】あげすぎ注意!
ペットにおやつを与えすぎると起こる悪影響は?

【獣医師監修】あげすぎ注意!ペットにおやつを与えすぎると起こる悪影響は?

ペットには、人間の様におやつという概念はありません。
しかし、「おやつ食べる?」と言われて美味しいものをもらった経験、留守番やトイレトレー二ングなどのご褒美としておやつをもらった経験から、「おやつとはこういうものだ」ということを学びます。
そして、その結果「おやつを食べる」「おやつを催促する」という習慣ができると考えられます。
今回、犬または猫を飼っている方300人の飼い主さまを対象におやつに関するアンケート調査を実施しました。
その結果、ほとんどの飼い主さまがペットにおやつを与えていて、さらにその約半数は毎日決まった時間に日常的に与えていることがわかりました。
同時に、おやつとして与えるだけではなく、投薬時や歯みがき、しつけなどの目的のためにおやつを与えているという結果も得られました。
このようなアンケートの結果をふまえ、おやつを与える際の注意点やあげすぎによってかかりやすい疾病について解説します。

ペットにおやつをあげますか?

前述のとおり、「ペットにおやつをあげますか?」という質問に対して「あげる」と回答した飼い主さまは84.7%で、ほとんどの飼い主さまはペットにおやつを与えていることがわかりました。
わたし自身の経験でも、勤務先の動物病院で診察の際に問診をすると、「うちの子には、おやつは全くあげていないです!」という飼い主さまはほぼいないと感じます。
現在、インターネットやホームセンター、ペットショップなどで販売されているペットのおやつの種類は非常に豊富です。
この様にペットのおやつが気軽に手に入ることが、ペットにおやつをあげる習慣ができあがる背景とも考えられます。

1日におやつを何回あげますか?

ペットにおやつをあげると回答した飼い主さまに、「1日におやつを何回与えるか」という質問をしたところ、約40%が1日1回、さらに1日に2回以上ペットにおやつを与える飼い主さまは約30%という結果でした。
つまり、70%以上の飼い主さまが1日1回以上ペットにおやつを与えているということです。
ペット用の手作りおやつのレシピ本が多数出版されていることや、サ ービスエリアなどのお土産コーナーにペット用のおやつが販売されていることから考えても、おやつはペットの生活の一部になっていると言えるでしょう。

1日にあげるおやつの量や回数の注意点

おやつを健康なペットに与える場合には、与え方さえ気をつければしつけやトレーニング、ペットとのコミュニュケーションツールとして有効です。
しかし、おやつの量や内容によってはペットの健康に悪影響を及ぼす可能性があります。

1日にあげるおやつの量と回数は?

<おやつの量>
おやつとして与える場合は、全給餌量の10%を越えない様にしましょう。
最も簡単な計算方法は、現在与えているフードの外袋に記載されている体重あたりの1日の給餌量を確認し、その10%を越えない範囲で与える方法です。
細かく計算する場合は、安静時エネルギー要求量(Resting Energy Requirement:RER)にライフステージと係数を用いて計算します。
安静時エネルギー要求量(Resting Energy Requirement:RER)の求め方は
70×体重(kg)0.75 です。
計算方法が少し難しいので、計算例を記載します。
ライフステージと係数は以下の表を参考にして計算してください。
なお、体格や代謝の個体差があるため、この値はだいたいの目安として考えて、体調に合わせて量を調整して下さい。

例)<計算例>

【2kgの生後4か月で不妊手術をしていない犬の場合】
●安静時エネルギー要求量(RER)を求める
(電卓を使う場合の方法)
70×(体重kg)0.75
→ ① 2×2×2 (3回掛け算)
  ② ①の数字に√を2回押す
  ③ その数字に70を掛ける
2×2×2=8に√を2回1.6817・・・に×70=118Kcal(小数点以下四捨五入)
●一日あたりエネルギー要求量を求める
ライフステージの表を確認すると係数が2.0×RERなので
2.0×118Kcal=236Kcal となります。
この場合、おやつは10%以内のカロリー、つまり23.6 Kcal以内のものが適正な量です。
<おやつを与える回数>
おやつを一度にもらうよりも回数を分けておやつをもらう方が、ペットの満足感が高いと言われています。
そのため、1日のおやつの量を決めたらその量の範囲で、1日に何回かに分けて与える方法が最もおすすめです。

