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【獣医師監修】アビシニアンの平均寿命は?長生きの秘訣や飼育のコツを解説

アビシニアンの写真

アビシニアンは、美しい姿形と好奇心旺盛な性格が魅力的な猫です。
しかし、遺伝性疾患が気になる猫種でもあります。

この記事では、アビシニアンの平均寿命と長生きの秘訣・飼育のコツをまとめました。

この記事をまとめると

長生きのための秘訣は以下の3つ。

  • 体重管理:肥満は健康リスクを高めるため、食事管理が必要。
  • デンタルケア:歯の健康を守ることで全身の健康状態にも良い影響を与える。
  • 病気の早期発見:特に遺伝性疾患(家族性アミロイドーシス、ピルビン酸キナーゼ欠損症)に注意が必要。

要約

アビシニアンは、活発で知的な猫種です。
しかし、遺伝性疾患や生活習慣病などの病気にかかりやすい傾向があります。

飼い主は、定期的な健康診断や適切な飼育管理で、健康に長生きできるようなサポートをすることが大切です。

アビシニアンの寿命や特徴について

アビシニアンとは?

アビシニアンという猫種名の由来は、イギリスで行われた品評会で「アビシニア(エチオピアの別名)から来た種」と紹介されたからとされています。
ここでは、アビシニアンの特徴と遺伝性疾患についてみていきましょう。
しかし、実際はインドのベンガル湾沿岸地域の猫がルーツだと考えられています。

また、現在多くの猫種が愛玩用として飼育されていますが、アビシニアンはその中でも最も古いもののひとつで、1800年代後半にはアビシニアンの基礎となる猫が誕生していたと考えられており、「最古のイエネコ」と呼ばれています。

アビシニアンの平均寿命

アニコム家庭どうぶつ白書2023のデータによるとアビシニアンの平均寿命は14.1歳で、同データから比較すると猫の平均寿命とほぼ同じ位です。

参考:アニコム家庭どうぶつ白書2023
https://www.anicom-page.com/hakusho/book/pdf/book_202312.pdf

アビシニアンの身体的特徴

アビシニアンの体格はオスが3kg~5.5kg、雌が2.5~4kgで、引き締まった筋肉質な身体と、アーモンド形の大きな目が特徴の短毛種です。
被毛は1本1本の毛に濃い色と薄い色が交互に入っている「ティックドタビー」という特徴的な毛のパターンのみで、毛色はブルー、フォーン、レッドなどがあります。

アビシニアンの食事と健康管理について

適切な食生活

猫は肉食動物で、もともとは小動物を捕食していました。
そのため、消化管は短くタンパク質の要求量も多いという特徴があります。

適切な食生活とは猫の身体に合った食事のことで、基本的には総合栄養食と新鮮なお水が中心の食事がおすすめです。
ドライフードだけでは水分不足になりやすいので、ウエットフードを併用するとよいでしょう。

なお、100%手作りの食事を猫に与える場合は、リンとカルシウムのバランスや必要なビタミンの不足などが懸念されるので、動物栄養学を学んでから実践することをおすすめします。

運動の必要性

健康で長生きするためには、食事の管理と共にある程度の運動も必要です。

アビシニアンは、非常に活発で運動能力が高い猫種です。
フードの置き場所を工夫するなど自然に運動ができるような環境を作ることやおもちゃを使って一緒に遊ぶなど、愛猫が少しでも身体を動かして生活できるように心がけましょう。

定期的な健康チェック

健康的な生活を送るためには、定期的な健康チェックは必須です。
最低でも年に1回は血液検査・尿検査などの健康診断を受けましょう。

アビシニアンの長生きの秘訣

猫種に関わらず長生きするための秘訣は、病気にさせないように予防に努めることです。
その中でも基本となるのは体重管理とデンタルケアです。

肥満に注意する

肥満は、下部尿路疾患、変形性関節症や糖尿病などのリスクを高め、猫の生活の質を下げる原因となります。

さらに、肥満が猫に与える影響は、「飼い主と遊びたいのに太って動くのがしんどい」「上下運動ができなくなる」など猫にとって精神的なストレスにまで及ぶともいわれています。
フードやおやつなど、猫に与える食べ物の一日量を量ってそれ以上与えないようにすると食事管理が簡単です。

