猫の皮膚病は、強いかゆみを伴う場合や症状が落ち着いても再発するケースが多く、猫の生活の質を落とす原因になります。
この記事では、猫の皮膚病の原因や予防方法を詳しく解説します。
【獣医師監修】猫の皮膚病とは?原因と予防方法を徹底解説
【獣医師監修】猫の皮膚病とは?原因と予防方法を徹底解説

この記事をまとめると
猫の皮膚病はかゆみや脱毛、潰瘍などの症状があり蚊やノミ、食物アレルギーなどが主な原因です。
改善する方法は、以下の4つ。
- 駆虫薬や抗生剤、かゆみ止めの投薬を行う
- 食事療法(アレルギー源を避けた食事)
- 原因に応じた外科手術や抗がん剤治療
- 駆虫や感染源の特定と隔離
要約
適切な治療で改善が期待できますが、長引くこともあります。
予防策として、栄養バランスの良い食事や適度な運動、清潔な生活環境を保つことが大切です。
また、定期的な健康チェックや外部寄生虫対策も重要です。
猫の疾患別の統計データによると、皮膚疾患は消化器疾患、泌尿器疾患の次に多いという報告があり、皮膚病は猫がなりやすい病気のひとつだといえるでしょう。
猫の皮膚病の主な症状は、かゆみや脱毛、潰瘍ができる、ブツブツができる、フケが出るなどで、同じように見える症状でも原因は様々です。
また、猫は痛みやストレスなど精神的な問題が原因で、過剰にグルーミングしたり皮膚をかき壊したりするため、愛猫の普段の様子や行動をよく観察する必要があります。
参考データ:アニコム家庭動物白書 2023 アニコムホールディングス(株)
https://www.anicom-page.com/hakusho/book/pdf/book_202312.pdf
猫の皮膚病の原因で代表的なものは以下のとおりで、他に自己免疫性疾患、皮膚腫瘍、ウイルス感染症などの原因が考えられます。
- ・蚊刺咬過敏症(ぶんしこうかびんしょう)
- ・ノミアレルギー性皮膚炎
- ・食物アレルギー
- ・花粉・ダニ・ハウスダストなどの環境アレルゲンが原因のアレルギー
- ・細菌や真菌の感染
- ・外部寄生虫の感染
- ・ストレス性(心因性)脱毛
蚊刺咬過敏症
蚊に刺されることで起こるアレルギー反応で、蚊の多い夏に発症します。
耳介など蚊が刺しやすい場所に、粟粒性皮膚炎(小さな粒々が多数できる皮膚炎)がみられ、肉球の周辺部が赤くなるなどの症状がみられる場合もあります。
ノミアレルギー性皮膚炎
ノミの唾液に反応して発症し、腰背部や尾周辺にかゆみを伴った粟粒性皮膚炎がみられます。
食物アレルギー
ある特定の食物を摂取したことで生じる有害反応のひとつです。
通年で強いかゆみが見られ、特に頭部や首のまわりに症状が現れることが多いという特徴があります。
頭や首、腹部に湿疹ができるなどの皮膚症状だけでなく、嘔吐や下痢などの消化器症状が現れるケース、舐め続けて毛が薄くなっているにも関わらずその場所に皮膚炎が無い場合もあります。
環境アレルゲンが原因のアレルギー
かゆみを繰り返す皮膚炎で、過剰なグルーミングによる脱毛、粟粒性皮膚炎、頭や頚部に皮膚病変ができるなどの皮膚症状や、唇や口の中に潰瘍ができるケースもあります。
ダニや花粉、ハウスダストなどの環境アレルゲンが関与している可能性があると考えられていますが、猫の場合は人や犬のアトピー性皮膚炎と異なっている部分が多く、「アトピー性皮膚症候群」「非ノミ非食物誘発性過敏性皮膚炎」ともいわれています。
細菌や真菌の感染
細菌感染による皮膚炎で多く見られるのは、皮膚のバリア機能が低下するなどの原因により皮膚にいる常在菌が増えすぎて二次的に感染を引き起こすというケースです。
症状は、赤いブツブツしたものができる他、かゆみや腫れなどがみられます。
また、真菌(カビの仲間です)による皮膚炎で代表的なものは、皮膚糸状菌による感染症です。
糸状菌に感染した動物や感染した毛や環境との接触により感染するため、免疫が低下している子猫や高齢の猫、持病がある猫など、どんな猫種でも発症する可能性があります。
