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【獣医師監修】トイ・プードルに多い病気やケガは?

トイ・プードルに多い病気やケガは?の写真

トイ・プードルのルーツは鳥猟犬というだけあって、見かけの可愛らしさとは裏腹に非常に元気で活発な犬種です。

高いところから平気で飛び降りたり、ジャンプしたり…飼い主を驚かせることもしばしばです。

しかし、その活発さ故に「車から飛び降りた」「抱っこしていたら急に飛び降りた」「ソファーの背もたれからジャンプした」などの理由で前肢の骨折が非常に多い犬種です。

また、トイ・プードルに多い遺伝性疾患としては若年性白内障や進行性網膜萎縮症がよく知られています。

この記事をまとめると

トイ・プードルは、巻き毛でアレルギーを起こしにくい被毛で知られる、小型で賢く、しつけがしやすい犬種です。
愛情深く、活発で、屋内環境で飼育できるため、ペットとして人気があります。

主な病気や怪我は以下の8つ。

  • 外耳炎
  • 流涙症
  • 膝蓋骨脱臼
  • 前肢の骨折
  • 若年性白内障
  • 低血糖
  • 歯周病
  • 内分泌疾患

要約

トイ・プードルは、特定の病気やケガにかかりやすい傾向があります。

このようなリスクに備えるため、高額な医療費をカバーできるペット保険の加入をお勧めします。
保険に加入しておくことで、急な病気やケガの場合でも経済的負担を軽減することができます。

トイプードルの特徴

現在存在している犬種は用途や身体の特徴などにより、10のグループに分類されています。

トイ・プードルのルーツを辿ると、もともとは水の中の作業を得意とする鳥猟犬でしたが、現在は、「愛玩犬」という家庭犬として伴侶や愛玩目的のグループに属しています。

しかし、もともとの犬種特有の性質は残っていると言われ、トイ・プードルは学習能力が高くて、飼い主に忠実、陽気で活発な性格です。

この特徴故に、、飼い主がリーダーシップを取れない、お散歩や遊びなどが少ない、コミュニケーション不足が続くという生活環境では問題行動を起こしやすくなるので注意が必要です。

身体的な特徴としては、トイ・プードルの被毛はシングルコートといって体表のしっかりした毛しかありません。

シングルコートの犬種の被毛は抜けにくく、常に伸びるという特徴があるので定期的なカットが必要です。

トイ・プードルがかかりやすい
病気やケガ、
そして気になる治療費は?

トイ・プードルがかかりやすい病気やケガは多数ありますが、その中でも特によくある病気を選びました。

トイ・プードルがかかりやすい病気・ケガについて

<外耳炎>

外耳炎とは、鼓膜の手前の耳道に炎症が起こることを言います。

細菌感染や耳ダニなどの寄生虫によるもの、アトピーやアレルギー疾患、お家での過剰な耳掃除、内分泌疾患など原因は多種多様です。

トイ・プードルは耳の中にも毛が大量に生えるので、毛によって耳道がふさがることで耳の中の環境が悪化しやすい傾向があります。

軽度であれば点耳薬や内服薬の投薬で治療しますが、複数の原因がある場合は慢性化するケースも多く、完治しないこともある病気です。

<流涙症>

涙の量が増える、または涙がうまく鼻腔に排出できないという理由で、目の周りが常に涙で濡れ、目の周りの毛が茶色く涙やけする病気です。

原因は、鼻涙管の閉塞、逆さまつ毛、異物、アレルギー性結膜炎、角膜の傷などが考えられます。

治療方法は異物やまつ毛の除去、点眼薬の使用、さらにアレルギーに対する食事療法や内服薬の使用など原因にあわせて治療します。

鼻涙管の閉塞の場合は、全身麻酔下で鼻涙管の洗浄を行うこともあります。

<膝蓋骨脱臼>

大腿骨の滑車溝という溝におさまっている膝蓋骨(俗にいう膝のお皿のことです)が溝からずれて外れてしまうことを膝蓋骨脱臼といいます。

飛び降りたり転んだりなどの外傷による原因以外は、遺伝的な要因が関わっていると言われています。

具体的には滑車溝が浅い、膝蓋骨を支える内側と外側の筋肉や靭帯などの組織のバランスが悪いことで膝蓋骨が外れやすくなり、子犬の頃からすでに症状がある場合と成長に伴って発症する場合があります。

