夏は、人間と同様に猫も熱中症に注意すべき季節です。
熱中症は、高温多湿な環境に長時間さらされることなどが原因で発症し、すぐに対応しないと命に関わります。
この記事では、夏に注意すべき熱中症の症状と熱中症が疑われるサインを中心にまとめました。
この記事をまとめると
猫の熱中症は、ペット保険の補償対象となる場合が多い。
補償対象となるかどうかは、以下の条件によって判断される。
- 保険会社やプランによって定められた原因による熱中症
- 補償開始後に発症した熱中症
要約
猫の熱中症は、外気温が高くなる夏に注意が必要な病気です。
ペット保険に加入していれば、熱中症の治療費を補償してもらえる場合があります。
加入する際には、補償対象となる熱中症の範囲をよく確認しておきましょう。
猫も熱中症になるの!?症状や熱中症が疑われるサイン5選
猫の熱中症の原因
熱中症とは、高温多湿な環境に長時間さらされることなどが原因で発症し、体温が高くなったり脱水状態になったりして生じる様々な症状のことをいいます。
高温多湿という環境要因の他に過度な運動により発症するケースも多いため、熱中症になるのは猫よりも犬の方が圧倒的に多いといわれています。
しかし、肥満・高齢の猫、ペルシャ、エキゾチックショートヘア、ヒマラヤンなど短頭種の猫、慢性腎臓病、循環器疾患、慢性呼吸器疾患などの病気にかかっている猫は、熱中症を発症するリスクが高いため注意が必要です。
熱中症の症状
熱中症は、治療が遅くなればなるほど命に関わる重篤な症状になる可能性があるため、熱中症が疑われる初期サインに気づいて早急に治療を開始する必要があります。
気温が高い日に、愛猫に以下の症状がみられたら熱中症の初期サインかもしれません。
<熱中症が疑われる初期サイン5選>
- 1 呼吸が荒い
- 2 よだれを垂らす
- 3 頻脈(脈が速くなる)
- 4 粘膜(歯肉・結膜)が充血し、舌が赤くなる
- 5 なんとなく動きが鈍くなる
<重篤化した場合の症状>
- ・嘔吐や下痢を繰り返す
- ・震える、痙攣を起こす
- ・意識が無くなり、ぐったりする
熱中症を重篤化させないためには、「何となく呼吸が速い気がする」「いつもと違って元気がない」と思ったら躊躇することなく動物病院に連れていくことが最も大切です。
ペット保険を比較する
熱中症が疑われた場合、すぐに動物病院を受診してなるべく早く治療を開始する必要があります。
しかし、近年の猛烈な暑さにより、人でも熱中症による死亡者数が増加している時代です。
ペットの命を守るためもその場でできる応急処置を知っておきましょう。
<猫の熱中症の応急処置>
- ・水で濡らしたバスタオル・又は濡れた洗濯ネットに入れる
- ・涼しい場所で風を送る
常温の水をかけて身体を冷やす方法もありますが、身体が濡れるのを嫌がる猫が多いので、常温であっても水をかけるのは避けた方がよいでしょう。
また、いきなり冷たい水や氷などを当てると末梢血管が収縮して深部体温が下がらなくなり逆効果なので注意しましょう。
少し落ち着いてから保冷剤等で冷やす場合は、保冷剤をタオルで巻いてから頚部・腋の下・鼠径部(後肢の付け根)が有効です。
なお、猫の場合はぐったりして動かないケース以外は、パニックになって暴れる可能性があるため、首のまわりに小さな保冷剤を包んだバンダナを巻く程度にとどめた方がよいでしょう。
猫の体温を測る方法は?
