サイベリアンは「サイベリアン・フォレストキャット」とも言われ、ロシア原産の猫です。
そのルーツの詳細は不明ですが、農家の猫が屋外で生活しながら厳しい冬の寒さに耐えられる様に進化してきたと言われています。
この記事によりサイベリアンに多い病気について知って頂き、病気の予防や早期発見にお役に立てれば幸いです。
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この記事をまとめると
サイベリアンは、遺伝性疾患や肥満による病気など、注意が必要な病気やケガがあります。
サイベリアンに多い主な病気やケガは以下の3つ。
- ピルビン酸キナーゼ欠損症(PCK):筋肉のエネルギー代謝に必要な酵素の欠損により、筋肉の壊死やけいれんを引き起こす
- 尿石症:尿道に結石ができ、排尿困難や膀胱炎を引き起こす
- 猫風邪:ウイルスや細菌の感染により、発熱や咳、くしゃみなどの症状を引き起こす
要約
サイベリアンを飼う際には、これらの病気やケガを念頭に置いて、日頃から健康管理に努めましょう。
また、高額な医療費に備えるためには、ペット保険に加入しておくことがおすすめです。
サイベリアンは、ロシア東部の農家で飼われていた猫が、屋外の厳しい環境の中で生き残るために進化してきたと言われています。
この様に環境が進化させたと言われるサイベリアンの特徴と遺伝性疾患についてお伝えします。
身体的特徴
厳しい寒さに耐えられる様に豊かで密生した被毛(トリプルコート)が特徴で、一番表面にあるトップコートはわずかに油分を含んでいます。
身体は大きくしっかりした体つきで、大型の猫に分類され成猫時の体重は5kg~9kgくらいです。
また、身体は大きくても、動きは鈍重ではなく活発で身のこなしの軽い猫です。
なお、サイベリアンは「猫アレルギーが起きにくい」と言われていますが、明確な科学的根拠は不明だとも言われています。
注)4頭のサイベリアン他35頭の猫を対象とした調査で、猫アレルギーが起こりにくいということに何らかの関連があるかもしれない、という文献は存在します。
しかし、実際にわたしの勤務先に来院される飼い主さまで「猫のアレルギーが気になるけどどうしても猫が欲しくてサイベリアンにしました」という方もいらっしゃいます。
今後調査が進むと、猫アレルギーとの関連についてより詳しいことがわかるかもしれませんね。
遺伝性疾患
<ピルビン酸キナーゼ欠損症>
ピルビン酸キナーゼ欠損症は、体内のエネルギーの元になるATPの産生に携わるピルビン酸キナーゼという酵素が欠損することにより、赤血球の寿命が短くなるために貧血を起こす病気です。
生後2~3か月の頃に貧血が見られ、3歳以下の若齢の猫に発症します。
主な症状は、慢性的な貧血の他に
- ・食欲低下
- ・疲れやすい
- ・呼吸が速い
- ・可視粘膜が白い
などで、軽度~重度の貧血まで症状には個体差がみられます。
治療法は、安静など保存療法が基本で、貧血がひどい場合は状況によって酸素化や輸血などの対症療法を行います。
遺伝性疾患のため予防方法はありませんが、血液検査により発症のリスク判定を行うことができます。
繁殖をする場合は遺伝子検査を行い、変異遺伝子を次世代に残さないように注意することが大切です。
参考までに、遺伝子検査の費用は15,000円前後で検査機関に依頼して行うことが可能です。
サイベリアンの飼育時に気をつけたいポイントをまとめました。
飼育時に気をつける事
サイベリアンは、長くて3層からなる密な被毛が特徴です。
そのため、非常に毛玉になりやすく、毎日のブラッシングなどのお手入れが必要です。
毛玉をカットしようとしてハサミで毛玉と一緒に皮膚を切ってしまう場合があるため、毛玉が出来てしまった場合は無理をしないで動物病院やトリミングサロンなどに相談することをおすすめします。
また、基本的には暑さが苦手なので、気温が高い日や湿度の多い日の温度管理には特に注意しましょう。
生活面の注意点
サイベリアンは、比較的活発で社交的な性格です。
もともとはネズミを捕まえるなどのハンティングが得意で運動量が必要な上に、食欲が旺盛な猫が多い傾向があります。
さらに、比較的大きくなる猫種なので、飼育環境は広い場所が必要です。
