パグは愛嬌のある表情やしぐさが愛らしく、日本国内だけではなく海外でも人気がある犬種です。
しかし、短頭種特有の呼吸器の病気や皮膚疾患が多い犬種でもあります。
この記事は、パグの寿命と長生きのコツ・健康維持についてまとめました。
この記事をまとめると
パグに多い病気やケガは以下の4つ。
- 短頭種気道症候群:鼻腔や気管が狭くなり、呼吸困難や咳などの症状を引き起こす。遺伝的な要因が大きく、肥満や運動不足なども悪化させる。
- 皮膚疾患:皮膚が弱く、アレルギーや皮膚炎などの皮膚疾患にかかりやすい。皮膚の清潔を保つことが大切。
- 膀胱炎:膀胱の粘膜に炎症が起きる。尿路感染症が原因になることも。水分を十分に摂取する。
- パグ脳炎:脳全体に炎症や壊死が広がる。原因は不明。早期発見・早期治療が重要。
要約
パグは、短頭種特有の病気や、皮膚疾患、膀胱炎などにかかりやすい。
定期的な健康診断や、適度な運動や食事管理などによって、健康を維持するようにしましょう。
パグは、愛嬌のある表情と、穏やかな性格で人気のある犬種です。しかし、短頭種特有の病気や、皮膚疾患、膀胱炎などにかかりやすいという注意点もあります。
定期的な健康診断や、適度な運動や食事管理などによって、健康を維持するようにしましょう。
パグの平均寿命はどのくらい?
パグの平均寿命は12.8歳で、同年の犬の平均寿命14.2歳と比較するとやや短い傾向です。
しかし、わたし自身のいままでの臨床経験から考えると、14歳以上の元気なパグや16歳以上長生きしたパグ、10歳になる前に残念ながら病気で亡くなってしまったパグもいて、個体差が大きいという印象があります。
参考:アニコム ホールディングス株式会社
アニコム家庭どうぶつ白書2023 https://www.anicom-page.com/hakusho/
寿命に影響する最も大きな要因は体重管理
パグは、フレンチブルドッグやシーズー、ボストンテリアなどと同様に、頭骸骨に対してマズル(鼻先から口にかけての前に飛び出た部分)が短く、短頭種と呼ばれています。
短頭種の特徴の一つは、体温調整が苦手なため暑さに弱いことで、湿度や気温が高い日は熱中症のリスクが非常に高くなるため注意が必要です。
また、パグは食欲旺盛な犬が多く太りやすい犬種で、太ると体温調節がさらに難しくなります。
わたしの勤務先の動物病院に来院しているシニアのパグは、ほとんど標準的な体重を保っていることから考えても、体重管理を徹底して太らせないことが寿命に影響する非常に大きな要因だといえるでしょう。
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パグの健康管理と日常的なケアについて
パグの健康管理について、特に重要な以下のポイントを中心に解説します。
- ・食事管理
- ・運動とストレス対策
- ・熱中症対策
- ・定期的な健康チェック
食事管理
犬は雑食動物とはいえ、肉食動物に近い消化器の特徴を持っています。
そのため、たんぱく質や脂肪の消化に適した身体の構造で繊維質や糖質の消化はあまり得意ではありません。
基本的には、総合栄養食と新鮮なお水が中心の食事がおすすめですが、手作り食中心の食事を与える場合はリンとカルシウムのバランスやミネラル・ビタミンの不足などが懸念されるので、動物栄養学を学んでから実践することをおすすめします。
運動とストレス対策
犬は「動きたい」という衝動が強い動物で、年齢や体力に合わせた適度な運動や散歩は、愛犬の心身の健康を維持するのに役立ちます。
パグは、社交的で遊びが大好きな犬種です。
季節を問わず室内でも楽しく遊べるような工夫して、愛犬の体力や興奮を飼い主さまが上手にコントロールすることを心がけましょう。
熱中症対策
犬は人間の様に汗をかく汗腺(エクリン汗腺)が肉球など体の一部にしかありません。
そのため舌を出して呼吸(パンティング)して唾液を蒸発させる方法で体温を調節しますが、前述した通り短頭種は顔の形状により基本的に体温調節が苦手です。
4月~5月くらいの時期から、外出時には首回りを冷やすネッククーラーを携帯する、普段から水分がしっかり摂取できるようにウエットフードや水分補給ができる犬用のゼリー状のおやつを活用するなど熱中症対策を始めましょう。