主な症状は、脱毛や裂毛(毛が切れること)、フケなどで、一般的にかゆみはあまりありません。
外部寄生虫の感染
外部寄生虫が原因となる皮膚の感染症で代表的なものは、猫疥癬とミミダニ症の2つです。
猫疥癬はショウセンコウヒゼンダニというダニが皮膚に寄生することで発症します。
ショウセンコウヒゼンダニは皮膚の角質層にトンネルを掘って生活し、ダニが出した排泄物などが原因でアレルギー反応が起き強いかゆみが生じます。
かゆみの他には、フケや発疹がみられる、皮膚が硬くなる、激しく掻きむしった部分が出血し化膿する、抜け毛やカサブタが増えるなどの症状がみられます。
猫疥癬は、既に疥癬に感染している猫に接触することで感染しますが、人に感染する可能性もあるため注意が必要です。
ミミダニ症は、ミミヒゼンダニというダニが耳道に寄生して発症し、ダニが皮膚表面を引っかくため強いかゆみが生じます。
ミミヒゼンダニは、ショウセンコウヒゼンダニのように皮膚にトンネルを掘って寄生するのではなく、外耳道に寄生します。
ミミヒゼンダニに感染すると黒っぽい乾いた耳垢が貯まり、猫は頭を振ったり、耳を激しく掻いたりするようになります。
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環境の変化や痛み、避妊手術後のストレスや運動不足など、ストレスや心の問題が原因で猫が身体の一部を繰り返し舐め続けることによって生じます。
原因の特定や診断がわかりづらく、再発を繰り返して完治が困難なケースも多い皮膚病です。
疥癬やミミダニ症など、外部寄生虫が原因の皮膚病は、駆虫や感染源を特定して隔離するなどの適切な治療を行えば比較的早く治ります。
しかし、原因がはっきりしない、複数の原因がある、心因性の原因がある場合は治療が長期に渡ることが多く、中には完治しないケースもあります。
皮膚病の治療は同じ「かゆみ」「ブツブツができた」という症状でも原因によって治療方法が異なるため正確な診断が大切です。
正確な診断のためには、問診(年齢・悪化する時期・屋外にでるか否か・同居動物の有無・皮膚の症状以外の症状があるかなど)や視診(脱毛や皮膚炎の状態、皮膚病変がある場所、強いかゆみがあるかなど)が非常に重要なポイントとなります。
動物病院で行う主な検査
櫛検査
ノミ取り櫛で全身をとかして、回収されたフケや毛の付着物を観察する検査です。
掻把(そうは)試験
皮膚の表面をひっかいて採取したものを顕微鏡で確認し、ダニや毛包虫の感染の有無を調べる検査です。
出血するくらい皮膚を深くひっかいて調べないと、寄生虫が発見できない場合もあります。
耳垢検査
耳垢を顕微鏡で確認し、ミミヒゼンダニの成虫や卵の有無を調べたり、染色してマラセチアという皮膚や耳の中に常在する酵母菌の有無をチェックしたりする検査です。
ウッド灯検査
ウッド灯は特殊な紫外線ランプで、一部の真菌が発生する代謝産物に当てると、明るい緑色の蛍光色を発することから、真菌感染の有無を診断するために使用します。
ただし、全ての真菌が発色するわけではないので、確定診断は真菌培養で行います。
抜毛検査
少量の毛を抜いて顕微鏡で観察し、真菌感染、色素形成不全、痒みの評価を行う検査です。
除去食試験
ある特定の食物に有害反応があるかどうかを調べる検査で、いままでその猫が食べたことのないタンパク質を使用したフードや、加水分解された食事だけを6週間以上与えて症状の改善がみられるかどうかをチェックする方法です。
皮膚細胞診
細い針を皮膚に刺したりスライドガラスを皮膚病変におしつけたりして、病変部の細胞を採取し、採れた細胞を染色して顕微鏡で確認する検査です。
皮膚生検
病理診断をする目的で、皮膚病変の一部または全部を採取して行う検査です。
上記の検査以外に、状況に応じて血液検査やレントゲン検査、エコー検査など全身状態を精査するケースもあります。
猫の皮膚病の治療方法
一般的には食事療法、抗生剤やかゆみ止め、駆虫薬の投薬などの内科治療を行い、皮膚腫瘍の場合は外科手術や抗がん剤治療を行うなど原因に合わせた治療を行います。