おもちゃで遊ばせる、キャットタワーやキャットウォークなどを設置するなど上手にストレスを解消して運動不足にならない様に工夫しましょう。
特にオスで肥満傾向がある場合は尿路結石ができるリスクが高くなるので、食事はミネラル分や脂肪分、カロリーの少ないものを与えましょう。
また、水を怖がらずにお風呂や水槽に飛び込んでしまう場合もあるので、蓋をする等事故が起こらない様に十分注意しましょう。
サイベリアンがかかりやすい病気は外耳炎、下部尿路疾患、肥大型心筋症があります。
それぞれ主な症状と治療費の目安を表にまとめました。
治療費は法律の規定により、同じ治療を行っても動物病院によって治療費の設定が異なります。
そのため、治療費については一例としてお考え下さい。
|
主な症状 |
治療費の一例 |
外耳炎 |
耳の後ろを掻く
耳の中から臭いがする
耳の中が汚れている 頭を振る |
耳処置:1,000円~3,000円
抗生剤・消炎剤投薬(7日分)
内服薬1,500円~3,000円 外用薬 2,000円前後 |
下部尿路疾患 |
トイレに頻繁にいく
トイレの中に座っている時間が長い
陰部を頻繁に舐めている
痛がって鳴く 尿が出ていない |
尿検査:1,000円~4,000円
レントゲン検査:
1枚5,000円~6,000円
エコー検査:5,000円~6,000円
抗生剤・消炎剤投薬(7日分)
内服薬1,500円~3,000円 尿道カテーテル留置:3,000円~ |
肥大型心筋症 |
食欲低下
動きが悪く寝てばかりいる
呼吸が早い
咳をする
後肢が突然麻痺する 痛がって鳴く |
レントゲン検査:
1枚5,000円~6,000円
エコー検査:5,000円~6,000円
*症状が悪化し、血栓が詰まった場合は入院治療し、酸素吸入や点滴と血栓溶解剤の投与などが必要 →入院費:一日10,000円~ |
サイベリアンがかかりやすい病気を年齢別にまとめました。
子猫期(0~1歳)
<上部気道感染症(猫風邪)>
母猫からの移行抗体が減少してくる生後2か月前後にかかりやすい病気で、くしゃみ、鼻水、発熱、目やになど人間の風邪の様な症状が見られます。
原因はヘルペスウイルス、カリシウイルス、クラミジアなどの感染です。
治療は点眼薬や点鼻薬、インターフェロンの投与などを行います。
一旦症状がおさまっても再発する場合や、流涙や鼻づまりなどの症状が治らないケースもあります。
<消化器疾患>
消化器疾患とは食道や胃、腸など消化器系の病気のことです。
この時期に特に多いのは下痢や嘔吐、そして異物誤飲です。
特に飼い始めたばかりの子猫の時期は、環境の変化によるストレスや、寄生虫の感染などによる下痢が多く見られます。
また、異物の誤飲を防ぐためには、誤飲しそうなおもちゃなどを置きっぱなしにしないことが一番の対策です。いたずら好きな猫の場合には、留守番はケージに入れる様にする等工夫しましょう。
<猫伝染性腹膜炎>
猫伝染性腹膜炎は1歳未満のオスの子猫に発症しやすいと言われています。
ある統計では、理由は不明ですが雑種より純血種での発生が多いという結果で、わたしの臨床経験上でも同じように純血種の猫に多い印象があります。
猫伝染性腹膜炎ウイルスは、ほとんどのイエネコが感染していると言われる猫腸コロナウイルスが突然変異してできたと言われています。
症状は食欲元気の低下、発熱、体重減少が見られ、腹水や胸水が貯まるウエットタイプとブドウ膜炎、肝臓や腎機能が低下し神経症状がみられるドライタイプの二つのタイプがあります。
この病気は、どちらのタイプも非常に治療の反応が悪く、残念なことに予後不良の場合がほとんどです。
成猫期(1歳~7歳)
<外耳炎>
サイベリアン以外でも外耳炎は猫には比較的多い疾患です。
原因はマラセチア菌という常在菌の増殖や細菌感染、耳ダニなどの外部寄生虫、過剰な耳のケアなど様々です。
治療は点耳薬や駆虫薬など原因に合わせた治療を行います。
<下部尿路疾患>
下部尿路疾患とは、膀胱と尿道の病気のことで、特に多いのは特発性膀胱炎です。
しかし、下部尿路疾患は、尿石症や尿路感染症、腫瘍などが原因であっても頻尿や排尿困難、血尿などの同じような症状がみられるので、何が原因なのかを調べることが大切です。