<RERとライフステージ・係数を用いた1日あたりのエネルギー要求量推定式>

子犬(0~4ヶ月齢) =3.0×RER
4か月齢~成犬 =2.0×RER
成犬 =1.8×RER
成犬(不妊・去勢済み) =1.6×RER
肥満のリスクがある成犬 =1.2~1.4×RER
減量用 =1.0~1.2×RER(理想体重のRER)
体重増加用 =1.2~1.8×RER(理想体重のRER)
活発・使役犬 =2.0~5.0×RER
重篤・安静時 =1.0×RER(理想体重のRER)

<猫>

子猫(0~4ヶ月齢) =2.5×RER
4か月齢~成猫 =2.0×RER
成猫 =1.4×RER
成猫(不妊・去勢済み) =1.2×RER
肥満のリスクがある猫 =1.2~1.4×RER
減量用 =0.8×RER(理想体重のRER)
体重増加用 =1.2~1.8×RER(理想体重のRER)
重篤・安静時 =1.0×RER

「どんな時におやつをあげますか?」

次に、「どんな時におやつをあげますか?」という質問に対しては、約40%の飼い主さまが「決まった時間に与える」と回答しています。
他には、「歯みがきのケアとしてガムを与える」、「しつけの際に与える」「お薬を飲ませる時」「外出する時」という回答が得られました。
この結果からおやつとしての習慣以外に、目的をもっておやつを与えている飼い主さまが多いことがわかります。
おやつを与える際注意することは、喉に詰まらせる大きさのものを(特に出かける前など不在になる際に)与えないことです。
特に歯みがきガムは、商品によっては飲み込む際にひっかかる可能性があるので、与える際はペットから目を離さないように気を付けましょう。
また、リンゴやナシなど固めの果物も、歯みがきガムと同様に喉に詰まらせやすいので与える際は小さく切って与えることをおすすめします。

おやつをあげすぎることによってかかりやすい病気は?

おやつをあげすぎることでかかりやすい病気は

  • ・肥満による代謝疾患や整形学的疾患
  • ・膵炎
  • ・心疾患
  • ・下部泌尿器症候群(猫)

などが挙げられます。
特に肥満は、糖尿病や脂質代謝異常などの代謝疾患、ガン、関節疾患などのリスクを増加し、寿命を縮めることがわかっています。
加工品として販売されているおやつは、高カロリーや高脂肪のものが多いばかりか、防腐剤や発色剤などの食品添加物が多く含まれているものがあります。
このような添加物は身体に悪い影響を与える可能性があります。
私自身も、ジャーキーなどの加工品のおやつをやめるように飼い主さまにお伝えしたところ、涙やけがすっかり治ったというケースを何度も経験しています。
人間の食べ物をおやつとして与える場合、人間にとっては薄味でも、身体の小さいペットにとっては塩分や糖分が多すぎる場合があります。
さらに、犬や猫は味付けの濃いものを好む傾向があるため、食事を食べなくなる場合があるので要注意です。
与えてもペットの健康上に問題がないと言われている食材でも、毎日続けて大量に与え続けることで、消化器症状や皮膚疾患などの食物不耐性によるトラブルが発生するケースもあります。
また、おやつをあげすぎることで治療が必要になり、ペットの健康上の問題だけではなく飼い主さまの経済的な負担も大きくなることが予想されます。
例えば、膵炎になった場合は、点滴治療や制吐剤の投薬、状態によっては炎症を抑える効果の高い特殊薬の使用が必要です。
さらに、状態によっては1週間ほどの入院が必要になります。
以下は、膵炎で1週間ほど入院した場合の治療費の例です。
この様に、数万円以上の高額の治療費が予想されます。
おやつのあげすぎには十分注意しましょう。

<膵炎で入院した場合の治療費の一例>

治療内容 治療費
診察料

500円~2,000円前後
血液検査 10,000円~
入院費 1日およそ5,000円~
点滴治療 1日5,000円~
制吐剤など皮下注射 1回2,000円~
特殊注射(およそ3日間~5日間使用) 1回8,000円

