ベンガルはヒョウの様な被毛が特徴で、野生のヤマネコとイエネコの交配種がルーツという珍しい猫種です。
この記事では、ベンガルの性格と飼育のポイント、注意点についてお伝えします。
ベンガルはヒョウの様な被毛が特徴で、野生のヤマネコとイエネコの交配種がルーツという珍しい猫種です。
この記事では、ベンガルの性格と飼育のポイント、注意点についてお伝えします。
ベンガルのルーツである野生のベンガルヤマネコは、人になつくことがないとされていますが、ベンガルは愛情深く穏やかで甘えん坊な性格です。
その一方で、自己主張が強く他の猫に対して攻撃性を示す場合もあり、ベンガルを飼育している環境に新しく猫を迎える場合には、相性の確認を慎重に行う必要があります。
ベンガルは、オスが4kg~7kg雌が2.5~5.5kgで、メインクーンやノルウェージャンフォレストキャットと同様に「ロング&サブスタンシャル」という身体が大きく骨太で筋肉質のがっしりした体型の猫です。
毛色はシルバー系やブラウン系、ホワイト系など多くの色があり、アーモンド形の大きめの目とヒョウのようなタビーが特徴の短毛種です。
ベンガルのルーツは、1963年にアメリカで「ベンガルヤマネコ」という野生のヤマネコとイエネコの交配から始まったとされています。
当初はベンガルヤマネコの種の保護や白血病の研究が目的の交配でしたが、様々な純血種の猫との交配の結果、現在の姿のベンガルが作出されました。
このようにベンガルと他の猫種の大きな違いは、「野生種とイエネコの交配で生まれた猫種」という点です。
猫種登録機関によっては、野生種とイエネコの交配を認めていないケースもあり、ベンガルを猫種として公認していない機関もあります。
ベンガルは運動量能力が高く、好奇心旺盛かつアクティブな猫種のため、できるだけ広く自由に動ける環境が必要です。
高いところに飛び乗って遊ぶのも大好き、さらに水を怖がらない猫が多いといわれています。
ベンガルの飼い主に向いているのは、猫が自由に動ける家庭環境で猫と一緒にいられる時間を十分にとれる人だといえるでしょう。
「アニコム家庭どうぶつ白書2023」によるとベンガルの平均寿命は14.3歳で、同データの猫の平均寿命とほぼ同じ位です。
参考:アニコム家庭どうぶつ白書2023
https://www.anicom-page.com/hakusho/book/pdf/book_202312.pdf
猫は肉食動物で、もともとは小動物を捕食していました。そのため、消化管は短くタンパク質の要求量も多いという特徴があります。
適切な食生活とは猫の身体に合った食事のことで、基本的には総合栄養食と新鮮なお水が中心の食事がおすすめです。
ドライフードだけでは水分不足になりやすいので、ウエットフードを併用するとよいでしょう。
おすすめの食事の与え方は、猫がいつでも自由に食べられる「置きエサ」方式ではなく、時間と回数を決めて食事を与える方法です。
おすすめする理由は
・胃や腸を休める時間を作り、消化器官の負担を軽減する
・肥満防止
の2つのメリットがあるからです。
なお、100%手作りの食事を猫に与える場合は、リンとカルシウムのバランスや必要なビタミンの不足などが懸念されるので、動物栄養学を学んでから実践することをおすすめします。
ベンガルは、非常に活発で運動能力が高い猫種です。
フードの置き場所を工夫するなど自然に運動ができるような環境を作ることやおもちゃを使って一緒に遊ぶなど、愛猫が少しでも身体を動かして生活できるように心がけましょう。
また、遊び好きで運動量が必要なベンガルにとって、飼い主さまと一緒に遊ぶことは何よりのストレス解消方法です。
愛猫が好きなタイプのおもちゃを用意して、毎日猫と向き合う時間をつくってあげましょう。
健康的な生活を送るためには、定期的な健康チェックは必須です。
最低でも年に1回は血液検査・尿検査などの健康診断を受けましょう。
病気の予防の一つに混合ワクチン接種があります。
混合ワクチン接種は、母猫からの移行抗体が減ってくる生後2ヶ月以上の子猫の時期に約1ヶ月間隔で2回のワクチン接種が推奨されています。
その後は、1年に1回のワクチン接種を行う場合が一般的です。
なお、WSAVA(世界小動物獣医師会;WorldSmall Animal Veterinary Association)のワクチネーションガイドラインでは、定期的にペットホテルを利用する猫や多頭飼育や室内と屋外を行き来する猫は1年に1回のワクチン接種が必要であるが、コアワクチン(猫伝染性鼻気管炎・カリシウイルス感染症・猫汎白血球減少症)は3年に1回、ノンコアワクチン(上記3つ以外の猫白血病ウイルス・猫免疫不全ウイルス・クラミジア感染症など)は地理的要因や環境、ライフスタイルによって、感染症のリスクが生じる動物にのみ必要だという記載があります。