正確な体温を測定するには、表面の体温ではなく深部体温を測定する必要があります。
深部体温の測定は肛門に体温計を挿入して行い、直腸で測定した体温が40℃前後であれば、熱中症の可能性が考えられます。
<測定方法>
- ・体温計の先を水やオイルなどをつけて滑りやすくする
- ・猫の尻尾を持ち上げて肛門の入り口から2センチくらいのところまで体温計を挿入する
体温計は、人間用のデジタル式の体温計で問題ありませんが、なるべく短い時間で測定できるものをおすすめします。
なお、体温測定を極端に嫌がる猫の場合は、無理に測定すると暴れてかえって状況が悪化してしまう場合があるので注意しましょう。
その場合は、耳を触って極端に熱くないかどうかチェックする方法がおすすめです。
ペットではなく人間の情報ですが、総務省消防庁が毎年発表している5月~9月の緊急搬送情報においても、熱中症の発生場所は「住居」が最も多く、約4割を占めています。
このことからも猫が熱中症にかかりやすい状況は、室内で高温多湿の環境に長い時間さらされることによるものだと考えられます。
閉め切った暑い室内に愛猫を閉じ込めておく方はいないと思いますが、「部屋を自由に移動していた猫がエアコンのない部屋に閉じ込められてしまい重度の熱中症になった」「寝ている間はエアコンを切って寝る習慣があり、夜間に愛猫の具合が悪くなった」という話も聞きます。
猫は、個体差はあるものの比較的暑さに強い動物だといわれていますが、人間と違って汗をかく汗腺が肉球など身体の一部にしかありません。
昨今の猛烈な夏の暑さは、愛猫にとっては非常に厳しい状況だということを忘れずに、室内でも油断せずに熱中症対策を心がけて下さい。
なお、真夏の車内は40℃以上の気温になるといわれています。
どんなに短い時間でも、愛猫を車の中に置いておくのは絶対にやめましょう。
参考:総務省消防庁HP 熱中症情報 令和6年度緊急搬送状況
https://www.fdma.go.jp/disaster/heatstroke/post3.html
繰り返しになりますが、熱中症から愛猫を守るためには「高温多湿の状況に愛猫を長時間置かないようにすること」と、日常のケアが大切です。
<室内の温度管理>
猫にとって快適な気温は21~28℃、湿度は50~60%だといわれています。
しかし、年齢や体格、被毛の種類などにより個体差があるので、どれくらいのエアコン設定が愛猫に合っているか確認しておくと安心です。
愛猫が快適に過ごせるためにも、エアコンのドライ機能等を上手に使って温度だけでなく湿度の管理を心がけましょう。
室内は風通しを良くして、体感温度を下げる工夫も必要です。
また、クーラーの音が気になる、風が直接当たる、温度が低すぎるなどが原因で冷房の入った部屋が苦手な猫が多いといわれています。
その点を考慮し、飼育環境面の具体的な熱中症予防対策は以下のとおりです。
- ・直射日光が当たらず風通しのよい部屋と、冷房のかかった部屋を猫が自由に行き来できるように工夫する
- ・水を自由に飲めるように複数の場所に設置する
- ・水飲み用の食器を工夫する(噴水型の給水機、飲みやすい大きさや深さの食器を選ぶなど)
- ・エアコンの風は弱にする、静音モードにするなど設定を工夫する
- ・キャットタワーや猫がお気に入りの場所は風が直接当たらないようにする
- ・冷感マットなどひんやりした肌触りで猫が好む場所を作る
なお、屋外に出る猫の場合も真夏はなるべく外に出さないように心がけましょう。
<食事と水分補給について>
脱水を防ぐためには、水分を摂る必要があります。
しかし、あまり水を飲まない猫の場合は食事やおやつで水分が摂れるようにしましょう。
具体的な方法は以下の3つです。
- ・ドライフードをふやかして与える
- ・ウエットフードを活用する
- ・水分が摂れるおやつを与える(ちゅーるなど)
