普段は元気いっぱいの愛犬が、突然体調が悪くなる、怪我をするなど、予想もしていなかった事態が起こって不安になったという経験はありませんか?生きている以上、愛犬の病気や怪我を100%防ぐのは不可能で、さらにいつかは寿命を迎えることは避けられないことです。
しかし、「愛犬が健康で快適に日々を過ごし、少しでも長くそばにいて欲しい」というのはわたし自身も含めてすべての飼い主さまの願いではないでしょうか?
この記事では、犬によく見られる病気や怪我のサイン、一般的な治療法や予防対策、さらに気になる治療費用についてお伝えします。愛犬の健康維持と生活の質の向上の助けになれば幸いです。
犬は、言葉で自分の症状を訴えることができません。
そのため、飼い主が日頃から愛犬の様子をよく観察し、異変があれば早めに動物病院を受診することが大切です。
主なポイントは以下の点です。
病気や怪我のサイン
犬の病気や怪我のサインは、以下のような症状が現れることがあります。
これらの症状が見られたら、早めに動物病院を受診しましょう。早期発見・早期治療が、愛犬の健康を守るうえで大切です。
また、定期的な健康診断を受けることも、病気の早期発見に役立ちます。
犬がかかりやすい病気は複数ありますが、非常に多いのは
の3つです。
外耳炎の原因は様々ですが、犬で多いのはアトピー性疾患が原因でマラセチア菌という常在菌が増殖して起こる外耳炎です。
外耳炎を何度も繰り返すと、耳道が狭くなってさらに炎症が起こりやすくなります。
さらに、慢性化しやすく完治が難しい場合もあります。
外耳炎になると、
などの症状が見られます。
強い痒みや痛みのために、イライラして犬が攻撃的になる場合もあり注意が必要です。
皮膚疾患は外耳炎と同様、非常によく見られる病気です。
原因は真菌や細菌感染、耳ヒゼンダニなどの寄生虫、アトピーやアレルギー疾患、内分泌疾患、腫瘍など様々です。
原因に合わせて抗菌剤やシャンプー療法、食事療法などで治療しますが、内分泌疾患や肝疾患など皮膚以外の原因、アトピー性皮膚炎のように体質的な皮膚疾患、さらに一つの原因ではなく複数の原因による皮膚疾患も多く、外耳炎同様完治しないケースもあります。
皮膚疾患は、
のどちらかにより気づく場合がほとんどです。
脂肪分や食品添加物が多いおやつを与えることが皮膚疾患の原因になる場合もあるため、おやつの内容にも注意しましょう。
嘔吐や下痢も犬には非常に多く見られます。
嘔吐や下痢の原因は様々です。
普段と違うものを食べた、寄生虫がいる、などすぐに改善できる原因から、ウイルスによる感染症、腎不全や肝疾患などの内臓疾患、自己免疫疾患、異物による腸閉塞や腫瘍など深刻なケースもあります。
嘔吐や下痢と同様、犬に非常に多いのは誤飲や誤食です。
誤飲や誤食は、飼い主さまが気をつけることである程度防ぐことができるので、
などの工夫をしましょう。
また、過食や肥満、高脂肪の食事、クッシング症候群という内分泌の病気、遺伝的素因が原因となる膵炎も、良く見られる病気です。
膵炎は急性膵炎と慢性膵炎があります。
特に消化酵素である膵液が膵臓そのものを溶かしてしまう病態で発生する急性膵炎は、激しい腹痛や嘔吐、下痢などの消化器症状を引き起こし、命にかかわる場合もあります。
慢性膵炎は、激しい消化器症状というよりは、長く続く原因不明の嘔吐や下痢、腹痛などが主な症状です。
下痢や嘔吐などの目で見てわかる症状以外には、
なども消化器疾患のサインの可能性があります。
少しでもおかしいと思ったらすぐに診察を受けましょう。
犬同士のケンカによる咬傷やお散歩中に爪をひっかけてしまったなどの外傷以外で、特にトイプードル、ポメラニアンなどの小型犬に非常に多いのは前肢の骨折です。
室内でも屋外でも、ちょっとした高さのところから飛び降りて骨折してしまうケースが多く、そのほとんどが橈骨(とうこつ)と尺骨という前腕骨の骨折です。