熱中症のリスクが高まる気温の高い時期には、早朝など涼しい時間にお散歩をするように心がけるとともに、室内でも24時間冷房をつけたままにするなど熱中症対策をしっかり行うことが大切です。
基本的には冷房の設定温度は25℃~26℃前後で、飼い主さまによっては寒いと感じるくらいが彼らにはちょうどいいくらいです。
気温だけではなく湿度が高いことも熱中症の原因になるため、気温と同様に湿度管理も心がけましょう。
興奮しすぎることも熱中症のリスクを高めるため、お留守番させる状況が考えられるご家庭ではひとりでも落ち着いてお留守番ができるようにしつけをしましょう。
定期的な健康チェック
食欲の有無、排便・排尿の様子、呼吸状態、姿勢など、普段から愛犬をよく観察し、愛犬の身体に触れることが病気の早期発見につながります。
おかしいと思ったら早めに動物病院を受診する習慣をつけましょう。
健康的な生活を送るためには、定期的な健康チェックは必須です。
万が一病気になっても、早期発見と早期治療で病気と上手くつきあうことで回復できる場合や少しでも寿命を長くできる可能性があります。
最低でも年に1回は血液検査・尿検査などの健康診断を受けましょう。
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パグがかかりやすい病気や怪我とは
呼吸器疾患
頭短種は骨格の構造上、鼻から咽頭にかけての気道が狭いという特徴があります。
そのため、呼吸器疾患になりやすく「頭短種気道症候群」という呼吸器疾患の総称があるほどです。
短頭種気道症候群
軟口蓋過長症 |
軟口蓋が長すぎたり厚すぎたりして気道を塞ぎ呼吸がしづらい
軟口蓋:酸素を気道、飲食物を食道へ分けて送る役割をもつ喉の奥にあるひだのこと |
外鼻孔狭窄 |
鼻孔(鼻の穴)が生まれつき狭く、鼻の穴から十分な酸素が吸えない |
鼻腔狭窄 |
鼻の中が狭く、呼吸がしづらい |
気管低形成 |
生まれつき気管が細い |
上記の呼吸器疾患が、単独または複合的に生じている状態のことを短頭種気道症候群といいます。
主な症状はいびきをかく、ガーガーという呼吸音がする、呼吸困難(軽度~重度)などです。
外鼻孔狭窄のように見た目でわかりやすい疾患もありますが、見た目だけではわからない場合もあります。
毎日のように大きないびきをかく、暑い日でもないのにお散歩に出たとたんに口を開けて荒い呼吸をする、夜熟睡できず何度も起きるなどの行動がみられる場合は、早めに動物病院を受診しましょう。
皮膚疾患
犬種を問わず、犬は皮膚疾患になりやすい傾向があります。
パグは遺伝的にアレルギーのリスクが高いうえに、顔のしわの皮膚が重なっている場所に皮脂や汚れがたまると病原菌が増えやすく、特に皮膚疾患が多い犬種だといえるでしょう。
パグに多い皮膚疾患
膿皮症 |
皮膚のコンディションが悪くなることが原因で二次的に細菌感染が起きて生じる |
マラセチア性 皮膚炎 |
マラセチアという皮膚にいる常在菌が増えて感染が起きることで生じる |
犬アトピー性 皮膚炎 |
花粉・ハウスダストなどの環境アレルゲンが原因で、遺伝的な要因が関与するため特定の犬種がかかりやすい |
食物アレルギー |
食べ物が原因で起こる皮膚炎で、アトピー性皮膚炎とおなじようなかゆみや皮膚の炎症、外耳炎、便がゆるくなるなど消化器症状がみられる |
眼の病気
大きく外に飛び出しているパグの目は、物に当たるなどして傷つく危険性が高くなります。
特に、お散歩時に草や木の枝が眼にあたることで外傷性の角膜炎を起こしやすいので要注意です。
また、白内障(目の中でレンズの役割をしている水晶体が白く濁り、目が見えなくなる病気)は、パグでは外傷による原因が多いといわれています。
パグ脳炎(壊死性髄膜脳炎)について
壊死性髄膜脳炎は、パグの発症が多いことから「パグ脳炎」という通称がある脳の病気です。
パグ以外にはヨークシャーテリア、チワワ、マルチーズ、など小型犬に多いことが知られています。