このガイドラインを受けて、ワクチン接種のプログラムについては各病院によって対応が分かれるというのが正直なところです。
参考:世界小動物獣医師会 犬と猫のワクチネーションガイドライン
https://wsava.org/wp-content/uploads/2020/01/WSAVA-vaccination-guidelines-2015-Japanese.pdf
ノミやマダニ等の予防は、完全室内飼育であっても定期的に行うことをおすすめします。
特にお庭があって草木が多い環境の場合は要注意で、平均気温が15度以上になる時期にはしっかり予防することをおすすめします。
回虫や鉤虫などの内部寄生虫については、子猫の時期や飼い始めの時期、軟便など消化器系のトラブルの場合には糞便検査でチェックすることが最も大切です。
3ヶ月に1回皮膚に滴下するだけで、ノミやマダニだけでなく内部寄生虫も一緒に駆虫できるお薬もあるので、かかりつけの動物病院で相談して愛猫に合ったものを選んでもらいましょう。
ベンガルは、ピルビン酸キナーゼ欠損症、遺伝性網膜変性などの遺伝性疾患の他、肥大型心筋症や猫伝染性腹膜炎、尿石症をはじめとする下部尿路疾患など好発性疾患が比較的多い猫種です。
遺伝子異常により発症する病気で、アビシニアン以外に、ソマリやベンガルでの報告があり、遺伝子検査でピルビン酸キナーゼ遺伝子の変異の有無を調べることで、確定診断が可能です。
ピルビン酸キナーゼは、赤血球の形状維持、代謝機能などに必要な体内のエネルギー生成に働きかける役割を持つ酵素です。
遺伝子異常によりピルビン酸キナーゼの活性が低下し、十分なエネルギーを作り出せなくなり、その結果赤血球が壊れやすくなり貧血を引き起こします。
元気消失、黄疸や虚脱などの症状がみられる場合と、臨床症状がほとんど現れないケースがあり、貧血が重度の場合は輸血などの対症療法を行います。
無症状で高齢になるまで生きられる猫がいる一方で、溶血性貧血で亡くなる猫もいます。
遺伝性網膜変性とは、網膜の視細胞に変性が起こり失明に至る遺伝性の網膜疾患で、猫では稀な疾患です。
初期症状はわかりにくく、部屋の中でぶつかることが多くなった、あまり動かなくなったなどの症状で来院し、発見されることが多いとされています。
有効な治療法がないため、計画繁殖により遺伝させないことが大切です。
心臓の筋肉(具体的には左心室といって全身に血液を送るポンプの役割をする部分)が徐々に肥大することが原因でおこる病気で、ベンガルに限らず、猫に最も多くみられる心疾患のひとつです。
左心室の筋肉が肥大して固くなったり伸縮性が低下したりすると、血液を送りだすポンプ機能が低下する、血流に異常が生じて血栓ができやすくなるなどの問題が生じます。
肥大型心筋症は5~7歳齢での発症が多く、遺伝的な原因が関与しているといわれています。
初期症状は無症状で、病態の進行によって呼吸が速い、食欲元気がなくなる、失神するなどの心不全の症状や強い痛みや麻痺がおこる動脈血栓塞栓症が発症して発見されることが多く、突然死の原因にもなっています。
治療は、病態に応じて内科的な対症療法を行います。
猫伝染性腹膜炎は1歳未満のオスの子猫に発症しやすいと言われています。
ある統計では、理由は不明ですが雑種より純血種での発生が多いという結果で、わたしの臨床経験上でも同じように純血種の猫に多い印象があります。
猫伝染性腹膜炎ウイルスは、ほとんどのイエネコが感染していると言われる猫腸コロナウイルスが突然変異してできたと言われています。
症状は食欲元気の低下、発熱、体重減少が見られ、腹水や胸水が貯まるウエットタイプとブドウ膜炎、肝臓や腎機能が低下し神経症状がみられるドライタイプの二つのタイプがあります。
この病気は、どちらのタイプも非常に治療の反応が悪く、残念なことに予後不良の場合がほとんどです。
下部尿路疾患とは、膀胱と尿道の病気のことで、特に多いのは特発性膀胱炎です。
しかし、下部尿路疾患は、尿石症や尿路感染症、腫瘍などが原因であっても頻尿や排尿困難、血尿などの同じような症状がみられるので、何が原因なのかを調べることが大切です。
また、尿道が閉塞している場合は、命に関わるのでなるべく早く治療する必要があります。
早期発見と治療のためには、愛猫がきちんと排尿しているかどうか毎日確認することが非常に重要です。
ベンガルは、一般的には穏やかで人になれる性格です。
しかし、一般家庭に飼われている4000年以上かけて家畜化された歴史をもつイエネコと違って、ベンガルは野生のヤマネコの血を引き数世代しか経過していません。
中には野生の習性や気質が色濃く残っている猫もいて、「ベンガルは家族に対する攻撃行動が多い、不適切な場所での排泄が多い」という報告もあります。