腫れて痛みが生じ、地面に着かない様に患肢を挙げたままの状態が見られたら、骨折している可能性があります。
すぐに動物病院を受診しましょう。
普段から外耳炎、皮膚疾患、消化器疾患(下痢・嘔吐・膵炎等)で来院する犬は多い上に、お正月やクリスマスなどのイベントの後は、ご馳走を与えてお腹を壊してしまった愛犬を連れた飼い主さまが増える傾向があります。
前述した犬によくある病気や怪我の一般的な治療法と予防対策をまとめました。
健康な犬は耳の中はそれほど汚れません。
しかし、黒い耳垢が多く生じる場合は、耳ヒゼンダニの寄生や真菌(マラセチア菌)の増殖が疑われます。
治療は、原因によって様々ですが、基本的には点耳薬や抗生剤、消炎剤などの内服薬、駆虫薬の投薬など内科治療を行います。
また、異物が原因の場合は、全身麻酔下で異物を取り除く必要があります。
外耳炎の症状が軽度であれば治療の反応も良好です。
しかし、外耳炎が悪化して内耳や脳に影響が及ぶことが考えられる場合には、耳道を切除する全耳道切除手術を行うケースもあります。
<外耳炎の予防対策>
皮膚疾患の治療法は、駆虫薬、抗生物質、アトピー性皮膚炎や痒みに効果がある内服薬等の投薬など原因や症状に合わせた投薬やシャンプー療法などを行う内科治療が一般的です。
しかし、一般的な治療を行っても全く改善しない場合やシニア犬の場合は、皮膚腫瘍等の可能性が考えられます。
その場合、皮膚生検と病理検査を行ったのちに必要に応じて手術や抗がん剤治療を行います。
<皮膚疾患の予防対策>
症状が軽度の場合は、対症療法により下痢止めや制吐剤などを投与し、必要に応じて点滴を行います。
膵炎の疑いがある場合や、下痢・嘔吐の症状がひどい場合は血液検査やレントゲン検査、エコー検査が必要です。
また、重度の場合は入院して静脈点滴等の治療を行います。
<消化器疾患(下痢・嘔吐・膵炎)の予防対策>
骨折は、すぐに治療が必要です。
まずは、レントゲン検査を行い骨折の状況を確認することが大切です。
治療は骨折の状態によりますが、主にプレートによる固定を行う外科手術を行います。
小型犬の前肢は、骨が細く血流が少ないため術後の癒合不全の可能性があり、最悪の場合は断脚するケースもあります。
<前肢の骨折の予防対策>
犬によくある病気や怪我についての治療費用について、以下の表にまとめました。
なお、治療費用は法律の規定により、各動物病院の判断で設定しているため同じ治療をしても金額が異なります。
治療費の一例として参考になさって下さい。
診察内容 | 治療費の一例 |
---|---|
診察料 | 500円~2,000円 |
耳処置(毛抜き・点耳など) | 1,000円~3,000円 |
皮膚検査 皮膚生検・病理検査 |
1,000円~2,000円 10,000円~ |
抗生剤の投薬 | 一日100円~ |
レントゲン検査 | 1枚5,000円~6,000円 |
血液検査 | 10,000円~ |
入院費 | 1日およそ5,000円~ |
点滴治療 | 1日5,000円~ |
制吐剤など皮下注射 | 1回2,000円~ |
膵炎で使用する特殊注射(およそ3日間~5日間使用) | 1回8,000円 |
抗がん剤治療(静脈注射等) | 1回10,000円~ |
手術(前肢の骨折の整復) | 20万円~ |
上記の通り、入院治療が長引いた場合、抗がん剤治療や整形外科的な手術が必要な場合、治療費はかなり高額になる可能性があります。
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【獣医師監修】犬の飼い方のコツや注意点について「飼う前の準備は?」ペットには、人間の様な公的な健康保険制度がありません。