また、尿道が閉塞している場合は、命に関わるのでなるべく早く治療する必要があります。
愛猫がきちんと排尿しているかどうか毎日確認しましょう。
シニア期(7歳~)
<慢性腎臓病>
シニア期の猫が最もかかりやすい病気の一つです。
症状は多飲多尿、食欲不振、毛並みが悪くなる、痩せてくるなどで、この様な症状が見られた時には腎臓の機能の7割近くがダメージを受けている状況です。
そして、壊れてしまった腎臓の細胞は元通りに再生させることはできません。
治療は、内服薬の投薬や食餌療法、輸液療法などで、残った腎臓の機能をなるべく良い状態に維持することを目的として行います。
<甲状腺機能亢進症>
シニア期の猫に多い内分泌疾患です。
原因は、甲状腺過形成、甲状腺濾胞腺腫、甲状腺癌で、甲状腺の機能が亢進しすぎることで、異常に食欲が旺盛になり、その割には体重が減少していきます。
鳴き声が大きくなる、昼夜に関わらず良く鳴くなどの症状が見られたらこの病気を疑います。
診断は、触診や血液検査を行い、甲状腺ホルモンの値を確認します。
治療は、食事療法や甲状腺の働きを止める内服薬の投薬を行う内科療法か、甲状腺の摘出手術を行う外科療法を行います。
ペットには、人間の様な公的な健康保険制度はありません。
そのため、動物病院での治療費の負担は全額自己負担です。
状況によっては手術や長期間の通院、治療が必要になる場合や、それに伴いペットの医療費も高額になる可能性があります。
何かあった時のための備えとしてペットのためにご自身で備えるという方法もありますが、突然のケガや病気など予想もしなかった事態に備えておくための選択肢の一つとして、ペット保険があります。
ペット保険とは、保険料をペット保険会社に支払うことで、飼い主が動物病院に支払う医療費の一部をペット保険会社が補償してくれるサービスです。
現在多くのペット保険会社がありますが、保険会社や契約プランにより、保険料や補償の内容等は異なります。
どんな補償内容が必要かは人によって異なりますが、ここではペット保険の選び方のポイントについてお伝えします。
ペット保険選びのポイント
ペット保険を選ぶポイントは以下の3つです。
<保険料>
一般的に、補償内容が多ければ多いほど、さらにペットの年齢に比例して保険料は高くなります。
実際に支払う保険料は、月額500円~1万円くらいまでとかなり差があります。
どの補償内容が必要なのか検討し、保険料とのバランスを考えて決めましょう。
<補償内容>
補償内容は、手術のみ補償するプラン、通院も含め手術や入院も補償するプランなどいろいろなプランがあり、補償割合も30%~90%などがあります。
保険料とのバランスもありますが、「万が一の事態に備え高額になりがちなペットの治療費の負担を軽くし、さらに通院のハードルが下がる」という意味では通院と手術・入院を補償するプランがおすすめです。
<加入時の年齢>
ペット保険は、ペットの年齢が高ければ高いほど保険料が高くなるのが一般的です。
また、ある程度の年齢になると加入できないプランもあります。
反対に、シニア専用の保険やシニアになっても継続できるペット保険もあります。
猫の平均寿命は約15歳なので、シニアになっても使い続けられるペット保険をおすすめします。
また、保険会社によっては動物病院での支払い時に補償額を差し引いて窓口精算できる(対応可能動物病院のみ)ペット保険や、医療やしつけについて獣医師に24時間無料電話相談ができるサービスが付帯しているペット保険もあります。
初めて猫を飼う方には、この様な相談ができる付帯サービスがあるペット保険がおすすめです。
また、ペット保険は病気やケガのために備える目的のものなので、ワクチンや不妊・去勢手術、ノミ・マダニなどの予防に関するものや保険加入前に発症している病気や先天性疾患に関しては補償の対象外なので注意しましょう。
また、ペット保険の補償には限度額や限度日数・回数など制限があるので、保険料や補償内容・年齢などの加入条件と併せて確認しておくと安心です。
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