原因は未だ不明ですが、パグに関しては家族性(血縁関係がある)の発症の報告があり、遺伝的な素因の可能性が考えられています。
症状は様々で、特に多いのはてんかんのような発作や運動失調、チック症状(まばたきや片足の身がピクピク動くなど、意思とは関係なく繰り返し出現する症状)、意識レベルの低下などです。
診断は難しく、全身麻酔下でMRI検査を行うことである程度の判断を行いますが、他の炎症疾患や腫瘍性疾患との区別ができない症例もあります。
発作を抑える抗てんかん剤や脳の炎症を抑えるステロイドなどの抗炎症剤を併用し、発作をコントロールする内科治療を行うことで1年以上うまくコントロールできるケースもあれば、1週間以内に死亡する例もある怖い病気です。
この病気は原因が不明なため予防方法はないものの、早い段階で脳炎の症状に気づいて診断と治療を始めることが大切です。
チック症状やよだれを大量に垂らす、ふらつき、表情が無表情になるなど普段と違う行動がみられたらなるべく早く動物病院を受診しましょう。
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シニア期のパグのケア方法
犬種にもよりますが、犬は平均寿命の50~75%くらいの年齢からシニア期が始まるといわれています。
パグの平均寿命から考えると7歳くらいからシニア期が始まると考えてよいでしょう。
この時期は、見た目はまだまだ若くて元気で、目に見えて愛犬が歳をとったという印象はないかもしれません。
しかし、加齢とともに起こりがちな健康上のトラブルが少しずつ増えはじめる時期です。
前述のとおり、パグはもともと呼吸器疾患や皮膚のトラブルが多い犬種ですが、歳を重ねていくと免疫機能や飲み込む力が弱くなることなどが原因で、気になっていた症状がさらに悪化する可能性があります。
歳をとっても愛犬が快適に生活するためには、若い時期から気になる症状に対しては治療し、普段もこまめなケアを行うなどの対策が必要です。
シニア犬のサポートでおすすめの運動は?
犬は、前肢に約7割の体重をかけているため、後肢の筋肉から衰えていくといわれています。
そのため、元気で動ける身体を維持するためには、後肢を中心に鍛えることが大切です。
具体的な方法は以下で詳しく解説します。無理ない範囲で筋肉を鍛えてみましょう。
筋肉を鍛える方法
・お散歩コースに緩い登り坂を加える
登り坂では自然に後肢に体重がかかるため、無理なく後肢を鍛えられます。
・犬用のバランスディスクを使う
好奇心旺盛なパグの場合は、体重をかけると揺れるディスク型のバランスボールを使ってみるのもよいでしょう。
・3本足トレーニング
1本ずつゆっくり足を持ち上げて、残りの3本の足で立たせるトレーニングです。
持ち上げた時に軽く感じる足は、犬があまり負重をかけていない(=筋肉がうまく使えていない・弱っている)足です。
3本足で立っている時間は5秒ほどでも十分トレーニングになります。
軽く感じる足を中心に無理なくトレーニングしてみましょう。
シニア犬に推奨される食事
加齢に伴う筋肉量の低下を防ぐためには、腎機能障害などタンパク質を制限する必要がある場合を除いて、良質なたんぱく質をしっかり与える必要があります。
パグは皮膚疾患が多いため、食事が原因で起こる皮膚の影響を考えると、たんぱく質源がわかりやすいものや単一のたんぱく質源を使用したドッグフードやおやつを与えるほうが安心です。
また、シニアになると飲み込む力が衰えて誤嚥しやすいため、愛犬の顔やマズルの形、食べ方をよく観察して食べやすい形状・大きさのものを与えると安心です。
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【獣医師のアドバイス】長生きするパグの事例とその生活習慣
わたしの今まで臨床経験から、長生きしているパグの事例を解説します。
天真爛漫で明るい性格のパグですが、やはり健康上のトラブルは多い犬種です。
長生きのパグたちも、皮膚疾患や呼吸器疾患など様々なトラブルを抱えているワンちゃんは少なくありません。
しかし、共通していえるのは若い時からこまめにケアをしていることと、愛犬とのコミュニュケーションがうまく取れていることです。