そのため、動物病院での治療費は全て自己負担です。
若くて元気なペットでも、事故やケガ、誤飲などいつ何が起こるかは全く予想ができません。
そして、手術や入院が必要になった場合、動物病院に支払う治療費は100%自己負担です。
この様に何かあった時の突然の出費に備えるために、ペット保険があります。
ペット保険とは、保険会社に保険料を支払う代わりに、高額になりがちな動物病院での治療費の一部を保険会社が補償するという民間のサービスです。
現在国内でペット保険を扱う会社は、10社以上あります。
どの保険会社も「ペットの医療費の負担を軽くする」という目的は同じですが、保険会社やプランによって加入条件や補償内容等が異なります。
もちろん、ご自身でペットのために日々治療費等を備えておくという方法もありますが、わたし自身は飼い主さまにペット保険の加入をおすすめしています。
その一番の理由は、「飼い主さまの安心感につながる」と感じているからです。
ペット保険に求めるものや必要な補償内容は人によって異なりますが、まずは多くのペット保険の情報を集めて比較検討することをおすすめします。
ここでは、ペット保険選びのポイントについてお伝えします。
ペット保険を選ぶポイントは以下の3つです。
一般的に、補償内容が多ければ多いほど、さらにペットの年齢に比例して保険料は高くなり、実際に支払う保険料は、月額500円~1万円くらいまでとかなり差があります。
どの補償内容が必要なのか検討し、保険料とのバランスを考えて決めましょう。
補償内容は、手術のみ補償するプラン、通院も含め手術や入院も補償するプラン、高額になる可能性のある手術の補償金額が非常に多いプランなど様々なプランがあります。
補償割合は、30%~90%など保険会社やプランによって様々です。
保険料とのバランスもありますが、「万が一の事態に備え高額になりがちなペットの治療費の負担を軽くし、さらに通院のハードルが下がる」という意味では通院と手術・入院すべてをバランスよく補償するプランがおすすめです。
ペット保険は、ペットの年齢が高ければ高いほど保険料が高くなるのが一般的です。
また、ある程度の年齢になると加入できないプランもあります。
反対に、シニア専用の保険やシニアになっても継続できるペット保険もあります。
犬の平均寿命は約15歳なので、シニアになっても使い続けられるペット保険をおすすめします。
保険会社によっては動物病院での支払い時に補償額を差し引いて窓口精算できる(対応可能動物病院のみ)ペット保険やLINEなどを使って簡単に保険の申請手続きができるペット保険、さらに医療やしつけについて獣医師に24時間無料電話相談ができるサービスが付帯しているペット保険もあります。
初めて犬を飼う方には、この様な相談ができる付帯サービスがあるペット保険がおすすめです。
また、ペット保険は病気やケガのために備える目的のものなので、ワクチンや不妊・去勢手術、フィラリア予防やノミ・マダニなどの予防に関するものや保険加入前に発症している病気や先天性疾患に関しては補償の対象外なので注意しましょう。
さらに、ペット保険の補償には限度額や限度日数・回数など制限があります。
保険料を安くすることを目的として免責金額(ある一定の金額まで加入者が自己負担する金額のことです)の設定がある場合、保険の適用が開始される日なども保険料や補償内容・年齢などの加入条件と併せて確認しておくと安心です。
この記事の監修者
現在複数の動物病院で臨床獣医師として勤務しながら専門知識や経験を活かして各種メディアや個人サイトでライターとして情報を発信している。
▼ドリトルけいのいぬねこ健康相談室
https://www.dolittlekei.com/
ライフワークは「ペットと飼い主様がより元気で幸せに過ごすお手伝いをする」こと。