膝蓋骨の脱臼の状態や外れやすさにより1~4までのグレードがあります。

治療は、グレードと歩行の状態、年齢や体重によって内科療法か外科手術による治療が良いかを総合的に判断し行います。

<前肢の骨折>

元気で活発なトイ・プードルは、前肢の骨折が非常に多い犬種です。

また、そのほとんどが橈骨(とうこつ)と尺骨という前腕骨の細い骨の骨折で、ソファーや椅子から飛び降りる、抱いていて落下するなどが原因で簡単に骨折してしまいます。

治療は状態によりますが、主にプレートによる固定を行う外科手術を行います。

また、トイ・プードルなどの小型犬は骨が細く血流が少ないために、術後の癒合不全の可能性があります。

<若年性白内障>

白内障は水晶体が白濁する病気です。具体的には水晶体のタンパク質が固くなり白く濁って、視力が失われる病気です。

若年性白内障の原因は遺伝的な要因によるもので、特にトイ・プードルには多い病気です。

治療は、視力を回復する目的で外科手術を行いますが、犬の場合は、術後の合併症のリスクが人間よりも非常に高いのが特徴です。

<進行性網膜萎縮症>

遺伝性疾患で、両目の網膜が変性・萎縮する病気で、徐々に進行して最終的には失明します。

遺伝子検査によって確定診断やキャリア犬の検出が可能(ただし現在見つかっている遺伝子変異以外の原因も関与しているとも言われます)ですが、治療法はありません。

治療費の目安は?

動物病院での治療費は法律の規定により、各動物病院で決めていますので、同じ治療をしても病院によって金額は異なります。

以下の表は、トイ・プードルに多い病気やケガの治療費の一例をまとめたものです。

特に、白内障の手術や膝蓋骨脱臼の整復手術は非常に高額です。

診察内容 治療費の一例
診察料 500円~2000円
耳処置(毛抜き・点耳など) 1000円~3000円
眼科検査(角膜の傷のチェック、涙の量のチェック、眼圧測定 スリットランプ検査など) 1項目1000円~3000円×項目数
鼻涙管洗浄(麻酔料含む) 20000円~
レントゲン検査 1枚5000円~6000円
遺伝子検査 10000円~
白内障手術 片目30万円~
膝蓋骨脱臼整復手術 20万円~

年代別のかかりやすい
病気や注意点は?

幼犬期(0~1歳)

<低血糖>

子犬の時期は、エネルギーや栄養素はほとんどが食事頼りです。

そのため食事の間隔が空きすぎる、一回の食事がしっかりとれないなどの原因により、血糖値が下がりすぎてしまいます。

低血糖の状態になるとぐったりして動けなくなるばかりか、けいれん発作が起きて昏睡状態になり命に関わる状況になることもあります。

<誤飲・誤食>

そもそも犬は何でも口に入れる習性がある上に、子犬は好奇心旺盛です。

おもちゃ、人間の食べ物、靴下など飲み込める大きさであれば何でも口にする傾向があります。

また、チョコレート、玉ネギ、ブドウなど犬にとって有害な食べ物を誤食することも非常に多く注意が必要です。

成犬期(1~7歳)

<肥満>

不妊去勢手術後に食べ物にばかり興味が集中してしまい、飼い主が食べる量を犬の要求のままに与えているとあっという間に太ってしまうのもこの時期です。

肥満は高脂血症や糖尿病、膵炎、呼吸器疾患などのリスクを高める要因になります。

<歯周病>

3歳以上の成犬の約8割が歯周病もしくは予備軍と言われています。

歯周病は、単に歯が汚れているという話ではなく、歯周病菌による感染症です。

そのため、歯周炎が進んで歯が抜けるだけでなく、あごの骨を溶かす、心疾患や腎疾患、肝疾患などの全身に影響を及ぼします。

可能であれば毎日ご自宅で歯のケアを行うことが、歯周病を防ぐ一番の対策です。

シニア期(7歳~)

この時期は、加齢により様々な病気になるリスクが高くなる時期です。

7歳を超えたら最低でも年に一度は健康診断を受けて、病気の早期発見を心がけましょう。

<内分泌疾患>

糖尿病や副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)などの内分泌疾患が多くなります。

多飲多尿や急激に太ったり痩せたりなど体重の変化が見られたら要注意です。

<心疾患>

10歳を超えると、10~20%以上が何らかの心臓の病気にかかっているとう調査結果があります。

特に多いのは、僧帽弁という左心房と左心室の間にある弁がしっかり閉じないために血液の逆流が起きる僧帽弁閉鎖不全症という病気です。

初期は無症状ですが、症状が進行すると咳が出る、肺に水が溜まり呼吸が苦しくなるなど、生活の質が落ちてしまいます。

加齢により発症リスクが高くなると言われていますが、早期発見により心臓の働きを助けるお薬や、末梢血管を広げて全身に血液が行きわたる目的で使用する血管拡張剤などの投薬で病気の進行を抑えることができます。