もともとふやかしてから与える方法で作られているフリーズドライのキャットフードもあるので、猫の体調や好みに合わせて使用するのもよいでしょう。
なお、いわゆる半生タイプのキャットフードは、品質を維持するために人工添加物が非常に多く含まれているので注意しましょう。
<愛猫の異常に早く気づくために普段の様子を知っておくことも大切>
「いつもと違う」と気づくためには、愛猫の普段の様子を知っておく必要があります。
以下のチェックポイントを参考にして、愛猫の普段の状況を把握しておきましょう。
体温・呼吸数・心拍数をチェックしておく
猫の安静時の体温は、37.5℃~39℃くらいです。
前述した肛門に体温計を入れる方法で普段の体温を確認できればよいのですが、嫌がる猫や怖がりの猫の場合は、耳やお腹など被毛が薄い部分に触れて手の感覚で普段の状況を把握しておくという方法もあります。
猫の平均的な呼吸数は1分あたり20~30回くらいで、胸が呼吸によって膨らんだり凹んだりする様子を数えて、1分間にどれくらい呼吸しているかをメモしておきましょう。
猫の正常な心拍数は猫によって個体差はありますが、1分あたり120~220回くらいです。
心拍数の測定方法は、
- ・左胸(正確には左前肢の肘を身体に密着させたあたり)に直接手を当ててカウントする
- ・後ろ足の付け根から太ももの中心の内側の脈を打っている場所(大腿動脈といいます)に指先を当ててカウントする
という方法があります。
心拍数の測定は、1分間だと猫が飽きてしまうので、10秒または15秒間の測定を1分間に計算しなおしておくとよいでしょう。
口腔内を見る習慣をつける
上唇をめくって口の中の粘膜をみると、脱水や貧血に早く気づくことができます。
成猫になってから急にやろうとしても難しいので、子猫の頃から口腔内を見ると同時に歯のケアをするなど徐々に慣らしていく方法をおすすめします。
熱中症が疑われた場合はなるべく早く動物病院を受診するべきですが、可能であれば応急処置を行うことをおすすめします。
応急処置の際には、前述したとおりいきなり氷や保冷剤で身体を冷やすのは厳禁です。
通院の際は愛猫を大きめの洗濯ネットに入れてから、濡れた常温のタオルを身体にかけて冷やしつつ、風通しのよいキャリーケースに入れて連れていきましょう。
また、少し落ち着いたら冷やせる様に、保冷剤をタオルで包んで持っていきましょう。
熱中症の治療は点滴治療が基本で、症状に応じて対症療法を行います。
重篤な症状の場合は入院して集中的に治療が必要なケースもあります。
ペット保険を比較する
【獣医師のアドバイス】猫の熱中症対策で飼い主さまが気をつけること
ペットの熱中症は、猫よりも犬の方が圧倒的に多いといわれています。
しかし、気温が高くなると症状はそこまで重篤ではないものの、食欲不振を訴えて動物病院に来院する猫ちゃんが増えてきます。
診察して検査を行うと熱中症とまではいかないものの、軽度の脱水がみられることが多く点滴治療を行う場合も少なくありません。
実際にあった猫の熱中症の症例
注意喚起の意味を含めて、実際にあった猫の熱中症の症例をご紹介します。
<ケース1>
長毛の肥満の猫ちゃんが、元気がないという主訴で来院されました。
普段元気な時は触れないくらい怒るのに、全然元気がありません。
検査したところ、やや体温が高くて中程度の脱水がある以外は大きな異常はなく、熱中症の症状が疑われました。
もちろんご自宅はしっかり冷房を効かせて、水分もしっかり取れているとのことでした。
しかし、この猫ちゃんはかなりの肥満で、長毛種なのにブラッシングが大嫌いな性格でした。
ゴワゴワになった毛玉が何か所も固まって出来ていて、その毛玉の塊がダウンジャケットの様に身体から放熱するのを妨げている上に、脂肪の層が断熱剤の役割を果たして涼しいところにいるにも関わらず軽い熱中症になってしまった、というわけです。
この猫ちゃんは、点滴治療で回復して元気になりましたが、その後はダイエットを頑張って頂き定期的にトリミングサロンでお手入れをすることになりました。