猫は、基本的には水に濡れるのがあまり得意ではないため、薬浴などのシャンプー療法は難しく、さらに食の好みが細かい神経質な猫は食事療法がうまくいかないケースもあります。
皮膚病を100%予防するのは不可能ですが、猫の健康管理を心がけて免疫機能を高めることは皮膚病の予防につながります。
栄養バランスの良い食事
猫は肉食動物で、消化管は短くタンパク質の要求量も多いという特徴があります。
適切な食事とは猫の身体に合った食事のことで、基本的には総合栄養食と新鮮なお水が中心の食事がおすすめです。
ドライフードだけでは水分不足になりやすいので、ウエットフードを併用するとよいでしょう。
運動と生活環境について
健康で長生きするためには、食事の管理と共にある程度の運動も必要です。
運動を習慣化するためにはキャットケージの高い位置にフードを置いて食事を与えるなど、自然に運動ができるような環境を作るのもよいでしょう。
また、おもちゃで遊ぶ、やさしく声をかけて撫でるなど、愛猫が好むコミュニュケーション方法で愛猫のストレスを発散する時間を作りましょう。
定期的な健康チェック
健康的な生活を送るためには、定期的な健康チェックは必須です。
最低でも年に1回は血液検査・尿検査などの健康診断を受けましょう。
肥満に注意する
肥満は、下部尿路疾患、変形性関節症や糖尿病などのリスクを高め、猫の生活の質を下げる原因となります。
さらに、肥満が猫に与える影響は、「飼い主と遊びたいのに太って動くのがつらい」「上下運動ができなくなる」など猫にとって精神的なストレスにまで及ぶともいわれています。
前述したとおり、関節などの痛み、ストレスや心の問題があると猫が過剰に身体を舐めて皮膚病の原因になることがあります。
フードやおやつなど、猫に与える食べ物の一日量を量ってそれ以上与えないようにすると食事管理が簡単です。
愛猫の心身の健康を保つためにも、食事管理を徹底するよう心がけましょう。
ノミやマダニなどの外部寄生虫対策をする
完全室内飼いであっても、ノミやマダニが活動しやすくなる気温が15℃くらいの時期にはノミやマダニ、疥癬などの外部寄生虫対策をしましょう。
特に犬が一緒に住んでいる環境では、毎日のお散歩や飼い主さまの出入りによってノミが家の中に持ち込まれることもあります。
わたしの勤務先でも、完全室内飼いなのにノミが家の中で繁殖して大発生し、飼い主さまもノミに刺されて大騒ぎになった例が毎年ありました。
外部寄生虫対策は、猫が舐めない位置に滴下するスポットタイプで行うのが一般的で、一度滴下すると3ヶ月間効果が維持する薬や外部寄生虫だけでなく回虫などの消化管内の寄生虫を駆虫する効果がある薬など様々な種類があります。
なお、動物病院以外で売られているスポットタイプの医薬部外品のものやのみとり首輪は効果が期待できないものが多いため、かかりつけの動物病院で愛猫に合った薬を処方してもらいましょう。
清潔な生活環境を保つ
ダニやハウスダストなど、環境アレルゲンが原因の皮膚病の予防には、生活環境を整えることが一番です。 室内はまめに掃除を行い、愛猫が寝ている寝床は洗える素材のものを使用して定期的に洗濯するなど、清潔な生活環境の維持を心がけましょう。
皮膚病を完全に予防することはできないものの、猫に多い皮膚病の原因である蚊やノミの駆除、環境アレルゲンを減らす工夫をすることである程度の予防効果が期待できます。
具体的な方法は以下のとおりです。
- ・まめにブラッシングをする
- ・蚊が多い時期は庭やベランダに出さない
- ・完全室内飼いでもノミ・マダニ対策をする
- ・空気清浄機を設置する
- ・換気やエアコンフィルターの掃除をこまめに行う
- ・猫がストレスを抱えないようにトイレの数や設置場所、落ち着ける場所があるかなど生活環境に気を配る
また、かかりつけの動物病院で治療を行ってもなかなか治らない場合は、皮膚専門の動物病院や大学病院を紹介してもらうなどセカンドオピニオンを受けることをおすすめします。