<腫瘍>

若くても腫瘍ができることはありますが、加齢や肥満は腫瘍ができるリスクを高めます。

犬で多いのは皮膚や乳腺など表面にできる腫瘍ですが、鼻腔内や脳、消化器や骨など全身いたるところに腫瘍ができる可能性があります。

腫瘍は、もともとは規則正しく細胞分裂して新陳代謝していた自分の細胞が、何らかの原因で遺伝子にエラーが起こり無制限に増殖することによってできたものです。

良性と悪性があり、治療は外科手術や抗がん剤、放射線治療など様々です。

残念ながら治療を行っても再発や転移を繰り返す腫瘍もあります。

ペット保険の選び方

若くて元気な子犬の時期も、そして年齢を重ねてからも、愛犬が病気になったりケガをしたりする可能性は常にあります。

ペットの病気やケガの治療に支払う医療費は、すべて飼い主の自己負担です。

状況によっては手術や長期間の通院、治療が必要になることも考えられ、それに伴いペットの医療費も高額になる可能性があります。

このような「予想もしなかった事態」に備えておくための選択肢の一つとして、ペット保険があります。

ペット保険とは、保険料をペット保険会社に支払うことで、飼い主が動物病院に支払う医療費の一部をペット保険会社が補償してくれるサービスです。

現在多くのペット保険会社がありますが、保険会社や契約プランにより、保険料や補償の内容等は異なります。

補償内容が多ければ多いほど、保険会社に支払う保険料は高くなるのが一般的なので、補償内容の重視するポイントや優先順位についてお伝えします。

ペット保険選びのポイントは?

ペット保険を選ぶにあたって優先順位が高いのは、

・保険会社に支払う保険料

・補償内容

の2点だと思います。

保険会社に支払う保険料について

保険料は最も安いものでは月に500円~、金額が多いプランでは1万円前後です。

補償内容が多ければそれに伴って保険料も高くなるので、情報を集めて比較検討する必要があります。

また、保険会社や加入プランによって異なりますが、加入してから終身までずっと同じ保険料ではなく、保険料の見直しがあるのが一般的です。

若い時は安い保険料でも更新の度に保険料が上昇するプランや、ある程度の年齢になったら保険料が一定になるプランなど色々なプランがあります。

なお、年齢が上がるにつれて保険料が高くなり加入条件が厳しくなるのが一般的で、プランによっては加入できなくなる場合もあります。

最近ではシニア犬用(8歳~)のペット保険も増えていますので、将来のことも考えて情報を集めておくと安心ですね。

補償内容について

補償内容は保険会社やプランによって様々で、

・病気やケガによる通院や入院を含め手術もすべて補償する

・手術に関する治療費のみ補償する

・保険会社が補償する割合は30%、50%、70%が多い(90%や100%もある)

・1回の手術につき50万円を補償するなど手術に特化している

などがあります。

補償内容を選ぶポイントとしては、例えばトイ・プードルの場合、外耳炎や皮膚疾患が多い犬種なので何度も通院が必要になる場合も考慮すると同時に、前肢の骨折など手術が必要になるケースを考えて通院治療だけでなく手術の補償も網羅するプランを選ぶことをお勧めします。

なお、ペット保険は「病気やケガに備える」という目的のものなので、不妊去勢手術、ワクチン接種やフィラリア予防など予防に関するものや、保険加入以前にかかっていた病気やケガについては補償対象外です。

また、保険会社による補償は無制限ではなく上限(支払限度額または支払限度日数・回数)があります。

補償内容をしっかり確認してご自身と愛犬にとって必要なプランを選ぶことが大切です。

犬を飼う=その命を預かるということです。

元気いっぱいの愛犬も病気になったり、ケガをしたり、そして歳を重ねていきます。

この記事が、家族の一員である愛犬が元気で健康に過ごすため、そして万が一の病気やケガに備える一助となれば幸いです。

この記事の監修者

大熊真穂

大熊真穂

現在複数の動物病院で臨床獣医師として勤務しながら専門知識や経験を活かして各種メディアや個人サイトでライターとして情報を発信している。
▼ドリトルけいのいぬねこ健康相談室
https://www.dolittlekei.com/
ライフワークは「ペットと飼い主様がより元気で幸せに過ごすお手伝いをする」こと。

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