注)動物病院では、法律の規定により治療費の設定を各病院の采配で行っているため、治療費の一例としてお考え下さい。

「ペットにおやつは必要?」

そもそも、ペットにおやつは必要なのでしょうか?
「栄養のバランスのとれた食事をきちんと与えていればペットにおやつは要らない」という考え方もあります。
しかし、おやつを上手に使うことでしつけや投薬などが楽になり、ペットと飼い主の両方のストレスを減らすことが可能です。
また、若齢または高齢のペット、食が細いペットにはおやつを利用することで、一日に必要な栄養を補給することができます。
ジャーキーなどの加工品などは避けて、ゆでたささみなど低脂肪で栄養のあるおやつを上手くとり入れてペットの体調管理に役立てて下さい。

ペット保険の選び方

ペットには、人間の様な公的な健康保険制度がありません。
そのため、動物病院での治療費は全て自己負担です。
若くて元気なペットでも、事故やケガ、誤飲などいつ何が起こるかは全く予想ができません。
そして、手術や入院が必要になった場合、動物病院に支払う治療費は高額になる可能性があります。
何かあった時のためにご自身で備えるという方法の他に、突然の出費に備える選択肢のひとつとしてペット保険があります。
ペット保険とは、保険会社に保険料を支払う代わりに、高額になりがちな動物病院での治療費の一部を保険会社が補償するというサービスです。
現在国内でペット保険を扱う会社は、10社以上あります。
どの保険会社も「ペットの医療費の負担を軽くする」という目的は同じですが、保険会社やプランによって加入条件や補償内容等が異なります。
どんな補償内容が必要かは人それぞれですが、ここではペット保険の選び方のポイントについてお伝えします。

ペット保険選びのポイント

ペット保険を選ぶポイントは以下の3つです。

  • ●保険料
  • ●補償内容の違い
  • ●加入時の年齢

<保険料>

一般的に、補償内容が多ければ多いほど、さらにペットの年齢に比例して保険料は高くなります。
実際に支払う保険料は、月額500円~1万円くらいまでとかなり差があります。
どの補償内容が必要なのか検討し、保険料とのバランスを考えて決めましょう。

<補償内容>

補償内容は、手術のみ補償するプラン、通院も含め手術や入院も補償するプランなどいろいろなプランがあり、補償割合も30%~90%などがあります。
保険料とのバランスもありますが、「万が一の事態に備え高額になりがちなペットの治療費の負担を軽くし、さらに通院のハードルが下がる」という意味では通院と手術・入院を補償するプランがおすすめです。

<加入時の年齢>

ペット保険は、ペットの年齢が高ければ高いほど保険料が高くなるのが一般的です。
また、ある程度の年齢になると加入できないプランもあります。
反対に、シニア専用の保険やシニアになっても継続できるペット保険もあります。
犬や猫の平均寿命は約15歳なので、シニアになっても使い続けられるペット保険をおすすめします。
また、保険会社によっては動物病院での支払い時に補償額を差し引いて窓口精算できる(対応可能動物病院のみ)ペット保険や、医療やしつけについて獣医師に24時間無料電話相談ができるサービスが付帯しているペット保険もあります。
初めてペットを飼う方には、この様な相談ができる付帯サービスがあるペット保険がおすすめです。
また、ペット保険は病気やケガのために備える目的のものなので、ワクチンや不妊・去勢手術、ノミ・マダニなどの予防に関するものや保険加入前に発症している病気や先天性疾患に関しては補償の対象外なので注意しましょう。
また、ペット保険の補償には限度額や限度日数・回数など制限があるので、保険料や補償内容・年齢などの加入条件と併せて確認しておくと安心です。

この記事の監修者

大熊真穂

大熊真穂

現在複数の動物病院で臨床獣医師として勤務しながら専門知識や経験を活かして各種メディアや個人サイトでライターとして情報を発信している。
▼ドリトルけいのいぬねこ健康相談室
https://www.dolittlekei.com/
ライフワークは「ペットと飼い主様がより元気で幸せに過ごすお手伝いをする」こと。

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