具体的な内容は以下の5つです。
- ・太らせないように体重管理を徹底している
- ・自宅での歯磨きなどデンタルケアをしっかり行っている
- ・皮膚のコンディションを良好に保つように、自宅だけでなく動物病院での薬浴やマイクロバブル温浴等を中心としたケアを定期的に行っている
- ・体調の変化をよく観察していて、おかしいと感じたらすぐに動物病院を受診する
- ・遊びやお散歩の時間がしっかり確保できているため、犬のストレスが上手に解消できている
犬はそもそも目的をもって繁殖されてきたという歴史があります。
猟犬として役目を果たしたり、愛玩犬として人と一緒に暮らしたり、「人と一緒に何かをすることが得意な動物」です。
犬種に関わらず、パートナーとして愛犬と愛犬の心身の健康を大切にするという考え方が、一番の長寿の秘訣かもしれません。
ペット保険の選び方
ペットには、人間の様な公的な健康保険制度がありません。
そのため、動物病院での治療費は全て自己負担です。
犬(特に子犬の時期)は何でも口にすることが多く、おもちゃを飲み込んで内視鏡検査や開腹手術が必要になる場合も少なくありません。
また、長期間継続して通院が必要な病気になった場合は、動物病院に支払う治療費は高額になる可能性があります。
誤飲以外にも病気やケガなど、愛犬にいつ何が起こるかは全く予想ができません。
このような突然の出費に備える選択肢のひとつとして、ペット保険があります。
ペット保険とは、保険会社に保険料を支払う代わりに、高額になりがちな動物病院での治療費の一部を保険会社が補償するというサービスです。
ご自身と愛犬に合ったプランを選ぶためには、ペット保険会社のプランについての情報を集めて比較検討する必要があります。
現在国内でペット保険を扱う会社は、大きく分けて損害保険会社と少額短期保険会社の2つがあります。
損害保険会社は、大手で加入者数も多くて窓口清算できる動物病院も多く使いやすい印象があり、少額短期保険は大手損害保険会社にはないユニークなプランが充実しています。
どんな補償内容が必要かは人によって異なりますが、ここではペット保険の選び方のポイントについてお伝えします。
ペット保険選びのポイント
保険料
一般的に、補償内容が多ければ多いほど、さらにペットの年齢に比例して保険料は高くなります。
実際に支払う保険料は、月額500円~1万円くらいまでとかなり差があります。
どの補償内容が必要なのか検討し、保険料とのバランスを考えて決めましょう。
補償内容
補償内容は、手術のみ補償するプラン、通院も含め手術や入院も補償するプランなどいろいろなプランがあり、補償割合も30%~90%などがあります。
保険料とのバランスもありますが、「万が一の事態に備え高額になりがちなペットの治療費の負担を軽くし、さらに通院のハードルが下がる」という意味では通院と手術・入院を補償するプランがおすすめです。
加入時の年齢
ペット保険はペットの年齢が高ければ高いほど保険料が高くなるのが一般的で、ある程度の年齢になると加入できないプランもあります。
反対に、シニア専用の保険やシニアになっても継続できるペット保険もあります。
約15歳という犬の平均寿命を考えると、シニアになっても使い続けられるペット保険がおすすめです。
保険会社によっては動物病院での支払い時に補償額を差し引いて窓口精算できる(対応可能動物病院のみ)ペット保険や、医療やしつけについて獣医師に24時間無料電話相談ができるサービスが付帯しているペット保険もあります。
初めて犬を飼う方には、この様な相談ができる付帯サービスがあるペット保険を選ぶとより安心です。
なお、ペット保険は病気やケガのために備える目的のものなので、ワクチンや不妊・去勢手術、フィラリやノミ・マダニなどの予防に関するものや保険加入前に発症している病気や先天性疾患に関しては補償の対象外なので注意しましょう。
さらに、ペット保険の補償には限度額や限度日数・回数など制限があるため、保険料や補償内容・年齢などの加入条件と併せて確認しておくと安心です。
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