さらに、他の猫種と比較して捕食行動が多いといわれているため、留守番が多いご家庭や一人暮らしの方、初めて猫を飼う方にはあまり向いていない猫種です。
また、ベンガルはすばしっこくて力が強く、動物病院で毎回鎮静をしなければ十分な検査や治療が出来ないケースもあります。
この様なケースを想定し、ベンガルを飼育する際にはベンガルの習性や気質、特性を理解したうえで終生一緒に暮らすことができるかどうかをよく考える必要があります。
今までの臨床経験を振り返って考えても、ベンガルの飼い主さまはご自宅にいる時間が長いか、常に家にどなたかがいらっしゃる環境の方ばかりです。
さらに、ベンガルのストレスが溜まらないように猫とたくさん遊んで、さらに猫の様子をこまめに観察していらっしゃる方が多いという印象があります。
前述のとおり、ベンガルは好発性疾患が多いため、継続して愛猫を診てもらえるかかりつけの動物病院と、夜間など時間外や緊急時に受け入れてもらえる救急の動物病院をみつけておくと安心です。
「普段の様子と違う」と愛猫の異変に気づくことは、飼い主さまにしかできません。
以下の7つのポイントを意識して毎日愛猫の様子をチェックし、いつもと違うと思ったら早めに動物病院を受診しましょう。
なお、特に注意したいのは、排尿の確認です。
最近は、システムトイレや自動トイレを使用している飼い主さまが増えています。
実際に自動トイレを使用していて排尿の確認があいまいになり、愛猫の尿が出なくなっていたことに気づかず、病気の発見が遅れたという例がありました。
特にベンガルは尿石症になりやすいという報告もあるため、尿の採取がしやすく、排尿の確認がしっかりできるタイプのトイレを使用するとよいでしょう。
ペットには、人間の様な公的な健康保険制度はありません。
そのため、動物病院での治療費の負担は全額自己負担です。
状況によっては手術や長期間の通院、治療が必要になる場合や、それに伴いペットの医療費も高額になる可能性があります。
何かあった時のための備えとしてペットのためにご自身で備えるという方法もありますが、突然のケガや病気など予想もしなかった事態に備えておくための選択肢の一つとして、ペット保険があります。
ペット保険とは、保険料をペット保険会社に支払うことで、飼い主が動物病院に支払う医療費の一部をペット保険会社が補償してくれるサービスです。
現在、多くのペット保険会社がありますが、保険会社や契約プランにより、保険料や補償の内容等は異なります。自分とペットにあった保険を選ぶには、情報を集めて比較検討をすることが大切です。
どんな補償内容が必要かは人によって異なりますが、ここではペット保険の選び方のポイントについてお伝えします。
ペット保険を選ぶポイントは以下の3つです。
一般的に、補償内容が多ければ多いほど、さらにペットの年齢に比例して保険料は高くなります。実際に支払う保険料は、月額500円~1万円くらいまでとかなり差があります。
どの補償内容が必要なのか検討し、保険料とのバランスを考えて決めましょう。
補償内容は、手術のみ補償するプラン、通院も含め手術や入院も補償するプランなどいろいろなプランがあり、補償割合も30%~90%などがあります。
保険料とのバランスもありますが、「万が一の事態に備え高額になりがちなペットの治療費の負担を軽くし、さらに通院のハードルが下がる」という意味では通院と手術・入院を補償するプランがおすすめです。
ペット保険は、ペットの年齢が高ければ高いほど保険料が高くなるのが一般的で、ある程度の年齢になると加入できないプランもあります。
反対に、シニア専用の保険やシニアになっても継続できるペット保険もあります。
現在、猫の平均寿命は約15歳で、年々伸びていく傾向があります。
歳を重ねると病気になりやすくなるため、シニアになっても使い続けられるペット保険をおすすめします。
保険会社によっては動物病院での支払い時に補償額を差し引いて窓口精算できる(対応可能動物病院のみ)ペット保険や、医療やしつけについて獣医師に24時間無料電話相談ができるサービスが付帯しているペット保険もあります
初めて猫を飼う方には、この様な相談ができる付帯サービスがあるペット保険がおすすめです。
なお、ペット保険は病気やケガのために備える目的のものなので、ワクチンや不妊・去勢手術、ノミ・マダニなどの予防に関するものや保険加入前に発症している病気や先天性疾患に関しては補償の対象外なので注意しましょう。
この記事の監修者
現在複数の動物病院で臨床獣医師として勤務しながら専門知識や経験を活かして各種メディアや個人サイトでライターとして情報を発信している。
▼ドリトルけいのいぬねこ健康相談室
https://www.dolittlekei.com/
ライフワークは「ペットと飼い主様がより元気で幸せに過ごすお手伝いをする」こと。