わたしの今までの臨床経験でも、一般的な治療をしてもあまりよくならず、皮膚生検をしたところ皮膚腫瘍だったケースが何例かありました。
また、ハクビシンやタヌキなどの野生動物が疥癬に感染しているケースも多く、野外に出る飼い猫が疥癬に感染した例があります。
愛猫や飼い主さまご自身がつらい思いをすることのない様に、予防できる対策はしっかり行い、猫はできる限り室内飼いをおすすめします。
ペットには、人間の様な公的な健康保険制度はありません。
そのため、動物病院での治療費の負担は全額自己負担です。
状況によっては手術や長期間の通院、治療が必要になる場合や、それに伴いペットの医療費も高額になる可能性があります。
何かあった時のための備えとしてペットのためにご自身で備えるという方法もありますが、突然のケガや病気など予想もしなかった事態に備えておくための選択肢の一つとして、ペット保険があります。
ペット保険とは、保険料をペット保険会社に支払うことで、飼い主が動物病院に支払う医療費の一部をペット保険会社が補償してくれるサービスです。
現在、多くのペット保険会社がありますが、保険会社や契約プランにより、保険料や補償の内容等は異なります。
自分とペットにあった保険を選ぶには、情報を集めて比較検討をすることが大切です。
どんな補償内容が必要かは人によって異なりますが、ここではペット保険の選び方のポイントについてお伝えします。
ペット保険選びのポイント
ペット保険を選ぶポイントは以下の3つです。
- ●保険料
- ●補償内容の違い
- ●加入時の年齢
保険料
一般的に、補償内容が多ければ多いほど、さらにペットの年齢に比例して保険料は高くなります。
実際に支払う保険料は、月額500円~1万円くらいまでとかなり差があります。
どの補償内容が必要なのか検討し、保険料とのバランスを考えて決めましょう。
補償内容
補償内容は、手術のみ補償するプラン、通院も含め手術や入院も補償するプランなどいろいろなプランがあり、補償割合も30%~90%などがあります。
保険料とのバランスもありますが、「万が一の事態に備え高額になりがちなペットの治療費の負担を軽くし、さらに通院のハードルが下がる」という意味では通院と手術・入院を補償するプランがおすすめです。
加入時の年齢
ペット保険は、ペットの年齢が高ければ高いほど保険料が高くなるのが一般的で、ある程度の年齢になると加入できないプランもあります。
反対に、シニア専用の保険やシニアになっても継続できるペット保険もあります。
現在、猫の平均寿命は約15歳で、年々伸びていく傾向があります。
歳を重ねると病気になりやすくなるため、シニアになっても使い続けられるペット保険をおすすめします。
保険会社によっては動物病院での支払い時に補償額を差し引いて窓口精算できる(対応可能動物病院のみ)ペット保険や、愛猫の病気や気になる症状などを獣医師に24時間無料電話相談ができるサービスが付帯しているペット保険もあります。
初めて猫を飼う方には、この様な相談ができる付帯サービスがあるペット保険がおすすめです。
なお、ペット保険は病気やケガのために備える目的のものなので、ワクチンや不妊・去勢手術、ノミ・ダニ対策などの予防に関するものや保険加入前に発症している病気や先天性疾患に関しては補償の対象外なので注意しましょう。
この記事の監修者

現在複数の動物病院で臨床獣医師として勤務しながら専門知識や経験を活かして各種メディアや個人サイトでライターとして情報を発信している。
▼ドリトルけいのいぬねこ健康相談室
https://www.dolittlekei.com/
ライフワークは「ペットと飼い主様がより元気で幸せに過ごすお手伝いをする」こと。
ご契約の際は引受保険会社のパンフレット、webサイト等で商品資料をご確認の上、お申込みください。
また、重要事項等の説明もあわせてご確認くださるようお願い申し上げます。