愛猫の心身の健康を保つためにも、食事管理を徹底するよう心がけましょう。

デンタルケアを行う

デンタルケアの目的は、「口の中をきれいにする」だけにとどまりません。

歯の状態が悪くなると痛みのために食欲が低下するだけでなく、歯周病が原因で心疾患、肝臓疾患、心疾患など身体全体の健康状態に影響を及ぼす可能性があります

歯ブラシやデンタルグローブ、猫の好みの味のデンタルペースト等を上手に利用して若いうちからデンタルケアを行いましょう。

混合ワクチン接種について

病気の予防の一つに混合ワクチン接種があります。

混合ワクチン接種は、母猫からの移行抗体が減ってくる生後2ヶ月以上の子猫の時期に約1ヶ月間隔で2回のワクチン接種が推奨されています。
その後は、1年に1回のワクチン接種を行う場合が一般的です。

なお、WSAVA(世界小動物獣医師会;World Small Animal Veterinary Association)のワクチネーションガイドラインでは、定期的にペットホテルを利用する猫や多頭飼育や室内と屋外を行き来する猫は1年に1回のワクチン接種が必要であるが、コアワクチン(猫伝染性鼻気管炎・カリシウイルス感染症・猫汎白血球減少症)は3年に1回、ノンコアワクチン(上記3つ以外の猫白血病ウイルス・猫免疫不全ウイルス・クラミジア感染症など)は地理的要因や環境、ライフスタイルによって、感染症のリスクが生じる動物にのみ必要だという記載があります。

このガイドラインを受けて、ワクチン接種のプログラムについては各病院によって対応が分かれるというのが正直なところです。

なお、参考までにわたしも完全室内飼いで猫を飼っていますが、動物病院勤務で色々な状況のペットの診察をするため、年に1回3種混合ワクチン(上記でいうところのコアワクチンにあたります)を接種しています。

参考:世界小動物獣医師会 犬と猫のワクチネーションガイドライン
https://wsava.org/wp-content/uploads/2020/01/WSAVA-vaccination-guidelines-2015-Japanese.pdf

アビシニアンの飼育のコツ

アビシニアンは、好奇心旺盛で遊ぶのが大好きな活動的な猫種です。
運動量も多いため、猫が行動できるスペースをしっかり確保することが理想です。

また、賢く人に良くなついて友好的な性格だといわれる一方で、他の猫に対して攻撃的な傾向が強いともいわれています。
そのため、アビシニアンがいる環境に新しく猫を迎える場合には、相性の確認を慎重に行う必要があります。

人懐こいアビシニアンがいる一方で、「オスとメスのアビシニアンを飼っていた独身男性が結婚したところ、メスのアビシニアンが結婚相手の女性に対して非常に攻撃的になっただけでなく、動物病院の女性スタッフに対しても攻撃的になってしまい診察が困難になった」という経験がある獣医師もいます。

このように人に対しても過剰な攻撃行動をするケースもあるため、アビシニアンと遊ぶ際は、人の手を噛ませる遊びなど猫を煽るような遊び方は厳禁です。

基本的にはおもちゃや飼い主と遊ぶのが大好きなアビシニアンですが、同じおもちゃや遊びを繰り返すと飽きてしまうため、好みに合わせて色々なおもちゃを用意してあげましょう。

また、キャットタワー等を設置するなど猫がひとりでも落ち着いて過ごせる場所を作ることも、猫がストレスを溜めない工夫のひとつです。

アビシニアンがかかりやすい病気

アビシニアンは、遺伝性疾患に注意が必要です。
特に、多飲多尿や、食欲低下、痩せてくるなど慢性腎臓病のような症状がみられる家族性アミロイドーシスやピルビン酸キナーゼ欠損症は、アビシニアンに多いことが知られています。