脂肪は筋肉よりも水分含有量が少ないため肥満の猫や筋肉量が少ないシニアの猫は熱中症のリスクが高くなります。
さらに、長毛種にありがちな毛玉の塊ですら熱中症の原因になると驚いた例です。
<ケース2>
真夏の通院途中に、高齢の猫ちゃんが熱中症を発症しました。
この猫ちゃんは、下痢や嘔吐など消化器症状があって体力的に弱っていたことや高齢で体温調節がうまくいかなかったこともあり、残念ながら亡くなってしまいました。
キャリーケースの形状によってはあまり風通しが良くないものものあるので、暑い時期の通院や移動は、風通しの良いキャリーケースを選び、誤飲しないような保冷剤をタオルで巻いて入れるなどの注意が必要です。
熱中症は、高温多湿という環境の要因だけではなく、上記の猫ちゃんのような脱水状態になっている身体の状態が原因で重症化するケースが多く、高齢の猫は特に注意が必要です。
ペットには、人間の様な公的な健康保険制度はありません。
そのため、動物病院での治療費の負担は全額自己負担です。
状況によっては手術や長期間の通院、治療が必要になる場合や、それに伴いペットの医療費も高額になる可能性があります。
何かあった時のための備えとしてペットのためにご自身で備えるという方法もありますが、突然のケガや病気など予想もしなかった事態に備えておくための選択肢の一つとして、ペット保険があります。
ペット保険とは、保険料をペット保険会社に支払うことで、飼い主が動物病院に支払う医療費の一部をペット保険会社が補償してくれるサービスです。
現在、多くのペット保険会社がありますが、保険会社や契約プランにより、保険料や補償の内容等は異なります。
自分とペットにあった保険を選ぶには、情報を集めて比較検討をすることが大切です。
どんな補償内容が必要かは人によって異なりますが、ここではペット保険の選び方のポイントについてお伝えします。
ペット保険を比較する
ペット保険選びのポイント
ペット保険を選ぶポイントは以下の3つです。
<保険料>
一般的に、補償内容が多ければ多いほど、さらにペットの年齢に比例して保険料は高くなります。
実際に支払う保険料は、月額500円~1万円くらいまでとかなり差があります。
どの補償内容が必要なのか検討し、保険料とのバランスを考えて決めましょう。
<補償内容>
補償内容は、手術のみ補償するプラン、通院も含め手術や入院も補償するプランなどいろいろなプランがあり、補償割合も30%~90%などがあります。
保険料とのバランスもありますが、「万が一の事態に備え高額になりがちなペットの治療費の負担を軽くし、さらに通院のハードルが下がる」という意味では通院と手術・入院を補償するプランがおすすめです。
<加入時の年齢>
ペット保険は、ペットの年齢が高ければ高いほど保険料が高くなるのが一般的で、ある程度の年齢になると加入できないプランもあります。
反対に、シニア専用の保険やシニアになっても継続できるペット保険もあります。
現在、猫の平均寿命は約15歳で、年々伸びていく傾向があります。
歳を重ねると病気になりやすくなるため、シニアになっても使い続けられるペット保険をおすすめします。
保険会社によっては動物病院での支払い時に補償額を差し引いて窓口精算できる(対応可能動物病院のみ)ペット保険や、医療やしつけについて獣医師に24時間無料電話相談ができるサービスが付帯しているペット保険もあります。
初めて猫を飼う方には、この様な相談ができる付帯サービスがあるペット保険がおすすめです。
なお、ペット保険は病気やケガのために備える目的のものなので、ワクチンや不妊・去勢手術、ノミ・マダニなどの予防に関するものや保険加入前に発症している病気や先天性疾患に関しては補償の対象外なので注意しましょう。
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