家族性アミロイドーシス

異常なタンパク質(アミロイドと呼ばれる繊維状のタンパク質)が細胞や組織に沈着し、機能障害が起こる病気です。

家族性アミロイドーシスは同じ血縁関係の家系に起こる疾患で、アビシニアン以外にもシャム、トンキニーズ、デボンレックスなどでの報告があります。

猫のアミロイドーシスの多くは全身性で、腎臓や肝臓など複数の臓器にアミロイド繊維が沈着することが多いといわれています。

発症年齢は1~5歳で、診断は非常に難しいうえに効果的な治療法はありません。
残念ながら一般的に予後不良の可能性が高い病気です。

ピルビン酸キナーゼ欠損症

遺伝子異常により発症する病気で、アビシニアン以外に、ソマリやベンガルでの報告があり、遺伝子検査でピルビン酸キナーゼ遺伝子の変異の有無を調べることで、確定診断が可能です。

ピルビン酸キナーゼは、赤血球の形状維持、代謝機能などに必要な体内のエネルギー生成に働きかける役割を持つ酵素です。

遺伝子異常によりピルビン酸キナーゼの活性が低下し、十分なエネルギーを作り出せなくなり、その結果赤血球が壊れやすくなり貧血を引き起こします。

元気消失、黄疸や虚脱などの症状がみられる場合と、臨床症状がほとんど現れないケースがあり、貧血が重度の場合は輸血などの対症療法を行います。
無症状で高齢になるまで生きられる猫がいる一方で、溶血性貧血で亡くなる猫もいます。

その他

歯周病は他の猫種にも多い疾患ですが、アビシニアンは歯周病になりやすいといわれています。

前述しましたが、デンタルケアは長生きの秘訣のひとつです。
成猫になってからでは嫌がって出来ない場合が多いため、子猫の頃から口の中をチェックして自宅でのケアができるように少しずつ慣らしていきましょう。

シニア期のアビシニアンのケア方法

シニア期に推奨される食事

真の肉食動物である猫には、多くのたんぱく質が必要です。
加齢に伴う筋肉量の低下を防ぐためには、腎機能障害などたんぱく質を制限する必要がある場合を除いて、より良質なたんぱく質をしっかり与える必要があります。

また、高齢の猫は、関節炎の痛みにより長い間同じ姿勢を維持することが難しく、食器の位置が低いと食べないケースもあります。

食器を台などに乗せて猫にあった高さに合わせる、口が広い浅い食器のなかに小さい山型にフードを盛り付けるなど、猫が食べやすい様に工夫をしましょう。

注意が必要な変化

アビシニアンに限らず、シニア期の猫に多いのは慢性腎臓病です。

目に見えてわかる症状は、

  • ・飲水量が多くなり、多尿になる
  • ・毛並みが悪くなる
  • ・食欲が低下して痩せてくる
  • ・口臭が強くなる

などで、この様な目に見えてわかる症状が現れた時は、腎臓に残された機能は3割以下しか残っていないことが知られています。

慢性腎臓病は、腎臓の細胞が壊れることが原因で徐々に腎臓の機能が低下していく病気です。

一度壊れた腎臓の細胞は元通りにならないため、治療しても完治しない病気ですが、なるべく早く発見して治療を始めることで延命効果が期待できます。

慢性腎臓病の早期発見のためには、普段から愛猫の飲水量をチェックし、尿の薄さや色を確認する習慣をつけましょう。

【獣医師のアドバイス】長生きするアビシニアンの事例とアドバイス

今までの臨床経験を振り返って長生きをした印象があるアビシニアンは、父猫と母猫、そして子供たちという多頭飼育で生活していた猫たちです。
彼らのうち最も長寿だった猫は約17歳で、先述したアビシニアンの平均寿命と比較してもかなりのご長寿です。

アビシニアンのみの家族の中でも相性が合わない猫同士はいたものの、大きなケガをすることなく日々穏やかに楽しそうに過ごしていたのを記憶しています。

彼らとその飼い主さまを思い浮かべて、長生きの秘訣だと考えられるのは以下の通りです。

  • ・太らせないように体重管理を徹底している
  • ・定期的に健康診断を受けている
  • ・体調の変化に気づいたらすぐに動物病院を受診している
  • ・猫同士がたくさん遊んでストレスが少ない

猫種に関わらず、長生きの秘訣は、「病気の予防と早期発見、体重管理とストレスが少ない」ということに尽きます。

愛猫の異常に早く気づくためのチェックポイント7つ

「普段の様子と違う」と愛猫の異変に気づくことは、飼い主さまにしかできません。
以下の7つのポイントを意識して毎日愛猫の様子をチェックし、いつもと違うと思ったら早めに動物病院を受診しましょう。

  • ・食欲の有無の確認
  • ・排尿や排便の状態(特に排尿は毎日しているかチェックする)
  • ・飲水量の変化
  • ・体重の増減
  • ・歩様・動き方の変化
  • ・口腔内を見る(粘膜の色や歯の状態)
  • ・身体に触れて腫れや出来物等がないかをチェックする

なお、特に注意したいのは、排尿の確認です。

最近は、システムトイレや自動トイレを使用している飼い主さまが増えています。
実際に自動トイレを使用していて排尿の確認があいまいになり、愛猫の尿が出なくなっていたことに気づかず、病気の発見が遅れたという例がありました。

毎日愛猫が排尿しているのを確認する習慣をつけましょう。

ペット保険の選び方

ペットには、人間の様な公的な健康保険制度はありません。そのため、動物病院での治療費の負担は全額自己負担です。

状況によっては手術や長期間の通院、治療が必要になる場合や、それに伴いペットの医療費も高額になる可能性があります。

何かあった時のための備えとしてペットのためにご自身で備えるという方法もありますが、突然のケガや病気など予想もしなかった事態に備えておくための選択肢の一つとして、ペット保険があります。

ペット保険とは、保険料をペット保険会社に支払うことで、飼い主が動物病院に支払う医療費の一部をペット保険会社が補償してくれるサービスです。

現在、多くのペット保険会社がありますが、保険会社や契約プランにより、保険料や補償の内容等は異なります。自分とペットにあった保険を選ぶには、情報を集めて比較検討をすることが大切です。

どんな補償内容が必要かは人によって異なりますが、ここではペット保険の選び方のポイントについてお伝えします。

ペット保険選びのポイント

ペット保険を選ぶポイントは以下の3つです。

  • ●保険料
  • ●補償内容の違い
  • ●加入時の年齢

<保険料>

一般的に、補償内容が多ければ多いほど、さらにペットの年齢に比例して保険料は高くなります。実際に支払う保険料は、月額500円~1万円くらいまでとかなり差があります。

どの補償内容が必要なのか検討し、保険料とのバランスを考えて決めましょう。

<補償内容>

補償内容は、手術のみ補償するプラン、通院も含め手術や入院も補償するプランなどいろいろなプランがあり、補償割合も30%~90%などがあります。

保険料とのバランスもありますが、「万が一の事態に備え高額になりがちなペットの治療費の負担を軽くし、さらに通院のハードルが下がる」という意味では通院と手術・入院を補償するプランがおすすめです。

<加入時の年齢>

ペット保険は、ペットの年齢が高ければ高いほど保険料が高くなるのが一般的で、ある程度の年齢になると加入できないプランもあります。
反対に、シニア専用の保険やシニアになっても継続できるペット保険もあります。

現在、猫の平均寿命は約15歳で、年々伸びていく傾向があります。
歳を重ねると病気になりやすくなるため、シニアになっても使い続けられるペット保険をおすすめします。

保険会社によっては動物病院での支払い時に補償額を差し引いて窓口精算できる(対応可能動物病院のみ)ペット保険や、医療やしつけについて獣医師に24時間無料電話相談ができるサービスが付帯しているペット保険もあります。

初めて猫を飼う方には、この様な相談ができる付帯サービスがあるペット保険がおすすめです。

なお、ペット保険は病気やケガのために備える目的のものなので、ワクチンや不妊・去勢手術、ノミ・マダニなどの予防に関するものや保険加入前に発症している病気や先天性疾患に関しては補償の対象外なので注意しましょう。

この記事の監修者

大熊真穂

大熊真穂

現在複数の動物病院で臨床獣医師として勤務しながら専門知識や経験を活かして各種メディアや個人サイトでライターとして情報を発信している。
▼ドリトルけいのいぬねこ健康相談室
https://www.dolittlekei.com/
ライフワークは「ペットと飼い主様がより元気で幸せに過ごすお手伝いをする」こと。